Forgotten Dreams

2007-03-22

【−3】無事故祈願


 <文章> −1  <体験> −2   <得点> −3


 皮肉な笑い話ではあるものの、怪談としての要件はほとんど満たしていない。


 神社境内で御札が降ってくる、というのはあり得ないことではない。

 そして、美人、というのは何の表現もされていないので霊的なものなのか

人間なのか判らない。


 文章も怪談としてちゃんと仕上げよう、という意図がほとんど見られない。

 御札については「とりあえず面倒臭いのでほったらかし」てしまうし(この

表現も何ともそぐわない)、女性の方も「凄い美人だった」としか触れて

くれない。

 これでは話に没入してくれ、という方が無理というもの。

【0】近所迷惑


 <文章> −1  <体験> +1   <得点> 0


 ユニークな話ではある。

 ただ、一発怪談としては文章があまりに平板でインパクトがない。

 こうした作風ではこれは命取りだ。

 「天井一杯の」という表記からは大きな顔、を連想するも、ここが少し曖昧にも

なっている。

【−4】くの字


 <文章> −2  <体験> −2   <得点> −4


 まず文章が要領を得ず、状況が判り難い。その上、後段の怪(おそらく就寝時の

話なのだろう)に突然繋がってしまったりして必要以上に混乱を招く。


 タクシーの車高からして、どうもくの字に曲がって、ボンネットに寄り掛かる、

という情景が想像できない。L字になってボンネットの上に寝ている、ならまだ

判るのだけれど。低速であればブレーキ音などもしないだろう。そのあたりの

推測も的が外れている。


 しかし何と言っても夢の表現があまりに単純すぎるのも盛り上げてくれない。

【+1】煙


 <文章> −1  <体験> +2   <得点> +1


 怪異そのものは強烈である。火葬場の煙、にまつわる話は時折ある中でも

インパクトでは有数だと思う。

 ただ、文章がその書き出しから妙に時代がかってしまっていて、一昔前の怪談を

読んでいるような気分にさせられてしまう。

 当然その分内容とは関係なく嘘くさく感じられてしまうし印象も弱くなってしまう。

【0】図書館


 <文章> −1  <体験> +1   <得点> 0


 全体に怪異としては小粒、と言えるレベルながら「炎を上げて」消えた、というのは

あまり聞かないので目新しい。


 ただ、情景の描写がかなり曖昧で場面を想像し辛い。微妙なタイプミスや「進路を

コンビニに変更しようとした」というような妙に個性的な文章が目について一層

読み難さを増す。体験者は歩いているんだよね。

 さらに前半を始め不要な情報が多く流れを阻害している。

【−2】公園デビュー


 <文章> −1  <体験> +1  <母親> −2  <得点> −2


 この作品でも話の中心が怪談にはない。明らかに「人付き合いの難しさを語る」

エピソードとして作られている。

 だから思わぬ展開になってしまい慌てる体験者の様子や心情は見事に活写されて

いるのに対し、怪異はかなり添え物的な扱いしかされていない。

 また、子どももおらずただ座っている女性のことを「公園デビュー」という緊張の

場でいきなりするのも妙な気がする。普通なら関係ない、と思う筈。

 これはその後のエピソードが判っていて初めてあり得るやり取りのように思えて

ならない。

 冒頭の公園デビューの説明も今更要らない気はする。まあ誰が読むか判らないから、

というのはあるんだろうけど。


 この体験者(母子)にとっては怪異デビューでもあったのだろうか。

 対応として見慣れているようには感じられないし。

【+1】白い


 <文章> 0  <体験> +1   <得点> +1


 善と悪との対決、かどうかは知らないけれど対決のシーンはなかなかに読み応えがある。

 お互いに何だか判らない、というのも良い。

 ただ文章の中にちりばめられている不要な説明が多かったり、描写がちょっとおかし

かったりして前半はむしろ読み辛い。「避難所としての意味合いが強いらしく」

「まだ頭痛という単語を知らなかった」「ジョリッジョリッ、と老人が砂利をけって、

彼女にゆっくり近づいてくる(音と動作とスピードがばらばら)」etc.

 どうしてこう違ってしまうのか不思議なところだ。

【+2】やり直し


 <文章> +1  <体験> +1   <得点> +2


 生き霊にしては妙に弱気で興味深い。

 文章も一発怪談として成立しているレベルだと思うし、逆にこれで完結してしまっている上

これを詳しく書いても生々しい要素が増えるだけになりそうなので、このすっきりした体裁が

良いのでは、と思う。


 ただ作品中の「無表情、抑揚のない声」というのが少し気になる。

 死者ではないので感情を失っているわけではないだろうし、この内容は感情を押し殺さなければ

ならないようなものでもないし。この行のみ、この内容を盛り上げるものとはなり得ていないように

感じる。

【0】てのひら怪談


 <文章> −1  <体験> +1   <得点> 0


 主催者が認めている形式で応募してきただけなのだから、応募者に非は全く無い。

 私もQRコードを読める環境には無いのだけれど仕方がない。指示通りにすることで何とか

解読できた。何か一言言うとしたら主催者に対してであって応募者には素直に作品を評価して

いきたい。


 一発怪談としてみた場合、文章に問題がある。

 「厭悪」はおそらく「嫌悪」の誤植と思われるけれど、何度も書いているように一発怪談では

誤植は御法度。意味が判らなくなる。

 二文目で怪異の存在を認めてしまって展開してるのがインパクトを弱めている主因ではなかろうか。

 てのひらに顔があること自体が怪異なのだからそれが残るような文にすべきだったのでは。

 さらにこれをわざわざ一発怪談にしない方が、つまりその顔の様子やどんな場でなのか、といった

肉付けをしていった方がより恐怖と怪異の存在感を増す内容だったのでは、という期待が

あるのだけれど。

【+1】避難訓練


 <文章> −1  <体験> +2   <得点> +1


 嫌な体験だ。


 怪異としては強烈なインパクトもあり、その描写も丁寧である。

 ただ、丁寧すぎて説明が多く、それで長くなってしまっている印象も受ける。

例えば「島田先生とは理恵さんのことだ」や「松尾の席から最も遠い前側、

黒板のある方の入り口から」などのように。

 そのあたりをもっと整理すれば恐さが増すように思う。現在では文章の中に

恐怖が埋もれてしまっている。


 また、最後に何故病名の説明をするのか判らない。これも怪談とは逆の

ベクトルに印象を引っ張ってしまっているのでは。