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2011-11-02

[]国税庁が土地の相続税評価額の調整率を公表

国税庁が昨日、土地の相続税路線価等による評価額に対して行う震災に伴う調整率を公表しました。相続税路線価等は土地に対する相続税や贈与税の課税標準額を算定する際に用いる1月1日時点の変数(1m2当たりの価格)であり、国土交通省によってやはり1月1日時点のピンポイントの地価が3月下旬に公表される地価公示価格*1に対して8割の水準にするものとされています。

相続税路線価等は7月1日に公表されていましたが、3月11日の東日本大震災が起こり、地価への影響が小さくないと考えられるにもかかわらず織り込まれていないのは問題ありとされ、特別に調整率を算定して11月1日に公表するとしていたものです。

ということで地域ごと、現況地目ごとに1月1日時点の相続税評価額に対する掛け目(1-減価率)が公表されました。

■財産評価基準書−「調整率表」<一般の土地等用>都道府県選択

これに対して報道もされています。たとえばこれ(↓)

■路線価、宮城で最大8割減 「調整率」原発周辺は「0」扱い - MSN産経ニュース

 国税庁は1日、相続税や贈与税の算定基準となる平成23年分の路線価(今年1月1日時点)に、東日本大震災による被災地の地価変動を加味した「調整率」を公表した。宮城県女川町の一部で0・2と路線価が8割引き下げられたほか、津波被害を受けた太平洋沿岸地域は軒並み7割超の減少。福島第1原発周辺の12市町村で、警戒区域や計画的避難区域などに指定された地域は相続・贈与税の申告にあたり「ゼロと申告して構わない」とした。

 下落幅が大きいと税負担が軽くなるケースがある一方、地価相場や不動産取引に影響する可能性がある。

 路線価に調整率が適用されるのは阪神大震災(平成7年)に続いて2回目。青森、岩手、宮城、福島、茨城、栃木、千葉の7県全域と、埼玉県、新潟県、長野県の一部約6万5千平方キロ(全国の17・1%)が対象。同庁が財団法人「日本不動産研究所」に調査を委託し、6月から約2カ月、約900地点で行われた調査をもとに設定された。

 調整率が最も低かったのは宮城県女川町の一部宅地で0・2。同県東松島市、南三陸町、山元町が0・25、仙台市若林区や岩手県大槌町、福島県いわき市など3県23市町村の一部が0・3となった。

 液状化の被害を受けた千葉県浦安市は「ブランドイメージの低下」(同庁)などを理由に、一部地域で0・6と4割減少した。

 一方、福島第1原発周辺で警戒区域、計画的避難区域、緊急時避難準備区域(解除)に指定された大熊町、双葉町など福島県内の12市町村の一部については「調整率を定めるのが困難」として実質的なゼロ評価とした。同庁は「原発事故による放射線量を考慮するのは先例がなく、あくまで相続、贈与税申告の目安として最大限低くした」と説明しており、地価と直接結びつくものではないとしている。

 「今さら調整率と言われても…。それよりも早く再建策を示してほしい」

 福島県浪江町の不動産会社「双葉不動産」の岩野丈美管理部長はそう話す。約2千物件の大半は、立ち入りが禁止された同町や双葉町などの警戒区域内にある。本社機能移転を余儀なくされ、収入はほぼゼロになった。「価格がつかないのは分かるが、この先どうなるのか」

 一方、福島県内でも立ち入り制限区域外では不動産取引が活発な地域もある。南相馬市の不動産業者「クリーク」の小川優彦社長は「賃貸物件は枯渇状態。土地の取引に関する問い合わせも増えた」と明かす。避難生活の長期化で高齢者らを中心に、少しでも実家の近くに戻りたいとする心理が働いたことが要因という。

 液状化被害が出た千葉県浦安市の不動産会社「明和地所」によると、中古マンションの取引量は5月ごろには前年の9割まで回復。価格もほぼ震災前に戻った。同社新浦安本店情報部の南沢悦郎さんは「数字が独り歩きし、取引に悪影響を与えないか…」と話した。


評価額を下げても下げなくてもいずれ不満や批判は出るのですが、やはり報道では不満の面を書くというのがスタンスです。仮に調整をしなかったり不十分だったりしたら報道は相続や贈与を受けた人の重税感を書き立てるのでしょう。つまりいずれにせよ不満がでる一方でどちらに重み付けるのかということになりますが、相続税評価額は課税を目的とした評価額なので、納税者の公平感により重みを付けることになろうかと。

ただいずれにせよ調整率がどの程度市場価格を反映したものなのかというのは難しいと思います。被災地の中には不動産取引市場自体がなくなってしまっているエリアもあるでしょう。取引自体が少ないので市場の観測ができないのです。たまに一つ二つの取引が観測できたとして、その取引金額が市場価値を公正に表したものであるという保障もありません。調整率を算出した日本不動産研究所は、阪神大震災の時の例などを参考にしたようですが、原発の例はまだ本当に不確実性が高く、むしろ政策的にゼロという形に決着したようです。

産経の記事では浦安の明和地所の中古マンションの取引量が9割まで回復しているというコメントが出ています。ポジショントークが含まれているかもしれませんが、実際にはどうなのでしょう。浦安の調整率を見ると液状化の被害が大きかった埋立地(昨今のマンションブームで人気のあった地域などです)で3割から4割の減価、その他の地域で1割の減価となっています。

浦安は震災の当初、被災状況があまり報道されなかった面がありましたが、浦安では被災して困難な状況にあることを報道してもらいたいという意見がある一方で、被災したことが広く知られると地価が下がってしまうのではないかという懸念もあり、ジレンマに陥っていた感じがします。

いずれにせよ、今回の調整率は税負担の公平性の観点から暫定的かつ強引にはじき出したものであり、今後市場が価格を決めていくことでしょう。

*1:国の言い分としてはこの地価公示価格が最もフェアバリューに近いものという位置づけになります。