2011-07-16
■[雑談]どうやら恥じらいつつも自分の黒歴史を公表するのが流行っているようなので
自分はいわゆる「ニセ科学批判クラスタ」には入ら(入れ)ないと思っているし、懐疑論をしっかり理解していないのに懐疑論者を名乗れないとも思っている。また、サイエンスコミュニケーションをしようなどという大それたことは考えたこともない。仮にやろうとしたところで、「サイエンス」も「コミュニケーション」も専門外で、ノウハウにしてもスキルにしても(気力の面でも)質と量の圧倒的な欠乏を実感した挙句、自分にできることはただ沈黙することくらいというふうにすら思えてくる。
だがオカルト批判やニセ科学批判の動向は普段からわりと興味を持って拝見しているし、このブログでも自閉症にまつわるニセ科学や代替医療への懐疑的な意見を述べているので、誰かの参考になるとも思えないが自分語りのメモとして記録しておくことにした。
メモだから、読者の存在をあまり意識しないで書くものの、何だかわけがわからない人や自分の備忘のために経緯を書いておくと、この流行の発端は、dlitさんのこのエントリhttp://d.hatena.ne.jp/dlit/20110704/1309768580に対して、ばらこさんがこうhttp://d.hatena.ne.jp/rosechild/20110714/1310598962反応したことにある。これをきっかけに、この領域のそうそうたる論者たちが、自らの黒歴史を語り始めたのであった。
■或るトンデモ支持者の履歴――科学的懐疑主義に目覚めるまで: Interdisciplinary
http://seisin-isiki-karada.cocolog-nifty.com/blog/2011/07/post-2a05.html
■サイエンスコミュニケーションで自分なりに考えていること - とらねこ日誌
http://d.hatena.ne.jp/doramao/20110715/1310730195
■信奉者だった僕はどのようにして懐疑論者と呼ばれるようになったか - Skepticism is beautiful
http://d.hatena.ne.jp/lets_skeptic/20110715/p1
■ある懐疑論者が育つまで - 火薬と鋼
http://d.hatena.ne.jp/machida77/20110716/p1
■人に黒歴史あり - ばらこの日記
http://d.hatena.ne.jp/rosechild/20110716/1310781299
自分には彼・彼女たちのような華々しい(?)黒歴史があるわけではない。あまり物事を真剣に突き詰めて考えることがなかったからだとも考えられる。ひょっとしたらそういう才能、ある種の知性に恵まれなかったのかもしれない。
少年時代
自分は少年時代にUFOや幽霊の話に没頭するということはなかった。その手の話は信じない方だったが、同時に怖くて苦手だった。小学生のころは口裂け女の話にはマジでビビった。高校生のころは、所属していた山岳部でキャンプの時に夜のテントの中で明かりを消して怪談をする習慣があったのだが、これも大嫌いだった。恐怖を感じるということは信じている証拠ではないかと言われるかもしれないが、科学者にも怖いものはあるらしいし、かの大槻教授だって、真夜中に真っ暗な墓場の中をたった一人で歩きたいとは思わないのではないか。
なお、父は大学の農学部を卒業して農薬の開発を生業としていたので、特に母親から「農薬は生協が忌み嫌うような危険で悪い物というわけではない」と聞かされて育ち、「よくわからないけどそうだろうね」くらいの認識であった。
キング・クリムソンの影響
中学時代から聴き始めたプログレッシブロックを代表するバンド、キング・クリムゾンの歌詞の影響で中2病的に「なんだか世の中っておかしくね?」と考えるのがカッコイイと感じ、世の中のおかしいところを探し始めた。確か高校の卒業文集には「天然ビタミンC入りの健康食品とか、なんだか世の中って変だよね」みたいなことを書いた記憶がある。しかし恥ずかしすぎるので卒業文集を探して確かめることはしない。
だが同時にキング・クリムゾンの影響で神秘主義に興味を持ち始めたのだった。音楽が人に対して何か不思議な力を持つに違いないと感じていたし、カリスマ的リーダーのロバート・フリップが神秘主義に傾倒していたこともある。しかし、一番大きなきっかけは北村昌士氏(故人)が書いた「キング・クリムゾン 至高の音宇宙を求めて」という本との出会いだった。この本にはキング・クリムゾンの音楽に秘められた神秘的な解釈について解説してあった。グノーシス主義というものに強く影響されているという。神秘主義についてもっと詳しく知りたいと思い、何冊か読んだがその中にはこんな本がある(↓)。
- 作者: 秋山さと子
- 出版社/メーカー: 講談社
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「隠されたる神」の実在がユングを勇気づける。明晰で合理的な意識とふくれあがる無意識の領域。分裂した自我の統合をめざすユングにグノーシスの呼び声がとどく。ヘレニズムの精神的発酵のうちに生まれたこの思想は、ヘルメス学、カバラ、薔薇十字に受け継がれ、集合無意識、星の強制力などの概念をユング心理学に胚胎させる。
この本をきっかけに精神分析にも興味を持つようになった。
- 作者: コリン・ウィルソン,中村保男
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 1988/02/19
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アウトサイダー=社会秩序の中にあることをみずからの意志で拒否している者。こういった人たちは、インサイダー=既成秩序の内側にとどまる人びと、にとってはやっかい者でしかない。しかし、コリン・ウィルソンは、ヘミングウェイ、サルトル、ドストエフスキー、ゴッホ他にあらゆる例をとりアウトサイダーを語りつくして、知的スリラーにまとめあげた。著者が25歳のときに全世界に発表され、一時代の青春の血を沸かせた名著である。
自分は多数派と違っていると強く感じて孤独感と優越感が入り交じったような感触を楽しんでいた。おそらく少年少女にありがちなパターンなのだろうが、自分はそれが強めだったと思う。そして自分を「アウトサイダー」という特別な存在になぞらえた。著者のコリン・ウィルソンはこの本ではそれほど神秘主義を感じさせないが、その後の著作ではコテコテのオカルトぶりを発揮する。
数学への挫折
中学から高校2年まで一番勉強に時間を割いたのは数学だった。学校の試験の前になるとクラスメイトに教えて欲しいと請われて自慢気に解説してあげたりしていた。しかし、努力も虚しく一番成績が振るわなかったのも数学だった。ちょっとした四則演算の部分などでのケアレスミスが非常に多いのだ。分かっているつもりなのにミスをするというのは本当に悔しい。試験前に自慢気にレクチャーしたクラスメイトにすら成績が及ばずにショックを受けたことも。一方で暗記は得意だったので日本史は数学の半分程度の努力で学年トップクラスの成績が取れた。加えて高校の時の数学の教師がどうしても好きになれなかった。こうして半ば必然的に数学嫌いに陥ったのである。理系に憧れがあり化学や物理の成績は悪くはなかったのだが、数学が苦手で嫌いとあっては文系を選ぶよりほかなかった。
大学時代
大学に入ると当時ベストセラーだった栗本慎一郎の「パンツをはいたサル」という本を読んで感動した。もともと精神分析に関心を持っていた自分にとってツボを抑えたことがたくさん書いてあったのである。これをきっかけに現代思想へ接近することになった。ちなみに一般教養で心理学も履修したものの、自分の持っていた勝手な心理学のイメージとまったく異なっていて興味を持てなかった。自分は地道な証拠の積み重ねよりも安易で大仰なロマンと明快な解答を求めていた。
ゼミはモンテスキューの「法の精神」を勉強したのだが地道で実証主義的な彼のやり方に魅力を感じず、サブゼミでの西洋哲学史の勉強に注力した。哲学の論理的な手法を学びたかったのではなく、やはり浮世離れしたロマンを求めていたのだと思う。ゼミに入る前の2年生の時には宅建主任者の資格を取ってみたりもした。自己採点ではほぼ満点に近かった。しかし、法律の勉強は虚しくてつまらないなと思った。宅建の資格を取ったくらいで法律を勉強したつもりになっていたのは自分のアサハカなところである。数学嫌いのため経済学も駄目だった。法律など所詮人が勝手にこしらえたルール、経済学なんかで真理などわかるものか、やはり哲学〜現代思想は本質的な学問だなどと悦に入っていた。今思えば滑稽で恥ずかしい。
しかし、哲学や思想で食べていくのは難しい。才能と地道な努力と時間と資金と運とそれに賭ける度胸がたくさん必要で、どれ一つとして十分でないことを自覚した私は、大学卒業後は先輩たちからの進学の誘いを断って、一般企業に就職することにした。浮世離れした生活はもうここでおしまい。現実を見て企業戦士(ただのサラリーマンともいう)に生まれ変わることに決めた。でも長続きしなかったけれど。ある種の過剰適応でうつ病になったのだ。まぁ自分にとってせいぜいその辺が関の山というやつだ。
転機
そんな自分に転機が訪れたのは、息子に自閉症の診断が下った時だった。当時はまだ今ほど自閉症はメジャーではなく、関連書籍も多くはなかった(今は逆にたくさんありすぎて良い本を選ぶのが難しいけれど)。インターネットを駆使して情報を必死にあさっていたのだが(当時はインターネットの情報も限られていたが同時にトンデモなサイトも少なかったから比較的安全だった)、この中で私が注目したのは、「じゃじゃまるトンネル迷路」http://www.synapse.ne.jp/~shinji/jyajya/jyajya.htmlというサイトだった。自閉症の子どもを持つ親であり医師でもある人が医学誌に掲載された自閉症に関する英語の論文を和訳して紹介していた。
医学論文は初めて読んだので十分に理解したとは言いがたいが、必死に読んでエッセンスはつかめたような気がする。疫学や統計学の専門用語も少なくなかったが自分で調べて自分なりに理解した。今では会計用語としても使われるエビデンスという言葉もここで初めて目にした。そして、このサイトではMMRワクチン騒動、セクレチン騒動、水銀原因説、キレート療法、軽度三角頭蓋手術などに関する医学的な論争も掲載されていたのである。同時に児童精神科医であるAFCPさんのブログhttp://homepage3.nifty.com/afcp/B408387254/index.htmlも参考としていた。
自閉症の知識の収集は、若い頃になんとなく甘いあこがれを持っていた精神分析と決別するきっかけになった。精神分析が自閉症の原因をたいした根拠もなく親の養育態度だと決めつけてきた歴史を学んだからである。それによって親は長い間苦しめられてきたからだ。この歴史は自分にとって客観的な根拠の重要性を強く認識させたものだった。
ファイナンスへの関心
うつ病になってからしばらくの間は、人より遅れた分を早く取り戻そうともがいたものの、再発して慢性化したり、勤め先からプライドが粉々になるような屈辱的な扱いをされるなどした末に、私は会社への忠誠心と仕事への情熱を失い出世も諦めた。一方で重い障害を持つ息子にとっておそらく経済的な自立は難しい。これでは将来お金に困るぞと不安になって始めたのが資産運用である。とはいえなかなかうまく行かなかった。市場のカモにされたり、証券会社のカモにされて損をしたことも少なくなかった。紆余曲折を経て分散投資でリスクを低減しコントロールを試みるアセットアロケーションとコストをかけずに市場平均を着実に狙うパッシブ運用という現在のスタイルにたどり着いたのだが、それまでの過程でファイナンス理論を理解するために嫌いな数学を勉強しなおしたり、統計学の初歩を勉強したりしたことは有意義だった。また、投資詐欺を糾弾するサイトを覗いたり、評論家の山崎元氏による金融商品や金融機関への批判を読んで、これらに対して懐疑的に考えるクセがついた。最近では行動経済学の本を読むことも多く、このことは人が何の気なしに陥りやすい非合理的なクセに気づかせてくれる。
TBS報道特集によるキレート療法騒動
こうした中、2004年3月にTBSが報道特集という番組で自閉症に対するキレート療法を好意的に報道するという「事件」が起こった。私は上述のとおりインターネット上の情報から、専門家の間では懐疑的・否定的に受け止められていることを知っていたが、他の親たちの間では動揺が広がっていた。
特に日本自閉症協会の掲示板では騒動になった。
http://www.autism.or.jp/cgi-bin/wforum/wforum.cgi?mode=allread&pastlog=0004&no=2317&page=30&act=past#2317
http://www.autism.or.jp/cgi-bin/wforum/wforum.cgi?mode=allread&pastlog=0004&no=2360&page=30&act=past#2360
http://www.autism.or.jp/cgi-bin/wforum/wforum.cgi?mode=allread&pastlog=0004&no=2366&page=30&act=past#2366
http://www.autism.or.jp/cgi-bin/wforum/wforum.cgi?mode=allread&pastlog=0004&no=2386&page=15&act=past#2386
http://www.autism.or.jp/cgi-bin/wforum/wforum.cgi?mode=allread&pastlog=0004&no=2407&page=15&act=past#2407
http://www.autism.or.jp/cgi-bin/wforum/wforum.cgi?mode=allread&pastlog=0004&no=2417&page=15&act=past#2417
私も懐疑的な意見を述べたりもした。「けんにゃん」というのが当時の私のHN。今見ると若気の至りという感じでかなり恥ずかしい。この番組をきっかけにキレート療法や反ワクチン、オーソモレキュラーなどの代替療法にはまり込んでしまったという親もいるようである。親のみならず、何も分からず損失を被った子どもたちがいることを考えるとたいへん罪深い番組であったと思う。
そらパパさんのブログからkikulogへ
こうして自閉症に関する代替療法に懐疑的な見方が強めていた折に、そらパパさんへのブログhttp://soramame-shiki.seesaa.net/へたどりついた。ここで根拠のない代替療法への批判精神をよりいっそう高めた。菊地誠氏のニセ科学批判の活動を知ったのもこのブログで紹介されていたのがきっかけだったと思う。kikuloghttp://www.cp.cmc.osaka-u.ac.jp/~kikuchi/weblog/では強い刺激を受け、以来、ニセ科学批判クラスタのストーキング(笑)を始めて現在に至る。ニセ科学批判だけでなく自然科学全般に興味が湧いてきた。読む本もそういう系統のものが多い。
自分がはてなダイアリーを始めたきっかけはもう忘れてしまったが、ブログ開設に当たって、はてなを選択したのは、「NATROMの日記」のNATROMさんや「食品安全情報ブログ」のuneyamaさんを始め、自分が尊敬するブロガーにはてなユーザーが多くて勝手に馴染みを感じていたというのが理由の一つだ。はてブを本当に理解したのは実はブログ開設後で、自分のエントリに妙な赤い数字が表示されているのが気になってからだ。はてブを通じて尊敬に値する人たちに出会えたことはとても感謝している。
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- 7 http://htn.to/mnpDiU
