6月7月の演劇
ひさびさの更新。前回以降に観たストレートプレイ。
シリーズ・女と男の風景の最後の演目。鈴木瑞穂と草笛光子の二人芝居。作はブライアン・クリーク。イギリスの80年代、退役軍人の夫婦。余命いくばくもない妻は夫の意に反して無断で核先制攻撃反対の新聞署名に名を連ねる。二日目にいったせいか、まだこなれておらず、セリフのとちりが多く残念。それでも、最後の草笛さんのポーズの向こうに、本当のイギリスの老婦人の姿が見えた気がしてびっくりした。
6/29 エレファント・バニッシュ(世田谷パブリックシアター)
昨年の初演に続いて再演にも通う。今年はじっくり、この後も二回足を運んだ。やはりすごい。みればみるほど作り込まれた芝居だな、と思う。テーマがテーマだけに後味はそんなに沁みるものにならないのがちょっと残念かな。
劇団四季のストレートプレイを初めて観た。万人に受け入れられるわかりやすく明せきな演技。優等生の演劇といったところ。くずしすぎないからこそ、想像力が働くということなのだろうか。物足りない気もしないでもないが。それでも名作を見られてよかった。
7/7 Midsummer Carol ガマ王子VSザリガニ魔人
後藤ひろひと作品を初めて観る。よく作られた話。真夏のクリスマスキャロル。しかし結末は悲しい。感動的ではあるが、泣かせに走っているところと一部の役者の演技がまだまだな点で、少し興ざめの部分もあった。
7/11 ハロー・アンド・グッドバイ(俳優座劇場)
南アフリカの作家、アソル・フガードの描いた60年代のプア・ホワイト。姉と弟、困難と貧困を生きた両親と幼年時代への複雑な思い。弟の言葉はやがて宗教的な象徴性を帯びてくる。個人的な体験からもとても共感してしまった。久世星佳、北村有起哉の姉弟は、息が合い、しなやかで個性的。
7/14 真昼のビッチ(シアターアプル)
ビレッヂ・プロデュース作品。長塚圭史作の演劇を始めて観る。こういう救いのなさは実はキライじゃない。役者はみないいが、特に気が狂った妹を演じた馬渕英里何の演技力には惹かれた。
7/24 求塚(シアタートラム)
世田谷パブリックの「現代能楽集」シリーズの第二弾。能の「求塚」を元にして、鐘下辰男の作・演出。役者はすばらしい人たちを揃え、演出も舞台空間も照明も素晴らしい。しかしとりあげられる素材が陰惨な幼児殺しの連鎖とは。どうも後味が悪く受け入れられなかった。
7/27 偶然の男(スフィアメックス)
天王洲アイルは遠くてツライ。それだけで損しているなあ。フランスの新鋭女性劇作家ヤスミナ・レザの作品。列車のコンパートメントの中で、偶然に居合わせた作家とその熱烈なファンの女性。なんとセリフのほとんどが内的独白。最終部になって二人はやっと現実に会話を交わす。難しい劇だ。長塚京三とキムラ緑子はさすが。マネキンを置く演出は個人的にはちょっと微妙。鈴勝さんらしいといえばそうだが。
7/30 父と暮らせば(紀伊国屋サザンシアター)
再演を繰り返すこまつ座の名作。原爆投下後の広島。恋をした娘のもとに死んだ父が現れる。掛け値なしにすばらしく胸を打つ。なぜ日本は平和憲法を捨て、米国の世界戦略に追随しようとするのか。本当に悲しく恥ずかしく怒りを感じる。機会があれば必見。映画の方はまだやっているようなのでそちらも観たい。
とりあえず7月まで。8月分と他のジャンルはあらためて。