2007-03-06
■【−2】無縁仏
<文章> −2 <体験> 0 <得点> −2
コメディであれば、一見それが問題と思わせておいて実は関係なかった、と
いうオチも時折見かける。
しかしそれを怪談で、しかも題名まで込みでやられては参った、と言わざるを
得ない、悪い意味で。
勘違いしていたのは体験者だけの話であって、それは怪談そのものとは関係ない。
先日も書いたので繰り返さないけれど、体験者が話すこと重要と思うことと
怪談として重要なポイントを取り違えてはいけない。
第三者にとってこの怪現象と関係ないのであれば正直無縁仏の話は「どうでも
良い」ことなのである。
しかも移し忘れの墓で解決しそうなところが実は、という展開になってますます
おかしくなる。
父親はともかく親戚にも不幸が相次いでいるという。
この親戚が実家に同居しているというなら話は別だが、そうでなければ家の
せい、というよりはむしろ墓のせいと考える方が妥当なのではないか。
このように体験者の思い込みがどうもとんちんかんな上にそれが放置されて
しまっているため、肝心の怪が霞んでしまっている。読後感が何とも落ち着かない。
文章技術面でも怪現象発生という大事な場面で「はざはざ」とか「だだ」といった
ような初歩的な誤植が相次ぎ興を殺ぐ。
「はざはざ」なんてここで笑わそうというテクニックかと考えてしまった、なんて
わけはない。
■【0】じゃっじゃっ
<文章> −1 <体験> +1 <得点> 0
軽い話ながら不思議さは充分にある。
特に因果も気味悪さもないのがこのような話の場合かえって適切であるように
思われる。
ただ、オチのところでマスターが「……失礼な奴だな」と怒り出す、というのは
どうも唐突な感がある。
この作品を子細に読ませてもらうと、どうやらマスターの料理の手際がかなり良く、
語り手も感心しているし、マスターもそれを自負していて、霊はその手際を含めた
音に引き寄せられた、と思っていた、ということではないだろうか。
だから炒(はお)する音ではないデッキブラシの音にも反応してしまったことで
機嫌を損ねた、と。
だとしたら、そのことが書き足りていない。語り手の「その小気味良い〜好きだった」
だけで感じ取れ、というのは酷な話である。
一文でも良いから料理自慢とか評判が良いとか書いてあればそんな不満はなくなるので
そうした配慮がわずかに足りていない。
今のままでは音に反応する、という話なのだから似たような音がしていればそれに
反応しても、やっぱり音だった、というオチの方が自然に感じられてしまう。
■【+4】浜辺
<文章> +2 <体験> +2 <得点> +4
導入から時代背景、物語の場面設定、そして本編。戦争中という特殊な状況を要領良く
まとめていて、テンポ良く進んでいきながらストーリーを理解し納得するために必要な
情報はきちんと伝えられている。
しかもそれが単なる事故とは思い難い事例であることもしっかりと確認されている。
実にしっかりとした作品である。
南方の神の話は有名な某シリーズでも確か載っていたけれど、どうも全体に祟り神
系統ばかりのようだ。怖ろしい。
ただ、以前バリに行った時の情景を思い浮かべると、あちらには日本や欧米とは異なる
別の神が存在していてもおかしくはない、そんな異世界観が感じられた。
もっと未開の地、時代も昔であれば尚更であろう。
一つだけ気になるのは「大和田くん」って今一体何歳の人?!
■【−2】自爆
<文章> +1 <体験> −3 <得点> −2
何とも扱いが難しい。
この大会の趣旨からして「実話」として投稿されたものだと思うし、特に内容から
否定できるところがあるわけでもない。
しかし、やっぱりどうしてもこれを素直に凄いことがあったなあ、と受け入れることは
出来そうにない。
本来そういう態度は良くない気もするけれど、あまりに出来過ぎの感が強くて‥‥。
お話自体はショートショートして結構しっかりとした出来で、驚きも笑いもあり
微笑ましくもあって悪くない。
爆発には鳥も含まれているのだろうか。
と書いて一度評価を済ませた作品であったけれど、節を屈し他の講評を拝見して
評価を大きく変更させていただく。
確かに他の方が御指摘の通り、虫を捕捉するような小型の鳥類で爪で獲物を捕食する、と
いうことは考え難い。彼らは巣作りでさえくちばしで材料を運ぶ位だから。
やはりこれはアラビアン・ナイトに良く鷲によって運ばれる人が描かれていたように、
一編のファンタジーとして受け取っておいた方が良さそうだ。
■【+2】オモリ
<文章> +1 <体験> +1 <得点> +2
強烈ではないものの、じんわりと怖い話だ。
ただ、その位は体験者自体も確認していると思うのだけれど、竈の火を消した後、
火災予防のために水を撒いていた、という可能性はあり得ないのだろうか。
校内で有名という位だからそんなことはないということなのか。
これまで保存農家や寺の庫裏などで竈自体は多数見てきたものの実際に火を入れて
使っている、というものは見たことが無く、そうした消火をするものなのか、そんな
ことはしないのかも知らない。だからあくまでも疑問なのだけれど。
なので評価には勿論加味しない。
死んでからも火で焙られる、その怒りが水を生じさせてしまったのだろうか。
まあ実際には下方への熱伝達はそう強くない筈なので温かい、と感じる程度が実の
ところかもしれないけど。
この話の肝は別に鉄球だけにはないので、題名はちょっと気になる。
■【−2】漂流
<文章> −2 <体験> 0 <得点> −2
一発怪談を狙うような怪ではないと思う。
結局説明不足でよく判らなくなってしまった。じっくり語ってくれれば結構怖い話の
ような気もする。
上でした「ぱちり」という音がまず想像できない。何かのスイッチを入れたような
音なのだろうか。事実だからしようがないのかもしれないけれど、これと怪との関係が
全く掴めないため、ここでまず思考がスタックしてしまう。
さらに要は頭上に緑に光る男がいた、ということだと思うのだけれど、そこで多少
動いていたとしても漂っていた、漂流している、というイメージはどうにも想像できない。
漂う、という言葉からはやはり水の上か、空中だとしたら相当に広い空間の中を風に
乗るなりして動き回っている場面が想像される。
家の廊下という狭い空間、そして自分より上に見えるという位置関係、いずれをとっても
これが漂流という言葉からもたらされるイメージとどうにも結びつかない。
もしその場の情景が直感的に漂流をイメージさせるようなものであったのなら、
冒頭書いたように別に一発芸を狙わず、しっかりとその光景を描写して欲しかった。
現状では単に表現上奇を衒っただけとしか受け取れない。
■【+3】海神祭
<文章> +1 <体験> +2 <得点> +3
最近まで観ていたアニメ「ひぐらしの鳴くころに」をつい思い出してしまうような
伝奇的な恐怖譚である。
漁村であれば祭には確かにそうした鎮魂の意も込められているのだろう。
全体に叙情的な美しさと静謐さが感じられ、それが格調のような品を生み出している。
ただ、残念ながら怪談、というジャンルを考えるとこれが独自の風合いを醸している
ものの肝心の怪の印象や恐怖感が伝わりにくくなり、印象が多少なりとも弱まってしまうのは
否めない。
かと言って暴力的に怖くする、出来るような作品でもないのは確か。難しいところだ。
■【−2】回るんですぅっ!
<文章> −1 <体験> −1 <得点> −2
前半、電車の車体整備に絡む話を長々としておきながらそれはありがちな怪談話を
ちょこっと羅列するだけで終わってしまう。
これと後半の怪との間には特段の関連性が感じられず、因果も半ば強引につけられて
しまっている。
塀の上に首が、という話は怪談としては定番ネタであり、回る、というのはちょっと
目新しいとしても回る霊、というネタ自体も聞いたことはある類。しかもそれをむしろ
ギャグネタにしてしまっているのでたいして怖くもならない。
こうしたネタとしての怪の弱さを補うため前半の気味の悪い話を付け加えたのか、と
勘ぐってしまう。
事故の場合の検証というのは現場で行なうものではないのだろうか。後に追加で
車体などを調べることもあるのか。
一番良くないのは、体験者が語り手に報告をしに飛んできたところ。
このようなやり取りはコントならともかく実際にはあり得まい。
わざとギャグでやっていたとしても、この話全体のトーンをここまで壊して挿入する
ような内容ではないだろう。正直これで大分ヒいてしまった。
■【−1】石油ストーブの灯火
<文章> −1 <体験> 0 <得点> −1
それなりに不思議な話ながら、あまりに淡々と書かれていて恐怖も不思議も残念ながら
伝わって来ない。しかも最後の文での体験者の感想もむしろ醒めた感じで、途中の
「興奮して」とは矛盾を感じる。
文章も内容と同様(というか文章によって一層)単調になってしまっている。
しかも手が8つくらい、と妙にぼかされている一方でストーブの芯の描写にやけに
凝っていたり(ちなみにストーブにもいろいろ形状があるのでそれに触れておいた方が
良い:この場合は円筒形のもの?)、決めの文章なのに「感心」を間違えていたり。
体験の時期を説明する文章を真ん中に唐突に持ってきた意味も判らない。
最初の文章でまあ子どもだろう、という想像はつくし、これを冒頭につけては
いけないようなものとは思われず、むしろ現状では明らかに話の流れをぶち切ってしまって
いる。
題名も別に灯火の話じゃないのでどうも腑に落ちない。
■【−4】ちどり足すくみ足
<文章> −3 <体験> −1 <得点> −4
一番の問題は自販機の位置を書いていないこと。何度も読めばどうも曲がり角に
あるらしい、と推測は出来るものの、角にくっついて自販機があっては危険だし、
実際の配置はやはり不明のまま。
だから、その後の描写も細かいわりにその基点がちゃんと認識できないので
いらいらするばかりだ。
話としても怪よりもむしろそちらに気がいってしまっているようで落ち着かない。
読み手は今何本目なのか、ということばかり気にして図でも書いていないと話に
おいていかれそうだ。
そして、自販機の向きと位置が書かれていないのでよくは判らないけれど、
小銭を出して顔を上げた場合、普通は自販機と対面している筈。
それがどうして3〜50メートルも先の男に目がいくのだろう。
ここからの描写ではさらにおかしい。
まず、現代の街灯、しかも家を間違える程の住宅街、そこで街灯の間で「闇に
消える」というのが不審。場所や状況によっては無いとは言えないけれど、
こうした場面設定がむしろそれを難しくしている。
そしてその闇を信じるなら、今度は角を曲がった時には誰もいなかった、と
言い切る自信はどこから来るのか判らない。街灯の間にいれば見えないんでしょ、
暗くて。
最後の段で奥さんとのやり取りを付け加えた意味も、最後の体験者の言葉の意味も
不明。向こうは人ではないのだから当たり前だし、ギャグにもなっていないし。
通り過ぎたとは言え危険なところに奥さんを呼んでこよう、というのもどうかと
思うし。
このやり取りからすると飲んだ後のようにも取れるけれど、残業の後の筈だから
そうでもあるまい。
もともと家に帰るまで電柱を数えながら帰る、というのも飲んでいる時なら
ともかく普通それ程意識するものだろうか。癖だからしようがないといわれれば、
これはもう仕方ないけれど。
さらにディテールの描写も「自慢の視力を〜」などのようにつまらない装飾が
多過ぎ一段と読み辛い。
これだけ難のある文章のわりに、怪は良くあるパターンを特に抜け出してはいない。
■【−2】駅の人混みで
<文章> −1 <体験> −1 <得点> −2
ようやく初読の領域に入った。これで全く無心に作品と対峙できる。
しんみりとしたした話ながら、現象そのものがもう何の新鮮味もないので
印象は強くならない。
妙に意味ありげな最後の文章も20年位前にどこかで読んだような感じ。
しかもこうしたところに「?」を使うのは止めた方が良い。会話の
半疑問形をまさに文章でやられた感じで何とも気持ち悪い。
全体に会話中心で進めているのも内容のわりに文章量が多くなってしまうし
それが特段の効果を生んでいるとも思えないので首肯できない。
何より、当初同じ会社の現役社員が死んで知らないのはおかしい、と思った。
しかしよく読んでみるとどうやら佐藤さん以外全員が派遣、ということらしい。
この著者の性別も不明ながら何となく(派遣ということでか)女性のイメージが
あり違和感はなかったけれど、現代でもまだ男性の派遣社員はごく一般的、という
ものではあるまい。
性別はともかく、全員が派遣で皆移動した、ということをきっちりと書いて
おいて欲しかった。私たち、とかそれぞれの人物名のところでわずかずつ
説明されても全体がうまく繋がってこない。
人は自分の環境が当然のもののように思ってしまいがち。しかし自分の
周囲ではごく自然に思われることや特に説明しなくても判ってもらえることでも
違う環境下では全く通じない、というのは良くあることだ。
万人に対して伝えていく、というこうした文章においては、読み手が本当に
判ってくれるかどうかを常に意識しながら書き綴っていく必要がある。
かく言う私にしても危うく謂われのない批判を浴びせてしまうところだった。
こういうビジネスの形態もある、ということに気付かせてもらえたのは
大変有り難い経験だったと思う。
何だかちょっと違う話になってしまったようだ。
■【−2】悔恨
<文章> 0 <体験> −2 <得点> −2
人によってハードルの高さや位置は異なるのだろうけれど、私は少なくとも
わずかでも根拠となる事象が存在している、現実的科学的には説明しきれない、と
いう要素があって初めて「怪」として成立する、と考えている。
だから、この作品のようにまずは気配を感じる(足音は説明可能なケースも
あるのでそれで証明にはならない)、その後は夢だけ、というのでは私基準では
怪として成立していない。
思い込みが強い人ならこの程度のことは充分に成し遂げる力を持っているもの
だからだ。
ただ、怪が成立していたと仮定すると、自分が霊の死ぬ前の体験を追体験する、と
いうのはちょっと面白い。ただ、これも類例がないわけではないけれど。
■【+5】黒玉
<文章> +2 <体験> +3 <得点> +5
さりげない導入から謎の生き物の闊達な描写、幸一や銀バアの人柄やお互いの
関係など、基本的には怪を語りながら見事に描き出している。
どうもこの手の話には弱く、評価が高めにはなってしまうものの、そんな贔屓目を
除いても見ても相当に質の高い作品であると自信を持ってお勧めできる。
こいつらが一体何物なのか、飲まされたものは何だったのか、当然銀バアは知っていた
筈なので、どうにかして聞き出せなかったのだろうか。否、別にこの著者を非難する
つもりなど更々無く、このタイプの作品に接する度思ってしまう無い物ねだりでは
あるのだけれど。
本当に無理矢理難を見つけるなら、というよりこの情景を浮かべる上でこれも
はっきりしていたら、と純粋に知りたいところでもあるのだけれど、この風呂桶、と
いうのはどんなものなのだろう。
やはり木製の五右衛門風呂のようなものなのだろうか。ユニットバス、ということ
だけはあるまい。
■【0】アルバイト
<文章> −1 <体験> +1 <得点> 0
パチンコ店のサクラ、というかなり興味深い話で始まり、それがどう展開するのか、と
意気込んだところで完全な肩透かしを食らってしまった。
確かに体験者がパチンコ店にいる理由はそれなんだろうけど、筋に関係ない話は多少
変えてしまってもうまくぼかしても良いところだろう。題名もだから思いっ切り間違っている。
怪については、明らかにコミケ会場の上空に生じる雲と同類のもの。
その分新鮮味や驚きは無いものの、やっぱりあるんだこういうの、という確認にはなった。
しかも触ると良くない、ということが判ったのは新しい発見。
「超1」に応募する位なのだから別著者でもこの程度の教科書は読んでその上で再構築して
欲しかったところで−1、確認と発見それぞれ+1で合計+1。
■【−3】乾麺
<文章> −1 <体験> −2 <得点> −3
乾麺、といっても和洋中華さまざまである。なぜそれをわざわざぼかすのだろう。
まあ、どうでも良いことではあるのだけれど。
昔郵便局でアルバイトをしていたけれど、確か最初から内勤と外勤募集は分かれていた筈。
まあ、それもどうでも良いんだけど。
お母さんが怪力だっただけでは、という思いを拭い去ることが出来ない。
■【+1】つまみ食い
<文章> −1 <体験> +2 <得点> +1
折角の体験なのに、文章力がついていっていない。惜しい。
怪女性の描写など、わざと分かり難く書いてあるのかと思う程だ。
「当時〜」という文章も「よく」が抜けている程度とも言えるけれど、それが無いだけで
何とも収まりの悪い文章になってしまう。
「彼氏募集中だった」というのもいきなりそこで一目惚れでもしたのか、と思うような
唐突ぶり。
そして何故肝の部分を全て改行もない語りでまとめてしまったのだろう。あざとい演出が
良いわけではないけれど、これでは素材を転がしただけ‥‥。
怪自体は冒頭折角、と書いたように女性を見ただけでなくアイスが無くなる、という
客観的な事象まで併発していて興味の湧く事例である。