かぶとむし日記

映画、音楽、本の感想を中心に日記を更新しています。

菊池健雄監督『望郷』と「漱石山房記念館」(9月29日)。

9月29日、金曜日。新宿武蔵野館で、午前10時から、湊かなえ原作、菊池健雄監督の『望郷』を見る。原作(未読)6編のうち「夢の国」と「光の航路」を映画化。


「夢の国」
しきたりを重んじる家庭に育ち、島で故郷に縛られる生活をしていた夢都子は、大人になり幸せな家庭を築いていた。そんな中、子どもの頃から自由の象徴として憧れていた本土にある「ドリームランド」が今年で閉園することを知り、彼女がずっと思い続けていたことを語り始める。


「光の航路」
一方、転任のため9年ぶりに本土から故郷の島へ帰ってきた航のもとに、1人の男性が訪ねてくる。教師をしていた父の教え子を名乗る畑野の話から、航は父の本当の姿を知ることとなる。


(「映画.com」より)
http://eiga.com/movie/87416/


「夢の国」には、恐い祖母が出てくる。夢都子の祖母。夢都子の母は、この祖母におびえ、自由を封じこまれる。夢都子は、「ドリームランド」へ行くのが夢だが、それが果たされないまま大人になっていく。


「光の航路」の主人公は教師の航。彼は、自分のクラスのいじめ問題に悩む。自殺を試みて生き残ったその女生徒の冷えた心をどうやったら解放することができるか、悩む。そして、かつていじめの問題で、教師だった父が(もう死んでしまっている)、どんな対応をしたのかを知ることで、航はわずかに光りをみつけていく。


島を舞台にした映画。既視感があったけれど、おもしろく見た。


『望郷』予告編
https://www.youtube.com/watch?v=0hEJ8kC1WM8



新宿から高田馬場へ行き、東西線で乗換え、早稲田駅下車。9月24日から公開がはじまった「漱石山房記念館」へいく。わたしにとっては、心待ちにしていた日。ゆるい夏目坂を登り、「漱石山房記念館」へ着く。開館したばかりなので、来館者も多い。



入館する前に、「記念館」の外観を写真に撮ってみる。


夏目漱石が書斎で机の前にすわり、着物で懐手している。そのうしろには、うず高く積まれた洋書の山が・・・というよく知られた写真がある。入り口付近に漱石の書斎が再現されていたが、写真そのままの再現ではないようだ。和書はほとんど見当たらず、英文学者・夏目金之助というイメージ。しばらく、その前に立って、漱石を偲ぶ。



漱石の書斎が再現されている。



書斎にすわる漱石の有名な写真。


それから、展示品をゆっくり見てまわる。楷書で書かれた端正な原稿の文字は、実直な漱石の人柄を偲ばせる。かわって、筆で書かれた手紙の流れるような草書の文字は、わたしにはさっぱり読めないが、見ているだけで端麗な美しさにおどろく。こんな手紙をもらったら、誰もよろこばずにはいられない。


夏目漱石、なにをやっても、人並みはずれて才能に恵まれていたひとだったなあ、とあらためておもう。その漱石は、49歳で亡くなっている。いまのわたしからは、はるかに年下。比べるのもへんだけれど、実感ではずっと年上のひとのように思えてしまう。


早稲田駅へもどる前、夏目坂の途中のラーメン屋さんで遅い昼食。ビールと冷酒と餃子とラーメン。早稲田へもどって、的場の双子たちの家へ向かう。電車のなかで、漱石の講演を文字化した「私の個人主義」を、ひさびさ読み返す(電子書籍で)。