なんと率直なドラマなんでしょう!女の子の気持ちや心の動きが見事に描写されていますね。こんな素敵な映画を監督したのが、あのオシー・デイビス。元々はオフブロードウェイの舞台ドラマ。とっても複雑な家庭環境の中で育った女の子のそれぞれの物語。私自身、女として、たまにふと「私も母と同じような人生を歩むのだろうか?」という疑問が頭に浮かぶ時がある。そんな女性の不変の疑問であり悩みでもあるテーマを、鋭く描いております。
複雑な家庭環境と書いたのですが、本当に複雑です。この一家はほぼみんな女性。マディアお婆ちゃんにローズお母さんに、女の子が4人。マディアお婆ちゃんは、夫ではなくてボーイフレンドであるハーバートが一緒に住んでいて、家の家賃も半分も出している。そしてローズお母さんの娘4人が居るが、上の2人ノーマとルース・アンはアールとの子供。主人公となるビリー・ジーン(あのマイケルのと一緒)だけ父親が違う。そしてもう1人の子ネッタは実際にローズが産んだ子ではなくて、近所に住む精神病の女性(なんとルビー・ディが演じている!)の娘で、その女性の代わりにローズが育てた子。黒人女性はその歴史から、仲が良いといわれているけれど、この家庭は違う。みんな憎しみ合うというよりも、嫉妬しながら生きている。でも娘達(ローズも含めて)、母からの愛情に飢えているのです。母からの愛情を独り占めしたいが為に、みんな嫉妬し合っている。ノーマとルース・アンの父であるアールを演じているのが、ブロック・ピータース。彼はデトロイトで成功していて、ローズに家族を連れて来いというが、「うん」とは言わない。アールの事を可愛がるのが、マディアお婆ちゃん。それもローズには気に食わない。そのローズが可愛がるのが、ネッタ。ネッタはもう家を出ていて、大学に通っているのです。それがローズの誇り。そんな母の姿が気に食わないのが、ノーマとルース・アン。ネッタには昔から嫉妬していた。でも今は家に居ないから、ノーマとルース・アンのイライラは残っているビリー・ジーンに向かう。ビリー・ジーンだけ味方が居ないのでひとりぼっち。そんな中、ダンサーになって母親を楽させようと夢見ているのです。と、まあ複雑でしょ。女同士だから余計に複雑になっちゃう。でも女だから子供産んで育てて、働いて食べさせなきゃいけない。弱さだってある。間違いだってある。感情的にもなる。それらを男に頼れたら、どんなに楽な事か!でもマディアお婆ちゃんもローズも、それが出来なかった。だから間違いもあった。で、この映画のラストですよ。ジーンときます。
ネッタを演じたレスリー・アガムスが滅茶苦茶可愛い!「Roots / ルーツ (1977)」のキジーが一番有名ですね。「Poor Pretty Eddie / 日本未公開 (1975)」なんていう気持ち悪い映画にも出てましたっけ。悪いお姉ちゃんのノーマを演じたのがグロリア・エドワーズ。名優ディック・アンソニー・ウィリアムスの奥さん。悪役がいい映画は面白い。マディアお婆ちゃんを演じたのが名優のクローディア・マクニール。同じく舞台から映画化された「A Raisin in the Sun / 日本未公開 (1961) 」でも、同じように家長を演じてましたね。そして、あのオシー・デイビスが、ブロック・ピータースを演出していたかと想像するだけで、興奮するのって私だけですかね??すげーなーと、ゾクゾクします。
(4.75点/5点満点中:1/26/12にTV放映にて鑑賞)