『親日人名辞典』と「民族の正統性」

まあ正直、興味がないことはないんですが、この手のいがみ合いにコミットしてどっちかに肩入れする気はまったく起きません。

この辞典を出版する側も、抗議する側も、
「我々の行為は〈民族の正統性〉確立に資するものであり、相手方の行為はそれを損なうものである」
…と主張することにおいては何も変わらないわけです。

だからこそ、『朝鮮日報』あたりは、民族問題研究所であっても落星垈経済研究所であっても、自らが規定する「民族の正統性」を損なうとなれば叩きます。右派/左派とか保守派/革新派とかいった二分法だけでは、そういったところを見落としかねない気がしています。

韓国で「対日協力者辞典」 朴元大統領も、保守派は抗議

 【ソウル共同】韓国の非政府組織(NGO)、民族問題研究所は8日、日本による植民地支配に協力したとして、故朴正熙元大統領を含む4389人の名前や「反民族行為」の詳細をまとめた「親日人名辞典」を刊行し、内容を公開した。


ソウル市内で民族問題研究所が公開した「親日人名辞典」=8日午後(聯合=共同)

 これに対し、保守派の市民団体が同日、抗議集会を開いたほか、名前が掲載された人物の遺族の一部が名誉棄損訴訟を検討するなど、大きな波紋を呼んでいる。韓国で「親日派」は植民地支配などに積極的に協力した「売国奴」に近い意味を持つ。

 同研究所によると、辞典は全3巻、計約3千ページ。軍人や政治家から芸術家まで広い分野の人物が含まれ、朝鮮伝統舞踊を舞台芸術化し「朝鮮半島舞姫」と呼ばれた舞踊家の故崔承喜さんや、韓国の国歌「愛国歌」を作曲した故安益泰氏のほか、従来は抗日運動に貢献したとされていた約20人も含まれている。

 遺族らの抗議で384人の掲載が今回、保留されたが、同研究所は追加調査の後、改訂版に反映させる方針という。

 辞典は2001年に編集委員会がつくられ、各分野の学者ら計400人以上が編集に参加・協力した。当初、政府予算で編集が始まったが、途中で打ち切られ、市民団体がインターネットを通じた募金運動などで多額の資金を集めた。

2009/11/08 21:50 【共同通信

http://www.47news.jp/CN/200911/CN2009110801000485.html

記事入力 : 2009/11/09 11:40:04
親日人名辞典』出版、収録者数4389人
朴正煕元大統領など、発表された人物の大半を収録

 民族問題研究所(任軒永〈イム・ホンヨン〉所長)と親日人名辞典編さん委員会(ユン・ギョンロ委員長)は8日午後2時、孝昌公園(ソウル市竜山区)で『親日人名辞典』(全3巻)の出版報告大会を行い、辞典に収録された4389人の名簿と各人物の「親日行状」を公開した。今回収録された人物の数は、昨年発表した最終名簿4776人より387人少ない。

 これについて編さん委は、「収録対象から除外した人物は、シン・ヒョンファク元首相、崔謹愚(チェ・グンウ)元社会党創党準備委員長、日本陸軍少尉出身で3・1独立運動に参加し、中国・上海への亡命準備中に死亡したイ・ドンフンの3人。残る384人は、収録基準に該当してはいるものの、情報があまりに乱雑だったり、確証が難しく現在確認中のもので、追って補遺編を出版する際に収録の最終決定を行う」と発表した。

 収録名簿には、朴正煕(パク・チョンヒ)元大統領、張勉(チャン・ミョン)元首相、言論人の張志淵(チャン・ジヨン)、音楽家の安益泰(アン・イクテ)や洪蘭坡(ホン・ナンパ)、文人の金東仁(キム・ドンイン)、徐廷柱(ソ・ジョンジュ)など、これまで発表された主要人物がすべて含まれている。ユン・ギョンロ委員長は、「民族反逆者全員と、附日協力者のうち一定の職位以上にあった人物、そのほか政治的・社会的責任を負うべき親日行為が明白な人物について、歴史的・実証的な検証を経て選定した」と語った。

 しかし、職位や一部の行為を「親日」と一括して規定していることについては、非難が避けられないとみられる。ソウル大の朴孝鍾(パク・ヒョジョン)教授は、「厳しい日帝統治下で一定の職位を経て、幾つかの文章を残したことをもって、韓国社会に大変な論争をもたらす“親日”のレッテルを張るのは公正とは言えず、後世に生きているという理由で、当時を生きた人々の心情や情熱を考慮することなく裁断するのは暴挙」と語った。また、「親日」選定の基準自体の客観性も、物議を醸すとみられる。2005年に発足した親日反民族行為真相究明委員会は、今回の親日人名辞典に含まれている言論人・張志淵について、「いくつかの状況から、特別法の厳格な適用には多少及ばない点があり、調査対象から除外した」と発表した。

 この日の『親日人名辞典』の出版報告大会は、当初は淑明女子大淑明アートセンターで開催される予定だったが、保守団体との衝突を懸念した淑明女子大側が施設の利用許可を取り消したため、代わりに1キロほど離れた孝昌会館で行われた。同日、「朴正煕を正しく知る国民の集い」など保守団体の会員30人余りは、『親日人名辞典』は客観性とバランスに欠けるとして、淑明アートセンター前で、『親日人名辞典』の出版反対および民族問題研究所の解体を求める記者会見を開いた。

李漢洙(イ・ハンス)記者
キム・ドンヒョン記者

http://www.chosunonline.com/news/20091109000036

記事入力 : 2009/11/09 11:44:38
【社説】韓国の正当性を揺るがす『親日人名辞典

 8日午後、ソウルの孝昌公園にある金九(キム・グ)の墓所で、民族問題研究所が親日4389人の人的事項と行状を収録した『親日人名辞典』の出版報告大会を行った。墓の入り口の路面には、白い字で「朴正煕(パク・チョンヒ)は親日残党」「高木正雄(朴正煕元大統領の日本名)日本陸軍少佐を国立顕忠院から追放せよ」といったスローガンが書かれ、「大統領選挙をやり直そう」「メディア悪法」といったプラカードも目に付いた。国民儀礼では、『愛国歌』(韓国の国歌)の斉唱も太極旗(韓国の国旗)の掲揚もなく、「民衆儀礼」にのっとり、「殉国先烈に対する黙とう」だけが執り行われた。韓半島朝鮮半島)が描かれたバッジを付けた人も、多く見られた。

 このたび出版された『親日人名辞典』には、張勉(チャン・ミョン)元首相や朴正煕元大統領など、かつての大韓民国国家元首や政府首班と共に、乙巳勒約(第二次日韓協約)締結時に「是日也放声大哭」という抗日の社説を残した言論人の張志淵(チャン・ジヨン)、『愛国歌』を作曲した安益泰(アン・イクテ)、韓国人としては初めてカトリックのソウル大司教区長となった盧基南(ノ・ギナム)、高麗大や延世大を創立し、総長を務めた金性洙(キム・ソンス)、玄相允(ヒョン・サンユン)、白楽濬(ペク・ナクチュン)、6・25戦争(朝鮮戦争)時に陸軍参謀総長や軍司令官として、第一線で北朝鮮の侵略に立ち向かった丁一権(チョン・イルグォン)、ペク・ソンヨプといった軍の元老らも収録されている。これらは、1949年に反民族行為特別委員会(反民特別委)が発表した親日調査被疑者名簿には載っていなかった人たちだ。

 光復(日本の植民地支配からの解放)直後、親日派を精算しようと強い意志を有していた反民特別委が選定した親日関係者は688人。抗日独立運動元老の集まりである光復会が、2002年に発表した親日関係者名簿に収録された人物は692人だった。ところが、祖国光復運動に指一本触れたことのない正体不明の人物が、その時より6倍も多い人たちを「親日」として辞典に載せたというわけだ。

 民族問題研究所はこの日、この辞典は韓国国民の募金によって作成されたと説明した。しかし実際は、金大中(キム・デジュン)、盧武鉉ノ・ムヒョン)両政権が、『親日人名辞典』編さんのために国民の税金8億ウォン(現在のレートで約6174万円)を支援した。貴重な税金が、またしても大韓民国の正当性を削り取ることに使われたというわけだ。

http://www.chosunonline.com/news/20091109000037