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2011-12-30

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『愛はね、』樋口美沙緒/小椋ムク

愛はね、 (白泉社花丸文庫)

愛はね、 (白泉社花丸文庫)

今年一年は樋口さんをひとに進めまくる一年だった。といっても、そんなに色んなひとに進めた訳ではないけれど。去年から一年にでる作品数がちょっとだけ増えて、発売日に買い込んでは楽しみにそのまま年末までとっておいたのだけれど、その甲斐がある読書体験になった。というのは個人的なお話。



望にはひとつの郷愁がある。その感情の全てはひとりの幼馴染みとの記憶に結びつく。どじで泣き虫な望を庇ってくれる幼馴染みの俊一。彼と一緒に買える帰り道には、優しく温かな感情がいつもあった。それが何かよく望にはわからないけれど、幸せな思い出だ。

そして望は中学生のときに俊一にひとつの告白をした。「男のひとが好き」。俊一は望を拒まなかった「俺のことをすきにならなければ」その言葉は全てを支配する。そして予備校生となった望は、高校生の時代から付き合う男全てが酷い男だった。殆どの男は望の身体目当てだったし、好きだといった相手も最終的に望を殴るようになる。望は傷付く度に、俊一の処へ戻っては慰められる。それを繰り返していたある日、俊一はある男を望に紹介する。信頼の置ける、という彼を望と付き合うように進めた俊一は、望との間に距離を置こうとする。俊一に嫌われたくない一心でその男を好きになろうとする望だが、彼は徐々に異様な執着心を露わにするようになり、暴力を揮い望の所持品を奪い、監禁、監視するようになる。

幼馴染みの事が好きなのだけれど、嫌われないようにそのことをひた隠しにする片想いの話。それだけならばどこにでもある話だけれど、望という主人公の造形に読む人の心に寄り添う様な深みがある。とても弱いのに、俊一を好きに想う裏で積もらせてきた憎しみを爆発させたり、兄や予備校の先生、俊一に怒られても付き合ってきた相手の確かにあった優しさを忘れない強さがある。自分を殴る相手の覗かせる「愛して」という悲鳴を自分に共鳴させ、「俺を好きにならなければ」と始めに一線ひいた週一に対して複雑な思いをもつ。俊一は自分の処へは下りてこない、俊一はいつも正しい、そんな風に重いながらも望は俊一が好きなのだ。

友情も愛情も同じ好きならいいのに。そんな風に同じ好きを返してくれない俊一に寂しさを覚えていた望。しかし最終的には、自分の気持ちを大事に想うようになる。「好きだよ」という言葉に対する返事を求めない。もっと自分を大事にしなさい、そう諭され続けた望が行き着いたひとつの答え。夢の中の母が話してくれた「愛はね、」という優しい言葉を、望が思い出したのだ。

この気持ちは自分のものだから、迷惑をかけないから、好きで居させて、なんてことも言わない。「好きだよ」、ただそれだけ。逢えば嬉しい、話せて楽しい、そんな風に隠さず言ってみせるけど、だから……とは言わない。「愛はね、」その後に続く言葉は明かされないけれど、望が手に入れた確りとした笑顔を考えれば自ずとそれは分かる気がする。