Microsoftの大転換

 今週開幕したMicrosoftのProfessional Developers Conference(PDC)でのCNETによるビル・ゲイツ氏のインタビューへの回答が大変興味深かった。

ビル・ゲイツ、グーグルを語る - CNET Japan

 「サーバ・イコール・サービス(server-equals-service)」というアーキテクチャに注目しています。このアーキテクチャを導入すれば、「Exchange Server」のすべての機能をオンラインサービスとして提供できるようになります。もちろん、従来のライセンス契約を通して、Exchange Serverを購入することも可能です。どちらの方法でも、ユーザーはExchangeの機能を同じように利用することができます。

 サービスをオープン化という、ライセンスのビジネス形態の変更は、かなり注目すべき事だと思います。なぜなら、これまで、Microsoftは、サービスに重心をおいておらず、あくまでもプロダクト(クライアント&サーバの使用形態に応じたライセンス制)に重心を置いており、今回のサーバ・イコール・サービスは、大いなる方針転換だと思います。

 「サーバ・イコール・サービス」は、サーバソフトウェアをそれに対応するオンラインサービスと統合することによって実現されます。

 サーバが提供している各種の機能とオンラインサービスを統合し、ASP的なサービスを提供するということのようです。これまで、お試し的に「MSN Messenger」のような無料ツールを提供して、様子見をしていたのですが、

 サービスとしてのソフトウェアは確実に進化してきました。しかし、ソフトウェアをサービスとして提供するためには、その前提条件として、インターネット、安価な接続サービス、そしてXMLが必要でした。大規模なサーバファームを構築し、規模の経済を働かせることが可能となったことで、ようやく実現の見通しが立ったのです。

 と、タイミング的に今が、戦略変更の時期だと判断したのでしょう。同じ土俵には、サービス提供企業であるGoogleが乗っかっていますが、Microsoft社としての優位点をPRして、Googleを抜き去るつもりなのでしょう。

 Googleのスローガンは「世界中の情報を体系化する」ことです。Microsoftのスローガンは「世界中の情報を体系化するためのツールをユーザーに提供する」ことです。これはGoogleのアプローチとは少し違います。当社が目指しているのは、あらゆる機能をプラットフォームとして提供することであり、われわれ自身が情報を体系化することではありません。

 以前のエントリでもWeb OSという言い方に抵抗を感じているとちらっと書いたのですが、ゲイツ氏の言葉で、なぜ私がWeb OSという言葉に抵抗を感じていたのか、更に考えた結果、以下の3点があるからではないかと思いました。

(1) Googleの提供しているものは、製品ではなくて、サービスである
(2) Googleの提供しているAPIは、検索という基本機能であって、統合した機能群ではない
(3) Googleの提供しているものは、ソフトウェア的にもプロトコル的にもアプリケーションの範疇に属する

 大企業のMicrosoft社が、このような方針転換をすることのオーバーヘッドはかなり大きいに違いないと想像しているが、これが可能なのも、ひとえにビル・ゲイツ氏の優れたリーダシップとカリスマ性によるところが大きいのではないかと思いました。