2007-03-08
■【0】いないはずの隣人
<文章> −1 <体験> +1 <得点> 0
この作品も題名でおおよその作品イメージが想像でき、実際その想像を超えることも
出来なかった。
体験者=著者であり完全な独白スタイル。その長所も問題点もどちらも良く現れて
しまっており、トータルしてややマイナスが優勢、という印象。
長所としては自分のことなので話の進みゆきやその時の感情などがうまく表現されて
いる。
その一方、話題の取捨選択がうまく為されていないので、結局必要のない引越前の
隣人とのやり取りや、霊に出くわした後の行動が長くなってしまっている。
隣人とは「父が仕事で不在が多い関係からかなり親しくしてもらっていたが、ある日
引っ越してしまった」程度で充分判る。この話からは霊とオジサンとの関係は全く不明で
あり、著者とオジサンとのやり取りも怪異のヒントになるようなところはないから、
ストーリー上は無関係と言える内容だからだ。霊にあった後の体験者の行動は気持ちと
しては良く判るものの特段それがギャグになっているとか第二段の話があるわけでもなく、
怪談としては無くてよい段落となってしまっている。
折角青白く光っている、という特徴を書きながらその後は日本髪の女性、とだけしか
記しておらずその場の状況がよく判らない。ここが肝なのだからもう少し詳細且つ慎重に
描写した方が良いだろう。
このままでは光と女性とがちゃんと結びついてはいないので、実在の人間の可能性も
残ってしまう。ドアも翌日に確認したのでは閉まっていても何の不思議もない。
「…」の多用が目立つ作品が多いけれど(まさか同一著者?)、会話におけるあの
不愉快な半疑問形と通ずるものがあるのだろうか。
■【−1】小さい話
<文章> −2 <体験> +1 <得点> −1
冒頭いきなり「彼女」という代名詞に登場されても何のことやら判らない。何かの続きか、
と変な気分になるだけだ。
続いての文章も「私はすぐ追いつくだろう」と書いておいて先に歩いている。
「靴が転がってて、そこから」このそこから、とはどこなのか。靴を履いたままの足なら
靴が転がってて、という表現はおかしいし、靴と足とがどういう位置関係になっていたのか。
足だけ、というのは地面から生えていたのか、足から先が消えていたのか、それとも自販機の
下から足だけ出ていたのか。
肝心な怪異そのものの表現がちゃんとなされていないため、結局この場の情景を思い描く
ことは出来なかった。
ショートショートよりわずかに長い、という作品でここまで文章面に難があるときつい。
また別の作品で既述ながら、昼に霊が出ることに対し感心するのは構わないけれどわざわざ
こちらにお知らせしてくれなくて良い。もう充分判ってるので。
■【0】アパート
<文章> −1 <体験> +1 <得点> 0
結構怖い話だと思うのだけれど、どうにも怖さが伝わって来ない。何でかと思い何度も
読み返してみた。
やはり一つにはこの作品もモノローグになってしまっていることだろう。
一人称で語っていると地の文と会話でリズムや変化をつけたり、トーンを途中から変えて
いったりすることが難しい。そのため全体に平板な印象となってしまう。
冒頭の状況説明も折角の霊ずり下がりも同じような調子に受け取れるのだ。
またここから怖くなる、というところで「(?)」のようなずっこけた表現を入れない方が
良い。明らかに調子が狂った。しかも生えているよう、というのは既に説明してくれて
いるからここは言い切っても何ら問題はない。
細かいところでは顔を背けるのにもがく必要があるのかがちょっと疑問。横を向けば
良いだけなのだから。
恐い犬、という喩えも、これでは怪異よりもトーンダウンしてしまっている。
一番最後に見えた、頭部、というのは頭だけが別のところにあった、ということなのだろうか。
一言でも説明が欲しかった。瞬間移動していた、という可能性もあるので。
また、どうやらこの現象があってから一か月はここに住んでいたらしいけれど、その後は
何もなかったのだろうか。入居日と翌日立て続けに出ているようだし、その後の住人が気になる、
ということはある程度日常的な現象だったようにも受け取れる。ここにも言及があったら。
■【−1】新居案内
<文章> −1 <体験> 0 <得点> −1
これもまた怪異の説明が不足していて、これでは怪なのかどうかすらはっきりしない。
猫が走っていったのなら見えなくなっても当たり前。目の前で忽然と姿を消したのなら、
どのあたりでどんな風に消えてしまったのかをちゃんと書いてもらえないと読み手も
呆然としてしまう。
怪異を書くのが怪談である筈なので、そこに全く力を入れず、最早指摘するのも虚しい
「…」の方がよっぽど目立つ作品を書いてしまう、というのはどういうことなのだろう。
「こっちはねぇ、ほとんど手をつけずに…」こういう文章も唐突に出てこられると
どういう意味なのか考えあぐねそこで一旦リーディングのスピードが止まってしまう。
明らかに不利なのだが。
■【0】帰り道
<文章> −1 <体験> +1 <得点> 0
何だか同じことばかり書くことになってしまっている。どうしたことか。
これも上半身だけの「おばちゃん」が出る、としか書かれていない。
上半身だけのおばちゃんが間近に飛んできて消えてしまう。しかも毎日なのにその
事実そのものが現場近くになると記憶から一旦消え去る。
怪の内容としては相当に怖くなるポテンシャルを持った珠であるようにも思える。
しかし、現状では体験者のバイト先での軽い失敗を報告された程度のインパクトしか
感じられない。
どういった風貌のおばちゃんなのか、そこからどういう形で飛び出してくるのか、
おばちゃんの表情は、こちらを意識しているのかいないのか、毎日全く同じ経路を
辿っているのかetc.書くべきこと、書くことによってより話を盛り上げることができる
内容はいくらでもあるだろう。
何故そんなおいしい要素を突っ込んで取材し書いていこうと思わないのか本当に
不思議だ。勿体ない。
冒頭に「直前までは考えとんねんで」だけ独立させておく、というのは興味を
引っ張る、意図だとは思うけれど繋がるまでが長い上にその間完全に状況説明の
無味乾燥な文章が続いてしまうので、どこで繋がってくるのかむしろいらいらしてしまう。
成功しているようには思われない。
■【+1】ぱさりぱさり
<文章> −1 <体験> +2 <得点> +1
何ということだ。
書き込み不足を嘆き続けていたら、怪をしっかりと書いている作品に巡り会えたものの
それ以外の部分をもっと「しっかりと」書き込み過ぎてしまっているとは。
「今時の学生さんは、瀟洒なマンションで暮らしているのだろうが」というような表現は
ブログならともかく怪談では不要。そんな付加要素が無くとも充分以上に長いのだから。
「Y雄」何だかえらく懐かしい表現に出会えた。今は仮名かアルファベットだけ
だろうな、普通。
その後どうでも良い会話を長々と展開してくれている。関西人のようだから仕方ないかも
しれないけれど、こんなに詳細に会話を綴っていく必要があるとは思えない。
こうしたところをもっとコンパクトにし、怪にもっとしっかりとフォーカスを当てて
構成していたら、相当に強力な怪談が出来上がった気がする。場合によっては<体験>の
ポイントすら左右していたかも。
一つだけ気になるのは、犬のように唸っている声が聞こえるなら、それまでそれをどう
受け取っていたのだろう、ということ。「箒」の音についてはあるものの、そちらに
ついてのコメントはない。掃除と娘さん、からはそうした声は相当に異質だと思うのだけれど。
それと、この女は娘さんとは違う見知らぬ霊、ということで良いのだろうか。娘さんが
変身して、という話ではないよね。
■【+1】藪から…
<文章> 0 <体験> +1 <得点> +1
ついに題名に今話題の「…」が。一体みなさん何の効果を狙っているのだろうか。
驚きの表現を「驚いた」というのはちょっとどうかと。
次の「犬も驚いて飛び上がっていた」は可愛くて良いのだけれど。
「怒り半分逃げ腰半分」というのはよく判らない。逃げ腰なら怖いところを覗いたりは
しないだろう。
全体にすっきりとまとまっててはいて、インパクトは強くないもののショートショートと
して成立するレベルには達している気がする。
■【−2】再会
<文章> −1 <体験> 0 <不幸> −1 <得点> −2
「幽霊が見えるという」冒頭から怪談ではタブーとあちこちで指摘を受けている表現で
スタートしている。しかしこの作品の場合それが前提になっているので「あり」なのかも
しれない。
とは言え、だからこの作品がいける、ということではない。
肝を会話だけで構成してしまっているのもマイナス。
さらに、ある種の因縁と言うか「周りを不幸にする力」について何も語ってくれない。
彼女が死んでいるらしいことは判るもののその理由も力との関わりも一切触れられない。
これでは、料理は見せられたけれどこれは食べられませんよ、と言われているようなもので
読み手は作品の妙味を共に味わうことが出来ない。
しかも内容的にはかなりダークな方向の話なのにストーリーのトーンはかなりコミカルで、
互いの魅力を打ち消し合ってしまっている。
仕事上の関わりなら問題ない、ということもこの内容では説得力がない。
■【−2】なるほどねぇ…
<文章> −1 <体験> −1 <得点> −2
「なるほどねぇ…」ならまあいいか。どうも…をみると異常に反応するようになって
しまった。
「綺麗に鳥肌が移動するのを冷静に見ていた」という表現は面白い。綺麗にというのは
最適な語彙とは思えないけれど。何かが抜けていった、という実感を的確に伝えてくれる。
ただ、その後は最悪。このところ繰り返し書いているように怪談の肝で興を削ぐような
異物を挿入しちゃいけませんって。「左(仏間)を見て右(縁側)」こんな書き方をするのなら、
その直前にでも「左は仏間で右が縁側である」とでも何とでも説明しておけば済むこと。
昔の手書き原稿ならまだかろうじて判らなくもないけれど、この時代文章を修正するなど
何の雑作もないのだから、ここでこりゃ分らんと思ったらそこで誤魔化そうとしないで
きちんと書き直そう。
同様に主たる段落が全く改行無しに進んでしまうのもマイナス。
「自分」というのは方言なので、地の文に使うのは止めた方が良い。方言を使うなら
会話の中か、もしくは全体を意図を持って方言で統一するか、でないと。
「恐いと思う心を理論で武装し」というような特異な表現も散見され気になる。
根本として、ぼんやりとした白い影と寒気だけ、というのは目新しさに欠ける。
■【−3】こっくりさん
<文章> −1 <体験> −2 <得点> −3
こっくりさんネタもタブー、というかハードルが高い、と各所で言われながら挑戦する猛者は
絶えることがないようだ。
多感な思春期、かなり興奮した状況下、感情が爆発するような事態が起きてもそう不思議では
ない。
それぞれの事象が単に寝てしまったり泣いたり、ということしか判らずその前後の状況なども
不明なためコトがよく飲み込めない。
一つ一つの話も皆違う反応なので、それが繋がっている、という心証も得られない。
「こっくりさんをやりながら、こっくりこっくりと」まさか、これを書きたかっただけじゃ
あるまいな。
■【−1】ぐるぐる
<文章> −1 <体験> 0 <得点> −1
体験者の感情の動きがどうも判らず、話についていけない。
最初の体験には「異常なほど怖がりだった私」が「いつの間にか寝て」しまい「まぁ寝ぼけて
いたのかな?とも思え」る程度。
その後も毎日そんな目に遭いながら現象同様、特に何か反応しているわけでもない。ただ
「怖い怖いという思いがそれを感じさせている」と言うから怖かったことは間違いないようだ。
ところが、最後になって弟の話を聞いてから「初めてさぶいぼに包まれた」。
では、それまでの恐怖は何だったんだろうか。恐がり、と言うわりには反応が薄過ぎはしない
だろうか。
他にも「忘却の彼方へと葬り去られた」(なら覚えているのはおかしいのでは)など妙に
時代がかった表現を使っており、これもそういった脚色でつけたようにも思われる。かえって
逆効果だが。
また、「丸い大き目のボールのようなものを軽く押し付けるような感じ」表現が稚拙なのは
ともかく、これは弟の話によれば足の裏、ということになる。
実際の経験がないので足の裏を軽く当てられたらどういう感じがするかは判らないけれど
少なくとも想像するにこの二つが同じものを指している、ようにはどうにも思えず違和感だけが
残る。しかもどちらかというとただの人よりも「ボールのようなもの」の方が怖い。
胸を押し付けるのではなく軽く乗ってくるだけ、など興味深い現象は幾つかあるのだけれど
それが霞んでしまっている。