凍える島 (創元推理文庫)

凍える島 (創元推理文庫)

無人島とはこれまた古風な―とは言い条、お得意ぐるみ慰安旅行としゃれこんだ喫茶店"北斎屋"の一行は、瀬戸内海の真ん中に浮かぶS島へ。数年前には新興宗教の聖地だったという島で、八人の男女が一週間を共にする、しかも波瀾含みのメンバー構成。古式に倣って真夏の弧島に悲劇が幕を開け、ひとり減り、ふたり減り…。由緒正しい主題をモダンに演出する物語はどこへ行く。


妙に尾を引く作品。ミステリとしては、そうなるか?と疑問符が出る箇所もなくはなかったんですが、後から思い返したときにあれは心地のよい作品だったな、という思いが頭に残る。文章とそこから醸し出される雰囲気が好きなんですね。全体に淡い青のフィルタを通して見ている感じ。そこに淡白と紙一重な会話、静かな殺人、人の心の奥底が静かに描かれている。そこが好きなのかも。
茶店の慰安旅行で無人島に行って、そこで見えない愛憎が殺人を呼び起こすという孤島パターン。たぶん男性作家が書いたらこんな静かな物語にならなかったんじゃないか、と。ただ順番に殺人が起きて、探偵役が解決とお決まりパターンでしょう。いやはや推理小説は女性が書いたほうが面白いのでは!?と思ってしまう。こういう作品に出会うと男性作家の作品が読みにくくなる…。

凍える島こごえるしま   読了日:2001年04月20日