『ラノベの教科書』読んだ

ラノベの新人賞は下読みで90〜95%がふるい落とされてるという。この本は、残りの5〜10%に踏みとどまるためのガイドブックだ。

ラノベの教科書 (三才ムック VOL. 574)

ラノベの教科書 (三才ムック VOL. 574)

 語り口は会話式でとてもライト。でも、著者や講師が現役のラノベ関係者だけに、身もフタもないほど実践的。サンプルの企画書やプロットまで載せていて、「ラノベというものは全て美少女ものである」と断言する割り切りようだ。
 ラノベ作家になんとなく憧れてる人がつまづく「何を書けばいいか」もばっちりケア。「どのような」×「どこで」×「何をする」とかけ合わせればジャンルが決められるテンプレまで用意している。ファンタジー×部活もの×不条理ギャグ、おお一本できる!
 この本の目玉は「フラグシップヒロイン」という概念。メインヒロインは、作品の象徴的存在(フラグシップ)でなくちゃいけませんという考えは、今の売れ線ラノベにほぼあてはまる。例えば「俺妹」は隠れオタクの妹が兄貴を引っ張り回す話だし、全ての物語や事件の発端がメインヒロインを巡るもの。「メインヒロインが好きになれば、作品そのものも好きになる」とは限らないが(ハルヒ人気<長門だし)、スッキリ分かりやすくなるには違いない。
 フラグシップヒロインが決まれば、平凡な主人公の日常も変わるし、ボーイ・ミーツ・ガールやバトルやクライマックスも立ち上げられる。この考えは「エンタメはキャラが命」の原則にもぴったり来るし、何より最も重要なステップ=執筆への背中を押すものだ。
 作家志望の人の多くは「設定に縛られる」ことで執筆をあきらめる。キャラを作り、設定に凝りまくるのは楽しい。けど、ゴチャゴチャし過ぎると考えがまとまらなくなり、筆が止まる。でもフラグシップヒロインがいれば、とにかくドラマや事件のネタ出しができるし、あらすじも考えられる。
 だから、さっさとストーリー(あらすじと本文)書け!というのがこの本のキモ。文章作法も「同じ語尾を使わない」「台詞以外で“である” “なのだ”という語尾は使わない」や視点をブレさせないとか必要最小限で、口うるさいお説教はナシ。それは甘やかしとは正反対の、ラノベ書きを徹底的に「プロフェッショナルの仕事」と扱うスタンスから来てる。
 設定を作り込んだり文体に凝ったりしてるうちに時間は過ぎて、どんどんお金もなくなっていく。ここで目指しているのはあくまでも「筆一本で食べていけるラノベ作家」ということ。ラノベ一冊あたりの儲けは平均して75万円、年3冊書いて税金10%引いて…と並べてる数字の生々さといったら。
 この本に関わった人たちは、本気で商売のライバルを育てようとしている。本が売れれば売れるほど稼ぎが減る覚悟に応えてあげるためにも、みんなガンガン買ってあげるといいよ!