左手日記例言

図書館放出本としていただいた『左手日記例言』平出隆白水社)を読了。

右手中指伸筋腱切断の憂き目に会った主人公(作者?)が、左利きを余儀なくされた新しい生活での、「左」にまつわる回想を綴っていく。

私自身左利きなので、「左」という語から受け取るイメージは右利きのひととずいぶん違うだろうなと思う。しかし、「右」から「左」への移行は、「マジョリティ」から「マイノリティ」への移行でもあるので、平出隆が、左利きから右利きを余儀なくされた存在だったとしたら、まったく違う独白が展開されたはずで、それをどなたかが、本歌取りとして『右手日記例言』を著してみるのも一興かもしれない、などと思う。

気になったのは、引用されるテッド・ウィリアムズの言葉。
「歴史に名を残す九人の卓越した左打者の中で......生まれつき右利きだったのは、タイ・カップとジョージャクソンと私の三人である」「私の知るかぎりでは、生まれつき左利きで偉大な右打者になった者は一人もいない」。

右投げ左打ちのイチロー・スズキは、どうなんだろう。彼の利き手にまつわる逸話って聞いたことなかったな。

なお、体裁として、本文は左ページのみに刷られている。
俳恩ある、N天さんによると、この本は箱付きのはずで、その箱も新奇な意匠がほどこされていたはずだ、とのことでした。

左手日記例言

左手日記例言

(追記)
なんたる馬鹿。てめえのブログタイトルの誤植に気づかないでいるとは。Pareidokiaってのもなんとなくイイとは思いましたが、やっぱり直しました。Pareidoliaとは、雲が顔に見えたり、機械の操作パネルが顔に見えたり、布などが悪霊に見えたりすることなどいいます。「いいます。」といいましても、わりかし最近知った言葉です。