松本零士『日本国落城記 地獄のトンネル』(ビッグコミック8月25日号No.16)

終戦60年企画・スペシャル読み切り
現実と虚構がごっちゃになった実験的な作風、アヴァンギャルドだ!ニューウェイブだ!。…と言うか、大先生の脳内で既に現実も創作もごっちゃに…実験ではなく、天然で………いやその…ゴニョゴニョ。ここで言っている地獄のトンネルの意味は……。複数の意味で使っているから判り難いけれど、うん、そういう事なんでしょう。こう言っては何だけれど、漫画よりも、その前ページに掲載されている大先生インタビューの方が判り易くて面白い。
「当時、私は進駐軍からカメラを向けられると、歯を食いしばって、カメラをにらんでいた。彼らはよくキャンディーをまいてくれたが、施しは受けないと踏みつぶして歩いた。食うものもなく空腹だったけれど、子供ながら、やはり心に感じるものがあったのだ。」
……施しを受けずに、キャンディーを踏み潰して歩いたってところがよい。大先生の作品の、登場人物そのものではないか。この頑固さ、鉄の意志のような力強さにいまでも妙に共感してしまう。どうにも、お里が知れるって奴か。