「動くな、死ね、蘇れ!」

土曜日。ユーロスペースヴィターリー・カネフスキー特集上映

『動くな、死ね、甦れ!』は、かけねなしの傑作であり
これを見逃すことは生涯の損失につながるだろう
蓮實重彦(映画評論家)

とのことなので見ました(笑)。(映画を見逃して生涯の損失になるのなら、僕の人生は損失どころか大赤字で涙も出ません。。)

しかし確かに凄い映画。前半から、この世のものとは思えない寒々しくて貧しい村の情景に震え、日本兵の捕虜や、思想犯や、狂人たちの悲しさに震え、ああいやだいやだ・・・という感情が沸いてくるのだが、当の本人のワレルカ少年がアホというか能天気というか、とにかく元気がいいので笑ってしまう。しかも困ったら近所の女子ガリーヤに救ってもらうという都合の良さで、なんだかほんわかした感じで終わるのかと思ったら、途中から急展開となる。

物語は淡々としながらも徐々に事態はエスカレートしていく様子がとても生々しくて恐ろしかった。軽い気持ちのいたずらのはずがエラい事態に・・・って自分も子どもの頃に味わった感情のような気がするが、何をやったのかは憶えていない。

あと、『動くな、死ね、甦れ!』というのはもの凄くカッコいいタイトルだと思う。今バンドを組んだらこのバンド名にしたいくらい。

「部屋THE ROOM」

土曜日。シネマヴェーラ洞口依子映画祭園子温監督作品「部屋 THE ROOM」。

園子温監督の幻のカルト・ムービー。初老の殺し屋が死に場所を求めて部屋を探す物語が、ささやくようなセリフと長回しの退廃的なモノクロ映像で描かれる。洞口は、終始無表情で殺し屋を部屋に案内する不動産屋の従業員を演じている。「ジャンキーが見た能舞台」、「国辱映画」などと表される一方、大絶賛の声もあり、カンヌで上映禁止、ベルリンで乱闘など数々の映画祭で物議をかもした。ただの一人よがりか大傑作か、スクリーンで確かめよう!

という前情報で見たので、どんだけ見るのが苦痛かと思ったら、最初の10分くらいの長回しに慣れてしまえば大丈夫。一人よがりどころかしっかりギャグもあるし、ちゃんと観る人を想定している映画だったのでいい意味で裏切られた。部屋探しのコントみたいな感じで、思い出したのは松本人志ヴィジュアルバムの「システムキッチン」。

カメラは動かないけど、中央線の車窓から見える風景は動いているし、中野から新井薬師近辺を移動するところも動きがあった。部屋探し=移動なので、カメラが動かない割には閉塞感は感じなかった。けん玉のシーンとか素晴らしいと思う。

「カリスマ」

土曜日。シネマヴェーラ洞口依子映画祭黒澤清「カリスマ」。

前に見たのはビデオだったから、劇場では初見。はっきり憶えていたのは黒服の男たちによる処刑のシーンだった。それ以外にも印象的なシーンは沢山あるのだけど、あまりにも「意味」と物語がくっきりと分離していて、しかも後半、この映画を言葉で説明しようと試みるシーンがあったりするのでちょっとそれはどうかと思った。いや、十分面白いんですけど。

「木」という余りにも動きや迫力に欠けるモチーフの前で、一幕ものの舞台のように人物が右往左往する。ラストシーンの飛躍がもう30分前から始まって暴走する映画を見てみたいと思った。

カリスマ [DVD]

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