Shin Yamagata

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4月16日




まだ花が見えていない距離から花の香りは漂い、花が見えてくると同時に花の周りにクマンバチ(クマバチ)が何匹も飛んでいるのが見える。更に近づくとクマンバチの羽音が聞こえてくる。クマンバチはホバリングをして目の前10センチのところにとどまりこちらを見ている。彼女はクマンバチと見詰め合っていることに喜びを感じるほど昆虫が好きではなかったが、こうもたくさんのクマンバチに囲まれるとどこかうっとりとしてしまいどうせなら私の蜜も持って帰ればいいのにと思うのだった。彼女の周りを取り囲んでいたクマンバチは彼女が直感した通りすべてがオスだった。クマンバチは彼女に関心を示し、彼女がメスだということを理解はしたのだが彼女の脇をかすめ花へと向かう。そしてクマンバチは非力なミツバチには開くことのできない藤の花をこじ開け蜜を手に入れるのだ。その意味においてクマンバチと藤の花は彼女に対して共犯関係にあった。