産経新聞は誤った「レッテル貼り」の責任をとるのか?

産経新聞(2007年1月21日付 29面)記事を以下に紹介する。概要に対しては略(昨日のエントリと重複するので)。私が注目したのは太字の部分である。(太字は青狐による)

■伝えたい「南京の真実」 保守系有志ら映画製作へ
昭和12年、旧日本軍が日中戦争で南京を攻略した際、「南京大虐殺があった」との立場で描いた映画「南京」の上映が今月18日から米国の映画祭で始まった。これに対し、保守系の有志らが「南京大虐殺は政治的陰謀のでっちあげ」とするドキュメンタリー映画南京の真実」の製作に乗り出す。
映画「南京」は事件当時、現地に滞在していたドイツ人ビジネスマン、ジョン・ラーベ氏の残した日記を踏まえ、製作された。映画では犠牲者の数が「20万人以上」とされている。
今年はほかにも中国系米国人作家、故アイリス・チャン氏のベストセラー「ザ・レイプ・オブ・南京」を下敷きにした米英中の合作映画など、5本程度の「南京大虐殺」映画が封切られる予定だ。ただ、チャン氏の著作に対しては、「掲載された写真は中国国民党の宣伝担当による捏造で、南京大虐殺を証拠立てるものは存在しない」(東中野修道亜細亜大教授)など保守論壇からは否定的な見方が相次いでいる。
映画「南京」のストーリーに反発する、衛星放送テレビ局「日本文化チャンネル桜」(東京都渋谷区)社長で映画監督の水島総さん(57)は「ありもしない『南京大虐殺』が歴史の『真実』とされるのは納得がいかない。このまま何の手も打たず、日本の国際的なイメージが悪化するのは見過ごせない」と映画の製作を思い立った。
水島さん自らがメガホンを取り、当時の生存者の証言やフィルムなどをまとめ、今夏までに完成させる。今年は南京攻略から70年。南京が陥落した12月に合わせ、劇場公開と世界への配信を目指す。水島さんは「国内外の誤った歴史認識を改める道を切り開きたい」と話している。24日に映画の製作委員会を発足させ、製作資金の支援を一般に求める。問い合わせは同委員会準備室((電)03・5464・1397)。

ちなみに2006年11月26日の産経新聞1面トップ記事では、同じ映画を以下のように紹介していた。

米で反日史観映画 「レイプ・オブ・南京」下敷き 年明け発表 【ワシントン=山本秀也
米国の大手インターネット企業「アメリカ・オンライン」(AOL)のテッド・レオンシス副会長(50)が、南京事件(1937年)に取材した映画「南京」(仮題)を制作し、年明け以降、発表する。ドキュメンタリー作品の体裁だが、史実の認定は反日的な歴史観で知られる中国系米国人作家、故アイリス・チャン氏の「レイプ・オブ・南京」を踏まえているとされる。


つまり、昨年11月26日時点ではグッテンタグ監督作品に対し

レイプ・オブ・南京」下敷き

と1面トップで報道していた産経新聞は、今日(1月21日)の記事では

ジョン・ラーベ氏の残した日記を踏まえ、製作された。

どうやら「レイプ・オブ・南京」を下敷きにしているという見解を引っ込めたらしい。
ただし、11月26日の記事(「レイプ・オブ・南京」を下敷き)を訂正する旨は表明していない。

しかし、この2ヶ月の間に

グッテンタグ監督作品の映画「Nanking」=「レイプ・オブ・南京」を下敷きにした「反日史観映画」

というイメージは広範に広まっている。この現象に産経新聞の報道は大きく関与しているはずだ。


下世話な表現を使えば、産経は昨年11月に「燃料投下」を行ったのだが、今日(1月12日)報道で、事実に反する燃料投下だったことを自ら認めたわけだ。さて、産経は「燃料投下」した責任をどう考えるのだろうか。
この問題は、メディア・リテラシーに取りくんでおられる他のブロガーの方も検証してくださるとありがたいのだが…