BI@K accelerated: hatena annex, bewaad.com このページをアンテナに追加 RSSフィード

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2008-09-13

sivadさんのご質問にお答えします。

現役官僚bewaadさんに言及いただきましたし、せっかくなんでご意見伺いますね。

ブコメでもfinaiさんが「需要が高まれば原油等と同じく価格は上昇します」と書いてくださったように、リフレ・上げ潮の理路では最終的に、労働需要の増加をもとに購買力が上昇することを企図しているようです。

finaiさんがおっしゃるように、そこに「モデル的な市場メカニズムが働けば」、労働需要が増すと雇用給与が増大し、購買力・消費が上向くはずです。

でもそれはあくまで市場モデルが適切に機能すれば、の話ですよね。

市場モデルが正常に機能するには、機会の均等が大前提です。つまり、市場参加者の間で極端な力や立場の差があってはならない。

サービス残業を強いたり、あるいは劣悪な条件で雇用するといったことが可能な力の差がある場合、市場は機能しませんし、たとえ労働需要が増しても購買力は増加しないんじゃないでしょうか?

その状態でインフレが起こればそれこそ大惨事です。人はますますモノを買わなくなりますし、生活は悪化します。

実はそれが今起ころうとしていることだったりしませんか?

だとすれば上げ潮・リフレ派が真っ先にやるべきことは、労働市場における力のバランスを取ることだったりしません?

リフレの方向性には基本賛成なんですが、私はこの点がず〜っと気になっているんですよね。

bewaadさん、もしよければご教授いただけませんでしょうか。

「上げ潮とかバラマキとかリフレとかについてざっくりまとめてみるメモ」(@赤の女王とお茶を9/6付)(webmaster注:原文の注記及びリンクは略しました)

webmasterがリフレ政策支持者を代表する資格があるかどうかを措けば、一般論として、市場の失敗の是正に反対するような人はいないと思います。ある事象が市場の失敗によるものかどうか、市場の失敗があるとして適切な是正策が何であるかといった点において議論は分かれるでしょうけれども、市場の失敗が観測され、それに対する適切な処方箋が示された場合に、それに反対することは想定しづらいです。

ただし、「真っ先にやるべきこと」かどうかについては、少なくともwebmasterには異論があります。というのも、優先順位をそれが窮境にある労働者の待遇改善にとってどれだけ有効かによって定めるならば、市場の失敗よりも、労働市場の需要喚起の優先順位が高くなると考えているからです。

過去を振り返ってみます。高度経済成長期には、地方の中卒者が「金の卵」としてもてはやされ、都市部の企業は人手不足解消のためにこぞって中卒労働者を求めました。バブル期には、新卒大卒)の採用に当たってお水や旅行接待がありました。これらは今と違って市場の失敗がなかった(あるいはより軽度だった)からなのかといえば、もちろんその可能性がゼロではないものの、やはり労働市場の需給がタイトだったからこそでしょう。

では現在はどうでしょう。JIPデータベース2008での5年刻みの推計によれば、1991〜2005年の15年間は一貫してマンアワー投入が減少しています。ユニットレイバーコスト(=名目雇用者報酬/実質GDP)を見ると、今年に入って横ばいには転じましたが、それ以前は2002年第1四半期のみを例外として、1998年第3四半期以降ずっと前年同期比マイナスで推移しました。つまり、現状は供給超過、わかりやすく言い換えれば買い手市場なのです。

この現状を放置しておいて市場の失敗を是正しようとしても、なかなかうまくいかないのではないか、とwebmasterは思います。たとえば偽装請負問題について、派遣規制がそれなりのものであったからこそ請負という抜け穴を使われたわけで、派遣分野についての是正措置は十分には効を奏しませんでした。では請負の穴をふさげばよいのかといえば、もちろんふさがないよりはふさいだ方がいいですが、すべての穴をふさげるわけでもなし、すべての穴をふさごうとすればするほど、一般的には行政の力を強くしすぎたり、適切でない手法による規制が混じってしまったりする可能性が指数関数的に高くなっていきます。

是正措置の実効性を挙げるとともにそうした副作用の可能性を許容範囲に抑制するためには、労働市場の需給バランスを改善することこそが「真っ先にやるべきこと」ではないかというのがwebmasterの管見です。一時的な供給超過をも許さないというわけではなく、中長期的な平均値がバランスのとれたものとなればそれでよいでしょう。そのような状況が達成されてこそ、適切なミクロ介入は期待された効果を発揮するはずですから。