別無工夫

2009-03-22

[]国立能楽堂 第二回 桂諷會 〜道成寺 00:58

能「田村」観世銕之丞

狂言「樋の酒」野村萬

能「道成寺」長山桂三

(番組は末尾に掲載)

http://www.ntj.jac.go.jp/performance/2539.html

http://www.keizou.net/liveinfo_04.php


長山桂三師の道成寺お披き。初めて個人の会に行ってみたけど、非常に面白かった。これはハマりそう。だけど、長くもあった。13:00始まりで18:00終了。昔の人は本当に五番立てとか観てたのかしらん。もし「お能があと三番残ってます」といわれたら、私は黙って卒倒します。


仕舞 老松

長山圭三師のご長男、凛三くんの初舞台。ほんのワンフレーズ謡って、能舞台を三角に一周したぐらいだったけど、カワイイ!こんな物心付かない内から初舞台を踏むんだ。大変だなー。


能 田村 替装束

この前、清水寺に行ったばかりなので、興味津々。色々興味深い点があった。

一つには、名所教えのところ。歌の中山清閑寺、今熊野、鷲尾寺、音羽山、地主桜と説明していくのだが、一々、シテの童子とワキの旅僧が清水の舞台から見た実際の方向と同じ方向を向くのが面白かった。ところが地主桜のときは、歌の中山と同じ方向、つまり、清水の舞台の真ん前、地主権現とは反対側を向くのだ。確かに、清水の舞台の手前左側の山(音羽山)の側面には、桜が一面に植えてあるのだけど、そこの桜も地主桜だったのだろうか。そうだとすると、ちょうどその辺りは牛車も通れる緩やかな坂道の参道になっているので、嵯峨天皇が何度も車を返して桜を眺めたというのも納得が行く。


もう一つは、歌舞伎の義経千本桜の渡海屋の段に出てくる知盛が舞った田村との違いについて。

渡海屋の段で、義経を討ちに行く知盛は出立を祝って田村を舞うのだが(その頃、能楽はまだ成立していなかったという話は置いておき…)、その田村と今回の田村は装束が全然違ったのだ。

知盛は、白い狩衣(または袷法被)、白の厚板、白の半切で太刀を持っている。ところが、今日の田村の後シテは、派手な装束だったし(複合的な文様および色だったので記憶の断片をを再構築できない…)、太刀ではなく唐団扇を持っていた。何でだろうと思い、家に帰ってから新年にNHKがやっていた喜多流の友枝昭世師の「白田村」を見ると、そちらの方が似ていた。他に金剛流金春流も白装束があるらしい。つまり、知盛は少なくとも観世流および宝生流ではなかったということ…?


さらに調べてみると、今回の銕之丞師の舞った田村は替装束という小書付なので、装束や面は、通常の観世流のものとも違ったようだ。例えば、前シテは普通、童子または慈童の面のようだが、今回は喝食だった。また前シテの装束は普通は水衣に紅入厚板だそうだが、今回は、紅の水衣(?)に白い厚板だった(清水寺みたいな色合い!)。また、後シテの面も、通常は平太等を使うらしいが、今回は天神のように見えた。パンフレットによれば、替装束の小書が付くと後シテが神体であるということを強調した装束に変わるとか。


仕舞 弱法師 野村四郎

お能の「弱法師」は、盲目の弱法師が、その澄んだ心で日想観をする様子が見どころになっているようだ。文楽や歌舞伎の摂州合邦辻の俊徳丸の話は、その場面には大して重きは置かれていない。むしろ、玉手御前と合邦の親子の情、浅香姫の俊徳丸への愛が主題となっている。芸能の特質によって(またはその客層によって)、テーマが変わっているのだ。


興味深かったのは、野村四郎師が目を瞑って舞っていたことだ。文楽の住大夫が若い頃、俊徳丸を同じように目を瞑って語ったら、師匠から「太夫がお客を見ないで語っていてはいけない」という指摘をされたというエピソードがあったと思う。お能の方はそもそも面をつけたらほとんど視界がないというし、ストイックな芸能なので、観客の反応を気にすること自体、なさそう。お能と文楽の違いを示す例だなあと思った。


能 道成寺

素晴らしかった。


鐘後見がおもしろかった。シテ方の鐘後見がいるのは漠然と知っていたけど、狂言方も鐘後見がいるのだ。鐘の持ち運びは主に狂言方の鐘後見のお役目。それから、鐘を釣ることも。休憩時間にでも吊すのかと思ってた。能楽堂の天井に据え付けられている滑車に差金で縄を通すところや、縄を外すところなど、その所作は、芸と言ってもいいくらいキレイ。


シテの乱拍子は不思議。惹き込まれてしまった。歌舞伎の乱拍子とは違う!その後の早舞もすごかったし、烏帽子を扇で叩き落とすところもスパーンとスマッシュのように決まっていた。鐘も「下ろす」ていうよりは本当に「落とす」という感じでびっくり。私にとっては何もかも目新しくて、かつ、楽しめた。

装束は、紅入で金箔の紗綾形の地に桜と夕顔の唐織に丸紋尽の縫箔だったのかなあ。面は前シテは、増のような若い女性のものだった。ワキの住持は紫の水衣。位の高い僧侶なのだ。それから、囃子方が長裃を着ているのを初めて見た。


《番組》

仕舞 嵐山             長山耕三

   三山  鵜澤 光、鵜澤 久

舞囃子 高砂 八段之舞      長山禮三郎

仕舞 老松             長山凛三

能 田村 替装束

       シテ 童子/田村麻呂  観世銕之丞

            ワキ 旅僧 宝生閑

        アイ 清水寺門ノ者  野村万禄

狂言 樋の酒 シテ 太郎冠者  野村萬

         アド 主人    野村太一郎

         アド 次郎冠者  野村扇丞

一調 笠之段            梅若玄祥、亀井忠雄

仕舞 弱法師            野村四郎

    松風            観世喜之

    野守            大槻文蔵

能 道成寺 シテ 白拍子/蛇体  長山圭三

        ワキ 道成寺住持  宝生欣哉

        アイ 能力     野村万蔵、吉住講

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