フィルドビアめっきのメカニズム

前回に引き続き、今回はフィルドビアめっきのメカニズムについてのお話です。

フィルドビアめっきは硫酸銅めっきをベースとしています。

一般的なフィルドビアめっきの組成は以下の通りです。

 硫酸銅 200〜250g/L
 硫酸   10〜50g/L
 塩素   30〜60mg/L
 抑制剤 プロセスによる
 促進剤 プロセスによる

まず硫酸銅はめっきの析出皮膜となる銅イオンの供給源となります。
フィルドめっきにおいては一般的に濃度が高いほうがフィリング性が高くなります。
ビアをフィリングさせるために必要な銅イオンの絶対量が多いということも理由のひとつです。

次に硫酸はめっき液中の導電性を高める役割をもっています。
硫酸濃度が高いほど電流の分布が均一となりめっき厚のばらつきは小さくなる傾向があります。

ただし硫酸銅と硫酸は溶解の限界があり、どちらかの濃度を上げるともう一方の濃度が上げられなくなってしまいます。
目安としては硫酸銅と硫酸の合計が300g/L程度が溶解度の限界といわれています。

フィルドビアめっきはフィリング性を確保するために硫酸銅濃度が高く、硫酸濃度が低く設定しているケースが多くなります。

最後に塩素イオンですが、これは抑制剤の作用を補助する役割があります。

さて、ではなぜフィルドめっきはブラインドビアをフィリング(埋める)ことができるのでしょうか?

2つのメカニズムによって成りなっているといわれています。

フィルドめっきには添加剤として「抑制剤」「促進剤」の2種類が必要となります。

抑制剤はめっきの成長を抑制する作用を持ち、促進剤は成長を促進する作用を持ちます。

抑制剤は電流が高いところや、めっき液の攪拌が強いところに吸着しやすいという特性を持っています。
よってビアの外側(表層)に吸着しやすくなります。

一方、促進剤は基板の表面に一様に均一に吸着しています。

その特性を利用したひとつ目のメカニズムは「拡散説」というものです。

抑制剤が表層につきやすいという特性を活かし、ビアの外側のめっき成長を抑制させることで、相対的にビアの内部の成長が早くなるという作用でビアをフィリングさせます。

ふたつ目のメカニズムは「記憶説」というものです。

促進剤はビアの外側にも内側にも均一に吸着しています。促進剤はめっきが成長してもめっき皮膜の中に取り込まれず、表面に残っているといわれています。

その表面に残った促進剤がビア内部のめっきの成長に伴い、徐々に密集していきます。

促進剤が密集することでビア内部のめっき成長が加速しビアをフィリングさせます。

抑制剤にはポリマー、レベラーという種類があり、促進剤はブライトナーというものになります。

これらの添加剤の作用のバランスが、フィルドビアめっき性能を左右するキーポイントになっています。