万来堂日記3rd(仮)

万来堂日記2nd( http://d.hatena.ne.jp/banraidou/ )の管理人が、せっかく招待されたのだからとなんとなく移行したブログ。

宇宙舟歌

ラファティの長編を読むのはこれで4冊目(「宇宙舟歌」と「地球礁」「悪魔は死んだ (サンリオSF文庫)」「トマス・モアの大冒険―パスト・マスター」を読了済。邦訳された長編だと残るは「イースターワインに到着 (サンリオSF文庫)」だけだけれども、そんなもんどこに行けば見つかるんだ?)。「トマス・モアの大冒険」を読んだのはかなり昔のことなので記憶もあやふやだけれども、今まで読んだ中では一番とっつきやすいと思う。長編というよりは連作短編集みたいな感じで読み進めていけるのよね。それでもラファティラファティなんだけれど。
ラファティ作品に出てくる登場人物(人間とは限らないけどさ)は、見た目も人間だし、作中でも人間だと言われているけれど、そのくせ人間でもなんでもなく、悪魔か、天使か、化物か、そのいずれかのような感じがする。
登場人物も語り部も(今、俺「語り部」って言ったか? 一体そいつ誰だ?)、普段日常生活で私たちが感じているような常識や世界観とはまた違った、謎めいた知識や不可思議な真理に精通している。そして、彼らはきっと自身の知識や真理に基づいて行動しているに過ぎないのだれど、彼らが拠って立つその知識や真理は、彼ら自身や語り部にとってあまりにも自明なことであるため、読者に説明されることはない。世界の秘密を覗き見しているような感覚ね。
言ってみれば、これは壮大な内輪ウケ。「わかる人にだけわかればいいんだ」の究極であるような。彼らは彼らの世界でのちょっとしたジョークを私たちに聞かせてくれているんだ、多分。唯一の問題は、彼らが人間ではなく悪魔か天使か化物かラファティか、まあそこらへんの存在であったっつーことなんだろう。それがまたいいんだが。