2008-06-04-水 今日の「クローズアップ現代」 
午後7時30分から約30分間渡って放送された、NHK総合「クローズアップ現代」。特集が「ランキング依存が止まらない〜出版不況の裏側〜」だったので見ることにした。出演は、国谷裕子キャスターとフリー編集者の仲俣暁生氏。
見逃してしまった方のために番組内容を振り返ると、まず去年の出版社の倒産件数が、この10年でもっとも多い66社あり、今年に入っても草思社の経営破綻が起き、出版不況の深刻さを強調。草思社については、工夫して書名をつけることが他社に真似されるようになったこと、書籍の刊行点数がこの10年で20%増えて、1日220点発売されることなどによって、時間を掛けて本を販売するスタイルが通用しなくなったことが原因として挙げられていた。
また書店でも、店員の目利きによる選書から、POSシステムによる端末を使って、取次の調査による売れ行き順位5000位以内の書籍を店頭に置くようになり、入荷した本を平台、棚差し、抜き取り(返品)と端末の指示によって陳列しているので時間を掛けて売っていくことがなくなっている現状が映し出される。背景に、読者の本の選び方がに変化して、売上ランキングを頼って買う読者が増えていることがある、と。店頭などのインタビューでは、読んでいる人が多いことは面白い、自分で選ぶよりも安心、といった意見があった。ただし売上ランキングは、店によって順位は異なること、本の帯などに書いてある「何百万部突破」は刷り部数である点に触れていた。
出版ニュース社の清田代表は、「ランキングで売れているからそれでいいというわけではない。出版の世界は奥が深いし、多様なものがあって、いろんな面白い本がある。むしろ、売れない本、売りにくい本こそ、いい本があって、埋もれてしまっている状況だ」。
スタジオに移り、国谷キャスターと仲俣氏の話になる。長期間に渡って本が陳列されない書店の店頭では、本を買うための唯一の手掛かりがランキングになっていること。POSによる5000位以外の本を返品してしまうことは、読者の本の出会いや販売チャンスを逃しているところがあるのではないか、と仲俣氏が指摘する。
次に国谷キャスターから出版業界がどうなっているかの説明をグラフを使って説明。1996年ピークに売上が下がり、2007年は2兆1983億円。一方、中小の書店の数は、1990年代はじめに比べて半減している。仲俣氏から、実際は、街中の小さな書店が減って、大型書店が増えたが、こういう大型店はPOSに頼っている。また出版点数は反比例して増え続けているのでは、短期間でしか店頭に本が置かれないために点数を増やしていること、出版社と取次間の取引の特殊性(「内払い」と「委託精算」)に触れ、この2点を原因として指摘。国谷キャスターから「ビジネスモデルが悪循環に繋がっているのではないか」という発言もあった。
書店が売りたい本を売る動きとして、「本屋大賞」のことへ。売上が伸びるのは大賞受賞作だけで、2位以下のノミネート作品の売上がそれほど伸びず、脱ランキングではじまった「本屋大賞」が新たなランキングとなった皮肉な結果となっていることを報告。
ランキング重視が変わらないのなら、逆にランキングを利用して読者を発掘するために、4月からはじまった、オリコンの書籍ランキング(http://www.oricon.co.jp/rank/ob/w/)も紹介。ランキングを作成するにあたり、独自に読者調査をおこなったところ、ランキングを求める読者は、年に1〜3冊くらいしか買わない層であることがわかったという。こういう読者を対象にするため、専門書店だけでなく、DVDレンタルする複合店やネット書店など1500カ所の売れ行きを幅広く集めてランキングを作成。その結果、従来のランキングと一味違って、車の専門書や美容関係の実用書など、専門書店では上位にこないようなものがランキングしている。今後は、ジャンルを20以上に細分化して発表する予定だという。
再びスタジオへ。仲俣氏は、ランキングを入口にしてほかの本を手に取るような環境を作っていく必要が書店や出版業界全体に求められていること、現在の出版業界は明らかに限界にきていて、何らかの具体的な取り組みをすると時期に来ていると発言。それを受けて、国谷キャスターが、「出版業界のビジネスモデルは、もしかして転換期を迎えのかもしれない」という言葉が結びとなった。
個人的な感想としては、番組を見る前は、いくらなんでもランキング依存と出版不況を結び付けるのは、ちょっと無理があるのではないかと思っていた。売れ行きランキングは、ここ数年出てきたものではなくて、出版不況といわれる前からあったもの。たしかに点数の増加に店頭が追いつかず、新刊情報が適切に欲しい読者に届いていないことは間違いない。しかしだからといって、出版不況と絡めるのはちょっと短縮すぎるだろう。
番組でも出てきたが、ランキングを見て購入する層は、本を年に数冊購入する程度の読者なのだから、むしろ本との接点のひとつになっているくらい。こういう読者を大切にして、売上に結びつけていくために取り組む必要があるというのはまったくその通り。
むしろ新刊書店で問題なのは、大手取次が推進したPOSシステムに依存し過ぎるところ。どうしてこういうことが起こったかというと、結局は書店のマージンが低くて、人件費をかけられないところまで行き着くのではないだろうか。
番組の後半に、仲俣氏が流通や取引慣習など出版業界の問題点を話していたのが救われた感じがした。出版不況の本質的な問題は、かいつまんでいうと、多メディア化に伴って相対的な地盤沈下が起きているのに対応できず、委託配本と再販売価格維持制度(定価販売)が流通と絡みあって起きていることだと思う。

おっしゃるように日本人のランキング好きは今にはじまったことではないですし、出版不況と結びつけると、かえって本質を見失ってしまいかねないものを感じました。テレビ番組なので表面の現象をなぞるのはある程度しょうがないところはありますが、たとえば出版点数の増加を取り上げるのであれば、返品ができる委託制に結びつけ、書店を取り巻く環境のことであれば、ネット書店の台頭やブックオフなど新古書店についても触れるべきでしょう。NHKの番組なので影響力があるからこそ、こういうところを取り上げ欲しかったと思いました。
(2)ネット書店の台頭やブックオフなど新古書店
この二点が最も大事でしょうねぇ。特に二点の問題を巧みに利点として、変換し、
(3)大取次・大出版社の出版流通システムとは独自にシステムを作り、更新してゆく
amazonを取り上げないと「クローズアップ現代」になんないと思いました。
ちょうど今日のエントリで、この辺りのことを書こうと思っていますが、おっしゃる通りのことが、出版不況の背景にあると思います。きっとNHKだったらamazonの取材できたと思うのですが、踏み込んで欲しかったですね。
でも、某大取次の系列の本屋には置かれていない。全国紙の書評欄に取り上げられもしたのに。有名なナショナルチェーンにはあるのです。そこでは直で東京のキー店が仕入れて系列の全国津々浦々の店舗に流す。
だから、某大取次と委託関係があるにもかかわらず、委託で入荷しないでも、
そんな大書店にはその話題書は自己責任注文して、どんと平積みされるわけです。
僕のいる街の中堅どころの本屋さんの取次はそんな大取次でしたが、とうとう棚に並べなかったです。
二、三回、その本屋に問い合わせたのです。その度に答えは客注しますか?です。僕の答えはノーです。
何故、話題になっている本なのに店の自己責任注文で取り寄せないのか、ということです。
直販でも、委託送品しなくとも注文なら取り寄せることが出来るわけです。
そんな迂回なら、amazonなりbk1で取り寄せた方が簡単です。
1500円以上なら送料はかからないでしょう。ちなみにその話題書のamazonでの実売数は想像以上に多かったですねぇ、
(勿論、聞くところによるとですw。)
amazonならユースド商品として買えるしねぇ。そして、むしろamazonは5000位以下の商品に光を当てたわけです。
恐竜の尻尾というわけです。その尻尾が利益を生んだのです。
もう低金利時代にあって、金融機関装置としての大取次(ということは大出版社と一体ですが)
もかってのように作動しない。
大取次・大出版社は早く委託・再版維持制度の守られた護送船団方式から脱却して欲しいです。
amazonのは実態として委託・再販維持制度を脱色して、適法、的確なビジネスモデルのもとに稼働していると思うのです。
大取次のデータでしょう。上に書いていた話題書は常にamazonデータでは1000位以内にランキングしていました。
でも、通常の街の本屋にはなかったのです。そういう穴ボコが取次依存の本屋さんにはあると思います。
そんな依存ルートから脱却すれば、街の本屋さんも再生できると思う。少なくともそのあたりにヒントがあると思う。
一消費者として強くそう感じるだけに、出版不況を論じた記事や番組に
ほとんどこの論点が出てこないのを常々不思議に思っております。
起こしているように感じました。オープンの場なのでぼかして書きますが、一言で
いうなら、下手な鉄砲数うちゃ当たる方式です。そこによりよい製品作りをしようという
精神は感じられませんでした。構造的な問題は他の方が述べられているとおりなので、
その通りだと思います。
ちなみに、ランキングの弊害は書籍だけではなく他の製品でもありますよ。
お話は、20年以上前から出ている「責任販売制」に繋がると思っていますが、中小の書店は、点数が増えているので余計に個々の仕入れに対応できなくなっているのだと思います。また大取次は、大部数を一気に販売するのに向いていますが、個別の対応には弱いじゃないでしょうか。その間隙がamazonの利用者の増加になっていると。いずれにしても、このままでの流通を維持することは困難だと思います。
motoskiさん、はじめまして。コメントありがとうございます。
おっしゃるような単行本が高くなっているのは、出版社の売上低下によって、1点あたりの部数が少なくなっているので定価を高めに設定するので、余計に売れなくなるの悪循環に陥っている感じです。これからは、原油高の影響で、一斉に製紙会社が値上げしましたので、さらに高くなると予想されます。たしかに出版不況の番組なので取り上げてもいい話題ですね。
yosakoiさん、はじめまして。いつも読んでくださっているそうでありがとうございます。
ここまで反響があるとは思っていなかったので戸惑っているところもあるのですが、引き続き読んでください。
syotaro_yoshidaさん、はじめまして。コメントありがとうございます。
「下手な鉄砲数うちゃ当たる方式です」というのは、余裕のなくなった出版社にとっては思い当たる節があるのではないでしょうか。ベストセラーの類似の企画も多いですしね。よりよい製品よりも点数をこなす方に編集者や出版社の目がいってしまっているのかも知れません。一方では、回りの変化に対応できていないようにも見受けられてしまうのですが。
あたりまえのように誰もが「出版不況」と見ていますが、今の業界の低迷は、「不況」といった表現の性質のものではないと思ってます。
今ある現実は、「好況」「不況」といった景気循環のようなものではなく、
出版業界に限らず1995年頃をピークにして、明らかに市場縮小化時代の構造に転換した結果だと思うのです。
まだ業界で改善しなければならないことや、打つべき手だてはたくさんあるとは思いますが、
構造そのものは、「不況」といった性質のものではないのではないでしょうか。
POSデータによるランク依存の問題も、実態はPOSが悪いのではなく、
データのベスト10にばかり偏重していることが問題なので、
2、300坪以上の大型店でも、POSデータ100位から500位レベルの良書をきちんとマークして仕入れが出来ていない店が多いのが実態に見えます。
鈴木敏文が昔から強調しているようにPOSデータをきちんと読めば、店はもっと個性化する。
市場縮小の時代に入って、みかけの売り上げ維持のために、売り場面積の拡大と新刊刊行点数の増で、
経営数字をごまかしている現実のほうに危機感を覚えます。
業種を問わず、今の現実を「不況」といった表現で見ている人たちは、いったい何を待っているのだろうかと思ってしまう。
おっしゃる通り、ここ10年ほどの出版業界は、景気循環型の不況ではなく、構造的な市場縮小サイクルに入っていると思います。
出版不況という言葉は、ここ数年マスコミ取り上げる際の一種の常套句で、いつの間にか定着してしまったと感じを持つのですが、必ずしも現状を表していないのではないかと思います。
POSについては、かみつけ岩坊さまのコメントを読んでおりますと、やっぱり最終的には、現場の人の運用次第だな、という感想を持ちました。
今後、出版業界は、構造変化に合わせて、身の丈にあったものに転換していかなければいけないのではないかと推察しています。