第52回福岡吹奏楽コンクール高校の部第二日目

blueoceans122007-07-22

今日は福岡支部予選の二日目。これで、福岡支部の代表も決定する。
というわけで、代表が決まったので、今日は代表団体の中から聞く事の出来た団体の感想を。まずは、

福岡工業大学附属城東高校・課題曲3、自由曲・歌劇「トゥーランドット」より(G.プッチーニ
指揮者が交代して初めてのコンクールとなる。屋比久城東のサウンドはストレートなサウンドながら絶妙のブレンドでホールいっぱいに音楽を届ける・・・・という感じだったが、新生武田城東は、ステージ上で音楽をブレンドさせて、その塊を客席に送り出す・・・・という感じ。つまり今年の城東は、善くも悪くも沼中学校の高校生版(当然と言えば当然だが)というサウンドと音楽に変貌しつつあるようだ。しつつある、というのは、やはり指揮者が望むサウンドや音楽を完璧に再現するためには個々の楽器のサウンドもそれに見合ったものにならなければならない。が、まだ屋比久時代のサウンドを持つ奏者が残っているために、ややサウンドに迷いが見られるのである。それが最も如実にでたのが課題曲。冒頭部分からサウンドのバランスが悪く、やや後ろのめりなマーチになってしまっていた。マーチと言えば城東と言われた頃のオーソドックスなマーチではなく、色気を持ったマーチをこの指揮者は目標にしているのかも知れない。どちらがいいかは好みであるが、そのためには、それを実現させるサウンド作りにもう少し時間を要しているのだろう。自由曲は、ややバランスは取り直したが、木管ダブルリード楽器を中心に個人技に頼った演奏で、指揮者がやりたいこことを完璧に再現するには、こちらももう少し時間がかかりそうだ。それにしても指揮者が代わればこんなにもサウンドも音楽も変わるものかと、改めて認識させられたのである。

福岡県立修猷館高校。課題曲4、自由曲・歌劇「サロメ」より7つのヴェールの踊り(R.シュトラウス
昨年は、指揮者が違ったと思うが、今年はかつて城南高校を全国大会にまで導いた先生による指揮である。課題曲の冒頭からきらびやかなサウンドが響きわたる。サウンドは心地よく、音楽の輪郭もハッキリしているのだが、楽曲に内包されている細かいフレーズの再現度がいまひとつで、県大会に向けてより突っ込んだアナリーゼが望まれる。自由曲の冒頭は、オーボエのフレーズがパーカッションにかき消されるなど、らしからぬハランスの悪さを露呈していたが、今日の演奏で、それらの点は修正されて来るのだろう。またソロ楽器の傷も今日は目立ったが、一度こういうことがあれば、次は大丈夫・・・・なのではないかと思われる。もう一点、サロメを演奏するには、やや木管楽器にエッジが足りない気がしたのも事実。特に終盤においては、このエッジの鋭さが曲の盛り上がりの明暗を分けるので、このあたりの修正が必要となってくるだろう。

大牟田高校。課題曲3、自由曲・宇宙の音楽(P.スパーク)
ここ数年、常に九州大会に駒を進めている常連校の登場だ。課題曲がスタートするや、やはり感じたのはここ数年のこのバンドの課題である中域のパワー不足。楽曲の内声部を担当することの多い中域の楽器は、特に今の時代の音楽を演奏するには最も大切な楽器である。いいところまで行きながら、代表に手が届かないのは、この部分が大きな要因だったのであるが、今年もそれは克服されて来なかった。そのため、課題曲・自由曲を通じて、高域楽器と低域楽器とのブレンドがうまく行かず、消化不良のまま音楽が展開されることになった。課題曲は、よくアナリーゼされた演奏だったが、やはりサウンドブレンド不足が、音楽をスカスカにしてしまっていた。自由曲は、今年の高校の部の流行りの曲だが、やはり特にスパークのような作曲家の楽曲は、中域楽器を中心とした内声部の動きが、音楽にうねりを持たせる効果を持っているのである。今日の演奏はビッグバン仕切れないまま宇宙が消滅してしまった感じだったが、次は是非とも感動的なビッグバンの成功を見届けたいものだ。奏者も指揮者もその能力は充分に持っているはずだから。

精華女子高校。課題曲4、自由曲・宇宙の音楽(P.スパーク)
課題曲のスタートと共に非常に豊かで自信を持ったサウンドが響きわたる。が、ややサウンドのバランスが悪く、特にトロンボーンの破裂音がバリバリと全体の音楽を邪魔していたのが気になった。トロンボーンは非常に目立つ楽器なので、いろんな色を持ったサウンドを追求して、場面場面に合わせた音色と抑揚に気をつけて貰いたいものだ。今回の予選には、そこまで手が回らなかったのだろうか・・・・。しかし、楽曲に内包されている細かいフレーズも、その再現力は、二日間を通して随一のものだったと言っていいだろう。さて、自由曲は、確か去年、東京の大学予選で創価大学イオニア吹奏楽団の演奏を聞いて、えらく感銘したが、精華女子の演奏もそれに迫るような完成度を見せていた。ただ、やはりここでもトロンボーンのバリバリサウンドが時として音楽を遮断してしまうことがあったり、また、音楽的な処理そのものに、迷いが見られたりと、次に向けての修正が必要なのも事実ではある。しかし、スパークやバーンズをお得意とする精華女子校だけあって、内声部のうねるようなフレーズの再現力は素晴らしく、見事にビッグバンを乗り越えた宇宙を魅せてくれた。次は是非、ビッグバンの後爆発的に成長し神秘性まで併せ持つようになる、本当の「宇宙の音楽」を披露してくれることだろう。

というわけで、福岡支部代表は次の面々ということになった。

九州女子高等学校
都築学園福岡第一高等学校
中村学園女子高等学校
福岡県立城南高等学校
福岡工業大学附属城東高等学校
福岡県立修猷館高等学校
大牟田高等学校
精華女子高等学校
福岡県立香住丘高等学校

サウンド面でも音楽面でも、予選会を聞いた限りでは、第一、城東、精華の3強が群を抜いていたが、コンクールはまだまだこれから。県大会〜九州大会と、どんな奇跡の音楽に出会えるのか、益々楽しみになって来た。