2007-03-13
■【0】我が子
<文章> −1 <体験> +1 <得点> 0
こちらの読解力不足か、肝心なところが想像できない。
「蔓のように伸びた黄色い繊維の束が数本」これがどんな形でどの位の
太さなのか。
しかもそれが伸びていって手を覆う、とあるけれど、それは手をぐるぐる
巻にしていった、ということなのだろうか。
何となく判らなくはないもののこの情景がイメージできないと怪も
台無しである。
最後の恨んでいる、というのもこの場合よく判らない。体験者にはそんな
筋合いなどないし。
怪異そのものはあまり聞いたことのないユニークなものだと思う。
■【0】自動販売機
<文章> −1 <体験> +1 <得点> 0
結構奇妙な話であり、この場合全体のややコミカルなトーンが内容にマッチしている。
お互いに鼻を鳴らして消えていく、とはどういういきさつがあったのだろう。
但し、文章はやたらと読点が多く、しかもそれが時折間違った箇所に打たれていて大分
読み辛い。
もう少しこなれていればもっと強い印象を残せたかもしれない。
それと「電柱に隠れる」って、それはあんまりじゃない?
■【+3】のっそり
<文章> +2 <体験> +1 <得点> +3
怪異としては黒い奴がいて消えてしまっただけなので小粒。
文章が優れているので結構読ませてくれた。
ただ、その分かえって怪のレベルを超えてしまっており物足りなさが募る。
「幾分薄くなった闇の中で、より濃い黒が蠢いていた」なんて書かれたら、これから
凄いことが起きそうなもの。体験者の対応もこれは仕方のないところながら中途半端で
恐怖が尻すぼみになってしまう。
これだけの力を持っているのだから強烈な体験と出会えることをお祈りする。
今回は残念だった。
■【−3】白い足
<文章> 0 <体験> 0 <確認> −3 <得点> −3
これだけ種々に書かれているのだから、応募者はもういい加減「見える」発言を
止めようよ。あえてそこで勝負したい方を除き。
まあ、今回は「見えない」方らしいけど。
この作品にはそれが怪であるために必要な「現実ではない」という要件が全く
満たされていない。
本当はそう思える状況だったのかもしれない。
しかし、読み手はここに書かれた文章からだけしか判断は出来ないし、それで
下してしまう。だから後から否そこは違う、本当はあの時、という言い訳は
通用しないのである。
ここではまずここに他の人間がいなかったかどうか判らないし、ずっと泳いで
いたなら実際その確認も出来なかっただろう。
まず最低限この時点でプールにいた人間が2人だけであったこと、また、誰か
別の人間が入り得る状況ではなかったこと、それがないとこれを不思議なものと
思え、と言われてもむしろ困る。
■【0】年末の決意
<文章> −1 <体験> +1 <得点> 0
それなりに怖い体験な筈なのに、何だかのんびりとしてしまって印象が残らない。
やはり著者が見えない、というよりもそこで起きているとんでもない現象への
反応や対応が鈍いことに起因しているのだろう。
特に明らかに気味の悪い女性に対してあまりに無反応。この対応ではゴキブリと
印象がたいして変わらん。
だから、子どもが加わったことで部屋にいられない、という発言も何だか
リアリティが無く、とりあえず言ってみただけ、のように聞こえてしまう。
私もそういった感性にはまるっきり欠如しているので、対応の使用がない、と
いうのも判らなくはないけれど、だったら怪談としては不要な自分の対応などは
思いっ切り削ってしまい、体験者である彼女の行動・心情などを中心にまとめて
しまえばちゃんとした話として仕上がったのではないか。
ここまで自分を中心に据える必然性はどこにあるのだろう。
一旦評価を書いた後、他の方の講評を拝見し、まさに同様の視点で別の角度から
書かれたものがあったのでそれに触発されて追加を。
確かに題名からしてもこの作品はあえて私の指摘とは逆のベクトルへ振った、と
いう可能性は充分に考えられる。
しかし、私としては語りの中心が怪にはない怪談に興味はない。否、少なくとも
実話怪談においては。
もしそれ以外のことを書きたいのだとしたらこの分量というのは明らかに
書き足りない筈で、しかもそこに怪を介在させることによってどちらも中途半端に
終わってしまう危険性はより強くなる。
第一、怪にテーマのない話をこの場で読ませてもらう必要もない。
よって評価・講評に変更を加える必要は全く感じない。
■【−2】見知らぬ連れ
<文章> −1 <体験> −1 <得点> −2
謎の男に関しては、単なる変な奴であるか怪異である過去の作品からは判断できない。
目の前で忽然と消えたわけでもないし、この作品から判断する限り直前まで電話が
かかっていたのに通じなくなったわけでもないのだから。
鍵を握る友人が彼の存在を否定も肯定もしていないから尚更だ。
誰も知らない男と一緒に、というのは気味悪い話ではあるものの怪談ではない。
それとは別に怪異は発生するけれど、肝がそちらではないのでどうも腰が据わらない。
しかも、八甲田山に行って母子と血の臭い、というのはどちらも違うので(あそこなら
兵士、凍死がキーワード)何とも腑に落ちない。
文章の方も未整理なままだらだら書かれた印象でとりとめがない。
最後の文章の意味がとんとわからないし、やたら彼女にこだわるのもまた妙な力点の
置き方である。
■【0】潜伏期間
<文章> −1 <体験> +1 <得点> 0
人数の符合のせいか何だか七人みさきを思い出した。内容的には大分違うのだけれど。
怖ろしい話の筈なのに、何故かそれが迫ってこない。
やはりこの7人が特に禁忌を犯した、という風に見えないせいだろう。
「千人塚」が今でも怖れられたり崇められたりしている場所で立ち入ることさえ
はばかられるのであれば納得がいく。
しかし、夜も明るい、ということはおそらく公園化しているものと思われる。
塚の裏でしょんべんした、といういたずらはあったようだけれど、これだけでは他の
霊から考えてもここまで強烈な呪いや罰が当たる行為でもない。墓石については塚とは
別物。
このようにここまでの行為はごく普通のちょっといたずらな餓鬼どもの他愛もない
行動としか見えない。
先に書いたようにこの千人塚の不可侵性が語られていたり、かれらの行動がもっと
エスカレートしていたりすればより迫力が増したろう。
また、題名からすると、著者は怪の発生間隔が次第に短くなっていることに強く
惹かれているようだけれど、この内容で一番重要なのは7人が連鎖的に死んでいる、と
いう方だろう。ずれてしまっている気がする。
もしそちらを肝にして構成するなら、堺君の視点で自分に迫ってきているであろう
死への恐怖などを軸に描いていかないとそうは見えない。
話の導入部で次々と知らぬ名が出てくるのは極めて不自然。ネタばれを避けたかったの
かもしれないけど、これでは誰が何だか何が誰だかわからなくなってしまう。
冒頭の文章につまらない誤植があるのも興醒めする。
書き終えたらせめて一度は読み直して欲しい。そうすればさすがにこれ位は気付くだろう。
■【+1】お気に入り
<文章> −1 <体験> +2 <得点> +1
何人もに目撃されながらそれ程怖れられず、それどころかスタンドにとってプラスにさえ
なってしまう、という特異なそして人情味ある霊の存在だ。
怪談なのに読後感が爽やか、という得難いものでもある。
ただ、文章と展開が流石にゆっくりとし過ぎていて途中少しいらつき、先に飛ばしたく
なってしまった。ただ見える、ということの確認を一人一人のエピソードをしっかり語られても
ただの繰り返しにしか見えないし、途中急に話が変わるところもまあそれがオチへのネタ振りに
なってはいるのだけれど、一体これは何を書いているんだろう、と読んでいる最中は正直
辟易した。是非整理して読み手を惹き込む文章・構成のあり方を研究されたい。
また、怪談取材に関する文章も、著者が一冊の本をものした時その一編の中で語るなら好きに
してもらって良いけれど、こうした大会の応募作の中で語られても困る。内容的にも既に
怪談名人たちが折々語ってきたことと変わらないし。
特にどういう取材をしたのかが内容に大きく関わってくるなら別だけれど、この場合は
そうではない。
■【+1】田臼
<文章> 0 <体験> +1 <得点> +1
これも折角の題材なのに惜しい感じだ。
それなりのノスタルジー、とは言ってももう昭和も終わり近くだからむしろ世はバブル準備期に
なっている筈なんだろうけど、そんなのんびりした空気が支配している。
だからこそ、こうした怪も成立するのだろう。
しかし、冒頭書いたように霊とも妖怪とも違うむしろ神のような存在に出会ったのなら、
もうちょっとその情景や姿をしっかりと書き込んで欲しかった。
具体的な記述はわずか2行しかないのだ。
また文章もこなれていない。
途中の田園と堤防と川との関係について、相当頭を捻ってみたけれど結局地図が
描けなかった。もう少し人に判るように整理された紹介をして欲しい。
■【0】掃除機
<文章> +1 <体験> −1 <得点> 0
文章に関しては、若者らしい語り口をうまく取り入れながら、ストーリーとしては
簡潔に手際良く引き込んでくれる。意外と老練の技を感じる。別に年を取っている、と
いう意味ではないので、念のため。
ただ、ネタの方はちょっと気味悪いしそれなりの雰囲気はあるのだけれど、いかんせん
汚れまくった部屋に黒い物体となるととある昆虫やさる哺乳類などの方が浮かんできて
霊のように思えてこない。御札で収まった、というのも偶然ぽい気もするし。
その黒い物体、の記述が何ら無いのも一因か。あ、これまさに加藤氏が書かれた男が
恐怖できない原因そのままでは。
■【+4】二階
<文章> +2 <体験> +2 <得点> +4
天井に正座する三人組。ありそうで聞いたことない霊の有り様だ。
霊の姿をしっかりと語ってくれ、その時の体験者の心情もよく判るし、見つめる霊との
緊迫した空気、停止する時間までも感じさせてくれる。
その体験だけでも見事なものなのに、おまけの話までユニークで興味深い。
既に書いたように文章でもすっかり読ませてもらった。
ただ、もう少し文章や内容にメリハリがあると良かったかも。全体に一本調子な
感じがする。
また、「こんな物件はこちらから願い下げだ」という台詞は部屋を出た直後で
充分だろう。
作品としては最後のオチの盛り上げとして付けたかったのかもしれないけれど、
あれだけの体験をした後で普通の人間の目線なんてもう気になるどころではないんじゃ。
■【−2】運命の赤い糸
<文章> −1 <体験> −1 <得点> −2
「この人は生きていない」道端に女性が立っているだけで何の説明もなく
こう断言されても、素直には従えない。
後段この女性が確かに霊的なものであるのは確かめられるのだけれど、ここでも
ちょっとでも良いから何故生きていないと判るのか説明が欲しい。
現状だとここで一旦相当に醒めてしまうのでドラマ上かなり不利になってしまう。
判らないのは、そしてポイントを下げてしまったのは、次の男性が事故死して
女性霊が呼んだのかな、と思ったらその女性はまだ糸を引いていた、という下り。
女性から男性、そしてそれから次へ、という連鎖なら納得もいくのだけれど
今女性は一体誰を呼んでいるというのだろう、そして男性は本当にこの女性に
呼ばれたのだろうか。
このあたりから混乱してしまい、話自体の信憑性に疑問符が生じてしまったのである。
文章も単調で、且つ後半大事なところに誤植が目立つ。
一方、題名から連想されるイメージと内容との見事なギャップは巧妙。
■【0】このやろ
<文章> −1 <体験> +1 <得点> 0
一発怪談としてはテンポも良いし冷静になって考えると結構怖い事例だし、でも
笑える話だし、ということで好印象。
文章がもう少し良ければね。
最早繰り返し繰り返しになるけれど、一発怪談の場合には文章、文字、その全てに
気を抜いてはいけない。この文字数の中で「懇親」のような腰砕け誤植は致命傷になる。
だがこの作品の場合一番いけないのは霊に「おじいさん」「おばあさん」と
付けてしまったところだろう。
突然現れた気味の悪い(じいさんの描写が少しはあった方が良いかも)老人と
凄い形相で豪腕を食い止める老婆。
これと昔話風の「おじいさん、おばあさん」ではあまりにそぐわない。
老人、老婆でも極端に言えばじじい、ばばあでも良いからもっと緊迫感のある表現に
した方がスピード感と臨場感が増したと思われる。
決して駄目な文章、というわけではないのだけれど例によって一発怪談の場合には
ハードルを高く、ということで。
■【+2】肝だめし
<文章> +1 <体験> +1 <得点> +2
途中までは典型的な恐怖スポット怪談展開なので食傷気味な気持ちで読み進めた。
全員の病気も寒かったらしいから確かに風邪もあり得るし、結局「見える」人が
一人で騒いでいただけだったので。
ただ、オチの話はなかなか凄い。ほんの少しだけ誰かにいたずらされたのでは、
という思いもちらと脳の端の方よぎりはするものの、ここは体験を信じよう。
また、都市伝説とは違って見える人も復帰しているし、その彼の言葉もきちんと
拾えているので違和感は払拭できた。
語り手以外の会話を『』で囲むのは何だかそれが特別なものに思えてしまうので
個人的には嫌。用法としても正しいものではないだろう。
■【0】温もり
<文章> −1 <体験> +1 <得点> 0
体験者と親友の間の繋がりが何も語られずいきなり落ち込んでしまうので、読み手は
ついていけない。これは全編を通じて大事な要素なのだから前置きが長くなるから、と
いう理由で端折ってしまって良いところではないだろう。
また段落もなくだらだらと続いてしまうのでかなり読み辛い。
話の内容は明らかに幾つかの節目で切れているのだからそれに合わせて読み易くし
メリハリを付ける工夫が必要。
あと、これは著者の責任でもないのだろうけれど「I」と「さ」がくっついてしまって
いて、「Iさん」というのが出てくる度に引っかかってしまった。
最後の二文はどちらも要らない。
霊に何か現実の物質を付けられる、というのは何か妙な感じがするし、もしあったと
してもそれなら何らかの匂いがあって良い筈。まさかちゃんと考えて無香料。
最後の文章もこの内容とは全く関係ない。途中にあるならまだ判るが。
■【+4】袖引き
<文章> +2 <体験> +2 <得点> +4
見事に素敵な最悪の話である。
語り口もうまく、相当に長い話なのにそれを感じさせない。内容があって長い話は
歓迎、というのもあるけれど。
しかも題名がどこにも絡まないまま主要部分が終わってしまったか、と思えるところで
その意味が明らかにされ、それがすっぽりオチへと嵌っていく。構成も素晴らしい。
ただ、ちゃんと怪に絡む話も二回登場してはいるものの、やはりこの家族に圧倒的な
ネタパワーを感じてしまうため、総体の印象が怪談というよりは東京伝説のようになって
しまう。
個人的にはかなり好きな作品なんだけど、この場は怪談を評価する場、ということで
少し厳しめにさせてもらっておく。「饐えた(もしくはすえた)」にも注意。