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biaslookの日記 このページをアンテナに追加 RSSフィード

2006-11-19

[] 先人たちの語学勉強法(02) 千野栄一

「外国語上達法」千野栄一(岩波新書)より

ある人が「語学の習得というのは、まるでザルで水をしゃくっているようなものです。絶えずしゃくっていないと、水がなくなってしまいます。水がどんどんもれるからといって、しゃくうのを止めるとザルははぜてしまうのです」といっているが、これは真実であろう。語学の習得で決して忘れてはいけない一つの忠告は「忘れることを恐れるな」ということである。

(9ページ)

「先生、語学が上達するのに必要なものはなんでしょうか」

「それは二つ、お金と時間

このラコリア風(laconic)に短い解答に目をパチクリしている私に先生が説明して下さったところによると、語学の上達には、まずお金をかけなければだめであるということであった。先生ご自身もあるロシア夫人に月謝を貢いでロシア語を習得されたそうである。人間はそもそもケチであるので、お金を払うとそれをむだにすまいという気がおこり、その時間がむだにならないようにと予習・復習をするというのである。

(38ページ)

外国語の習得には記憶が重要な役割を演じており、記憶には繰り返しが大切で、そのためには時間が必要なのである。そして、その時間の使い方について一言するならば、ある外国語を習得しようと決心し、具体的に習得に向かってスタートしたときは、まず半年ぐらいはがむしゃらに進む必要がある。これは人工衛星を軌道に乗せるまでロケットの推進力が必要なのと同じで、一度軌道に乗りさえすれば、あとは定期的に限られた時間を割けばいい。

このとき、二四時間をある外国語の訓練に捧げようと思ったら、一日に六時間ずつ四日やるより、二時間ずつ一二日した方がいい。恐らくこれは記憶のメカニズムと関連しているのであろうが、私には説明できない。ただ、いずれの語学上達法の本も毎日少しずつでも定期的に繰り返すことをすすめているのは事実である。

神様が公平だと思うもう一つのことは、短期間に急激に習得した語学は短期間に急激に忘れるが、長い時間かけて習得した語学は忘れるのに長い時間がかかるという事実である。

(40ページ)

「覚えなければならないのは、たっとの二つ。語彙と文法

(略)

そして、S先生はいとも簡単にこの二つという指摘をなされているが、この語彙(一つの言語にある単語の総和)と文法、という順番がまた大切な意味を持っている。まずは単語を知らなくてはだめである。

(41-42ページ)

いつの頃からか日本での外国語教育は文法偏重になり、言語にとってこれほど大切な語彙についての学習はなおざりにされている。留学先のプラハの学生寮で筆者はたまたま同室していたチェコ人のK君がドイツ語をものにするプロセスを観察する機会に恵まれたが、絶えずベッドの上であおむけになって単語帳をめくっているばかりで、その他の勉強をしている姿を見たことがない。机に向かって坐り、辞書を引くと言う日本流と比べてとてもだらしのない勉強法だと思ったが、あっという間に上達していって唖然としたものである。

(略)

絶えず辞書を引かなければならない外国語学習がいかに悲惨なものであるかは、多くの人が痛いほど経験しているところである。それだから、単語を覚えるという努力を着実に続けられる人は、ひとたびこの困難を乗り越えたときの楽しみを知っているか、それを想像できる人である。一つの外国語をモノにした人は次の外国語の習得でも成功率が高いことが、その一証拠といえよう。

(48-50ページ)

単語の学習には、この精神力が必要なのである。このことについては、次のラテン語の格言がすべてを物語っている。

Repititio est mater studiorum.(繰り返しは学習の母である

(51ページ)

やみくもに千の単語を覚えることが必要である。この千語はその言語を学ぶための入門許可証のようなものであり、これを手にすれば助走成功で、離陸が無事に済んだとみなしていい。もしこの段階で失敗したときは、あきらめた方がいい。

(略)

ただ、同じ言語を二度目にもう一度アタックするのは最初のときよりつらいことは、知っておく必要がある。一度初めて中断した場合は、それまでに学んだ知識は二度目のときに役立たないのみか、かえって妨害になる。

この千語を覚えるのに、辞書を引いて覚えるのはむだである。(略)必要なことは単語を覚えることで、辞書を引くことではない。そして、その単語の記憶を確実にするのには、それを書くことをおすすめする。この段階では、理屈なしに覚えるだけである。そのエネルギーとしては、どうしてもその言語をモノにしたいという衝動力を使い、そのエネルギーの燃えつきる前に千語を突破することである。従って、この千語習得の時間は短くなければならず、そこで十分に時間のとれるときに新しい言語を学び始めるよう計画をセットする必要がある。

もし千語をモノにできれば、その単語の構成がなんとなく分かるようになり、千五百にするには最初の千語の半分よりはるかに少ないエネルギーで足りるようになる。そして千五百語覚えさえすれば、もう失速することはない。ただし、この千語なり千五百語を覚えるというのは確実に覚えることで、なんとなく霧の中にあるような覚え方は意味がない。確実な五百語は不確実な二千語より、その言語を習得するのに有効である。

(51-53ページ)

小説や詩を楽しみ、会話もでき、その言語で手紙も論文も書けるというようになるには最低四〜五千の語が必要になり、その学習には三〜四年は必要である。(略)

もし、辞書を引き引きその言語で書かれたテキストを読みたいというのであれば、二〜三千語で足りる。ここまで覚えれば、その言語に関しては一応の”上がり”である。

(略)

大体どの言語のテキスト(書かれた資料)でも、テキストの九〇パーセントは三千の語を使用することでできている。(略)

最初の千語で平均六〜七〇パーセントの語が分かるようになり、このあとしだいにゆるい割合で九〇パーセントに近づいていくのが普通である。もっとも言語によってはフランス語の話しことばのように千語で九〇パーセントを超すものもあれば、日本語のように一万語で九〇パーセントに達するような言語もある。

(55-56ページ)

一冊の学習書の中の変化表を全部切り抜いてビッシリ張り直すと、大体10頁内外になる。(略)

J・トマン博士は外国語を学習する際に、1課ごとに進む学習とは別に、この10頁を徹底的に覚えることをすすめている。それも最初の1〜2ヵ月のうちに、である。そして、この突貫工事は何度か繰り返すことが肝要である。(略)

多くの言語で動詞と代名詞がヤマということになる。

(略)

この非生産的なタイプ(不規則変化)の表に属する語は基本語彙で頻度数が高く、従ってこの表も重要なのである。

(83-84ページ)

「ねえ君、いい辞書とか、いい学習書とかいろいろ心配しているけどねえ、二葉亭四迷だって、坪内逍遥だって、森鴎外だって、いい辞書も、いい学習書もなかったのにあんなにできたじゃない。これどういうわけ? やる気よ、やる気。やる気さえあればめじゃない、めじゃない。

(104ページ)



現在イタリア語を勉強しているのですが、市販の初心者向け単語集(1600語)を一気に(毎日50語ずつ)暗記しています。覚え方は「先人たちの語学勉強法(1)木田元」を真似ています。

単語は、どの言語でも五千語くらいは必要だと私は思います。


また、文法に関しては、薄い文法書の変化表と短文を2ヶ月以内に丸暗記した後、練習問題1千問くらいを繰り返すことが必要ではないでしょうか。