2011-04-27 『シバの女王ベルキス』発売
昨年後半から暇なし。といっても曲の背景を調べたり、楽譜の真偽を判断したりという自分との闘いで、それはそれで充実しています。
全音スコア、レスピーギの《シバの女王ベルキス》が出版されました。不思議な縁の曲です。1988年に京都のアパートでFM放送で初めて耳にし、すぐに吹奏楽への編曲を思い立ち、念のため演奏記録をバンドジャーナルを調べたら、その年に淀彰先生が東北学院大学の自由曲として編曲・演奏していました。「先を越された〜!」と悔しがって淀先生にお話ししたものです。それから20数年後にまさかこんな大それた仕事をするとは思いませんでした。
半年前から準備してきましたが、元々のスコア(《教会のステンドグラス》と合本)はミスだらけで判断に困る箇所も多く、レスピーギの手稿譜は手に入らず、本来のバレエ上演の資料も乏しく、浄書も解説もかなりの苦戦が強いられました。資料を求めて国内は足で稼ぎ、ネットで世界中を探し、パート譜も徹底的に調べ上げて総力戦で完成させたスコアを都内の某楽器店で初めて見た時は感動ものでした。
それから10日ほどして大ショック! 現在担当するレスピーギの別の曲のためにアメリカの古書店から取り寄せた専門書に、予想もしなかったバレエ《シバの女王ベルキス》の幻のポスターやチラシや舞台写真が掲載されているではありませんか!「間に合わなかった〜!」スコアの解説にポスターやチラシの写真を添えることも可能だったようで、あまりに残念。1人で見ているのももったいないので、その一部を低画質で遠慮がちに紹介しておきます。掲載に問題がある場合には削除しますのでお知らせください。
zon-on score レスピーギ:組曲《シバの女王ベルキス》村上泰裕:解説
- 出版社/メーカー: 全音楽譜出版社
- 発売日: 2011/04/13
- メディア: 楽譜
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2011-03-13 大震災後の消息
11日の未曾有の大震災。我が家は内陸にあり、揺れが激しく長かったものの、停電・断水は逃れました。書棚の資料が少し落ちた程度で、テレビで見る悲惨な光景と1時間に3〜5回続く余震を除けば平穏です。
ただ、震災の翌日12日(土)の夕方、まる1日以上連絡が取れなかった肉親が仙台市の東部(三井アウトレット仙台港)で被災し、避難所にいることが判明し、6時頃に車で救援に向かいました。
来週の勤務に備えて車には12日の昼間にガソリンを入れてあり、途上でさらに満タンにした上、コンビニで飲み物と食料を買い込み、いざ福島へ。飯坂ICではやはり東北自動車道は閉鎖で、7時半に国道4号線に乗りました。道は真っ暗で、信号も街頭もコンビニも自販機も見えません。交通量は少なめで、交差点を気にかけつつ信号で止められることもなく、ひたすら先を急ぐことができました。仙台市内には渋滞もなくスムーズに入りました。ただ、車にナビがないのに加え、仙台の街全体が暗闇で目印が見えず(市営球場やTSUTAYAも真っ暗)、かなり迷いました。途中、道路に段差があったり、崖崩れで道幅が狭くなっているところもパンクに気をつけながら通過。焚き火で暖をとっている方に道を尋ね、9時半頃に避難所の宮城野体育館に到着、肉親と再会できました。地震から30時間。交通手段を失いつつも、周囲の方々の温かさが身にしみたそうです。
帰りは山形への岐路を見つけ損ねて4号線を南下し続け、仙台空港入口で引き返して名取市内を突っ切り、国道286号線と山形自動車道(笹谷以西)で11時過ぎに山形市に入りました。自動車道から山形市の夜景が見え、市内でコンビニが開いているのにはホッとしました。ただし、食料品はほとんど売り切れ(写真)。肉親を自宅に送り届け、米沢の自宅に着いたときは13日の1時でした。南東北一周の緊迫した7時間のドライブながら、神経はピリピリしていて疲れを感じませんでした。
震源や津波の被災地の真西にありながら大きな被害を免れ、一般人が片道3時間ほどで被災地にアクセスして帰宅難民を救援できたのは奇跡的でした。ただ、女川や福島の原発が依然気になります。それに気仙沼、石巻、南相馬など何度か訪れた思い出の美しい町とそこの方々のことを考えると言葉もありません。なんだか何も手に着かず、テレビとパソコンに無為に向かっています。
後日談。その後は支援の緊急車両が増え、一方でガソリンはほとんど入手できず、個人として被災地に向かわれることは決してお勧めできない状況です。
2011-02-26 懐かしい場所で
時計台が見える陽当たりのいいベンチにたたずみ、MacBookを開く(当時はなかった文明の利器)。日頃雪の壁の狭間で生活する身にとって、この青空と日差しはまるで南国のよう。スズメたちが親しげに目の前までやってくる。ムラサキシジミが太陽に羽を広げる。受験生たちがあふれかえり、キャンパスはいちだんと若々しい。
20代をここで過ごし、いつの間にか倍の年齢になった。あの頃やろうとしたことはなしえたか…? 残された人生で何をやれるのか…? 京都の町並みもキャンパスも大きくは変わらず、時計台は悠久の時を静かに刻むが、自分の時間はあっという間に過ぎた。ここにいると時間の不思議さを思わずにはいられない。
河合隼雄先生と山中康裕先生という2大巨匠の薫陶を受けた臨床心理学。新米教師の頃はなんとか学校に生かそうと努力したが、10年そこそこで錆びつき、ついには廃業に…。ゆとりのない現場に加え、教員は別の役割を期待され、両立するだけの技量もエネルギーもなかった。吹奏楽指導で思いがけなく結果がついてきて、追いつ追われつの日々だったことも両立を難しくした。山中先生が「カウンセラーか教員か、どちらかを選択することになるよ」とおっしゃったことが、抵抗むなしく的中した。それなら教員を選択したのかというと、自分を殺して決まったルートを歩む強さはなかった。
河合先生は晩年、文化庁長官の立場もあって、広く文化全体の発展に力を尽くされた。講演会では自らフルートを吹かれた。「コバケンとその仲間たちオーケストラ」にもゲスト出演される予定だったが帰らぬ人となった。2007年9月2日、故・河合隼雄先生追悼式(国立京都国際会館)の帰りに京都駅の新幹線コンコースで小林研一郎先生ご夫妻とばったり会い、互いに同じ目的で京都に来ていたことに驚くと共に「仲間オケ」への参加を勧められた。河合先生の魂が導いてくれたのだろうか。このご縁を大事にしたい。
あと何回母校を訪れることができるだろう…と思いながら京都を去り、東京のホテルでテレビをつけると、ニュースでつい数時間前に見た時計台の光景が!? こればかりは縁も運も他力もなし。正々堂々と自力で入れ、受験生よ!
2011-01-15 全音スコア『威風堂々』発売
アンサンブルコンテスト山形県大会の初日。この時期に厳しい冬の庄内に引率でお邪魔するのは年中行事でしたが、今年は自宅で静かにパソコンに向かっています。
今日発売の『行進曲《威風堂々》第1番・第4番』が届きました。解説と浄書の両方を1人で担当させていただき、これは全音スコアの歴史でも初の試みでしょう。すでに書いたように短期間に膨大な難しい判断が必要な編集で、七転八倒の苦しみの中から多くの反省と教訓が心に刻まれました。もちろん従来の問題箇所の大部分は解決されており、その点では自信をもって提供できるスコアです。
大英図書館から取り寄せたエルガーの手稿譜が、編集上で大きい役割を果たしました。スコアの真偽の確認という意味ではオーケストラ用のパート譜も大事な資料ですが、広く使われている《威風堂々》のパート譜はスコアとかなり食い違っており(パート譜はおそらく他者が手を加えたと思われ)、主たる資料にはできませんでした。その意味でも、今後演奏される場合には全音スコアを元にパート譜を点検されることをお勧めいたします。
品物が完成して届いたことによって、現在進行中の壮大な2曲に向けて十分なエネルギーをもらうことができ、さらに全力で取り組むことを強く誓ったところです。
スコア エルガー/行進曲『威風堂々』第1番・第4番 (zen-on score)
- 出版社/メーカー: 全音楽譜出版社
- 発売日: 2011/01/14
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2011-01-01 明けましておめでとうございます
2011年、明けましておめでとうございます。
昨年は私にとって激動の1年間でしたが、幸運に恵まれ、当初の予定とは多少軌道修正しながら、新しいチャレンジを始めています。
1)バルトーク・レコーズ・ジャパン
ベーラ・バルトークの次男ペーテル・バルトークを日本から支援するため、彼の自費出版物を紹介・販売しています。ヤフーオークションと通信販売を平行して行ってきましたが、販売量は決して満足なものではありません。ただ、幸いにも他の業者様からご協力のお申し出があり、より多くの方々に楽譜を提供したいというペーテルの願いを叶えるた活動が広がろうとしています。ペーテルはご高齢で、またバルトークの著作権が完全消滅するタイムリミット(2015年末)が近づいており、油断はできません。今年はペーテルの著作「MY FATHER(我が父)」の日本語版をなんとか出版したいと強く願っています。
2)スコア製作
昨年9月発売の『中国の不思議な役人』をきっかけに、今後のスコア製作に関わらせていただけることになりました。長年にわたってバイブルとして生き続ける楽譜を作るという責任あるお仕事で、しかも問題点を検証して必要なら改善することも許され、まさに身の引き締まる思いです。昔から正しく綺麗な楽譜を求める気持ちが強く、楽譜のミスには人一倍敏感でしたが、いざ自分で長大なオーケストラスコア全体をコントロールするというのは本当に厳しいお仕事なのを実感しています。曜日も関係なく、起きてから寝るまで楽譜と格闘する毎日です。
3)英語指導・合奏指導
昨年秋、お招きを受けて臨時の英語講師として2ヶ月間だけ中学校の教壇に立ちました。同僚や生徒たち、地域の方々に支えられ、本当に充実した楽しい日々でした。現在はスコア製作で多忙なため講師はご遠慮していますが、今後とも短期間なら可能性があります。また、「コバケンとその仲間たちオーケストラ」の公演に向けて、アシスタントとして派遣され、賛助出演予定の中学校バンドを定期的に指導しています。今後ともお声がかかれば合奏指導等に出向きます。
どの活動にしても多くの皆様に支えられていることを実感し、感謝せずにはいられません。本当にありがとうございます。そして今年もよろしくお願いいたします。
長井理研アズム館さんに開設いただいたバルトーク・レコーズ・ジャパンのブース
誠にありがとうございます。お近くの方、どうぞご来店ください。








