志願兵制度の検討やら兵役期間の短縮やら

興味深い内容が盛り込まれているのでクリップ。

徴兵制と志願兵制とでは、軍の性格自体が大きく変わってきますし、当然その違いは国防政策にも関わってきます。議論がどのように推移するか、気にしておく必要がありそうです。

記事入力 : 2010/07/05 11:07:12
徴兵:「2020年からは志願兵制度の検討を」

全面導入、韓国ではまだ無理
50万の兵力を維持して志願兵制を導入した場合、6兆ウォンの追加予算が必要

 2020年以降を視野に入れた国防改革推進案には、募兵制度(志願兵制度)の導入も検討すべきという項目がある。2020年以降は、南北の軍事的な緊張が今より小さくなる可能性が高く、世界各国で志願兵制への転換が一つの流れとなっているからだ。

 1990年代以降、フランスやイタリアなどが徴兵制から志願兵制に変わった。また台湾では、兵役者数の過剰を解消するために、兵役期間の短縮と代替服務制度の積極的な導入を通じて、志願兵の割合を高めている。これは安全保障面での脅威の減少、あるいは軍改革による兵力削減に伴うもので、志願兵制と徴兵制との並行、あるいは志願兵制への移行が中心となっている。

 しかし一部の専門家は、韓国では安全保障を取り巻く環境や兵力の規模、国民の意識、国民所得のレベルなどを考慮した場合、2020年以後も全面的な志願兵制導入は難しく、推進するにしても、徴兵制との並行といった形で段階的に行うべきと主張している。韓国国防研究院のチョン・ジュソン研究員(博士)の分析によると、50万の兵力を維持しながら志願兵制に移行した場合、年間6兆ウォン(約4300億円)以上の追加の人件費が必要で、そのためには国防費をおよそ25%増やさなければならないという。兵力を30万人へと減らした場合でも、人件費は年間2兆5000億ウォン(約1780億円)以上の増加が見込まれる。また、50万人を志願兵とする場合には、毎年12万人ほどの兵力を新たに増員しなければならないが、アンケート調査などによると、この数を志願兵だけで充当するのは難しいとの結果が出ている。兵力規模が30万人以下の場合にのみ、志願兵制の導入が可能ということだ。

ユ・ヨンウォン軍事専門記者

http://www.chosunonline.com/news/20100705000031

「志願兵制への移行が人件費増につながる」というのは、つまり下記にあるような現状の反映だと思われます。徴兵制には、マンパワーダンピングによってようやく維持されているという側面があるわけです。

韓国某MFの年収は7万円…W杯選手の就職事情
6月15日11時26分配信 サーチナ

 サッカー・ワールドカップで活躍を見せる各国の選手たちの多くは世界の有名クラブチームの主力選手であり、ビッグマネーを手にしている選手も少なくない。しかし、中には様々な理由によって薄給あるいは「失業中」の選手もいるという。網易スポーツチャンネルが伝えた。

 韓国メディアによれば、韓国のMFキム・ジョンウ(金正友)の年収は95万4000ウォン(約7万円)で、今大会参加選手の中では最低の給料だという。先日のギリシャ戦で活躍を見せ、勝利に貢献した彼がなぜそんなに薄給なのか。韓国・Kリーグのクヮンジュ・サンム(光州尚武)に所属している彼だが、昨年11月より兵役についており、期間中は韓国政府が定めた兵役手当しか受け取ることができないというのが、薄給の原因だという。

 また、今大会出場選手の中には4人の「失業者」がいるとのこと。大会史上初勝利を挙げたスロベニアの主将コレンもその一人で、2010/11シーズンでのイングランド・プレミアリーグ昇格を果たしたウエスト・ブロムウィッチに所属していたが、チームは新たに契約を結ばないことを決定したため、大会後に「就職活動」を行う必要がある。そのほか、3月にギリシャのクラブチームから解雇されたオーストラリアのDFムーア、ニュージーランドのベテランMFエリオット、DFマリガンも現在フリーの状態だという。

 なお、北朝鮮のメンバーの給料については「謎」と伝えられており、「衣食に不自由しない生活の保証」ということしか分かっていない。ただ、2006年に世界女子ユースで優勝した際には選手たちが「国家英雄」と称され、家屋と賞金がプレゼントされたことから、今大会でも目覚ましい活躍があれば然るべき報奨があるのではないかと見られている。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20100615-00000031-scn-spo

兵役期間の短縮については、それぞれの立場でいろいろな思惑が交錯する問題だけに、最終的には技術的というよりは政治的に決定されるべきことだと思うのです。後は、その決定にいかに説得力を持たせるか、というのが課題でしょう。仮に、時の政権がレイムダック状態であれば、そうした政治力を期待するのは難しいかもしれません。

李明博政権は、どうでしょうか。

記事入力 : 2010/07/05 11:04:52
徴兵:兵役期間の短縮計画、全面的に修正か(上)

現役兵の兵役期間を18カ月に短縮した場合、年間5万人の新兵が必要
3年前の決定時には把握できなかったのか

 2014年までに現役兵(陸軍・海兵隊)の兵役期間を24カ月から18カ月に短縮する計画を中断するか、あるいは現状復帰することを検討し、政府や軍当局の動きが表面化している。

 5日に就任する韓民求(ハン・ミング)新合同参謀議長は先月30日、国会人事聴聞会で、「18カ月という期間は、戦闘熟練度などの面で問題があり、22カ月前後は必要という意見が国内で根強い。(この意見を)国防長官にも提議したい」と証言した。また、大統領府直属の国防先進化推進委員会などでも、兵役期間短縮計画を大幅に修正する方向で検討していることが確認された。現役兵の兵役期間は2007年から段階的に短縮され、現在は21カ月となっている。

 政府消息筋は4日、「大統領府国家安全保障総括点検会議や国防先進化推進委員会、さらには軍内部でも、兵役期間を予定通り18カ月に短縮した場合、安全保障面で大きな問題が生じるという意見で一致している」「短縮措置を中断するか、あるいは現状に戻すなど、さまざまなオプションを検討中だ」と語った。

 大統領府など政府や軍の一部では、ハイテク兵器を駆使する将兵の熟練度や兵役資源の不足などを考慮した場合、現役兵の兵役期間として最低でも24カ月は必要と主張している。しかし24カ月に戻した場合、入隊予定者や家族などからの反発が強まるのは明らかだ。そのため短縮計画を中断し、兵役期間を21カ月に設定すべきという意見も根強いという。陸軍兵の最短兵役期間については、2000年初めに軍内部で協議された結果、機甲整備を除いて20カ月が適正という結果に至った。今後はこの結果に基づき、20カ月までに短縮し、それ以降は部隊の状況に応じて期間を設定するなどの案も提示されている。

http://www.chosunonline.com/news/20100705000028

記事入力 : 2010/07/05 11:05:02
徴兵:兵役期間の短縮計画、全面的に修正か(下)

 政府が兵役期間短縮計画を全面的に修正しようとする理由は、兵役期間が18カ月にまで短縮された場合、韓国の安保基盤が根本から揺らぎかねないからだ。まずは2021年以降、兵役資源の不足により現役兵の定員を満たすのが難しくなる。国防部は現在、65万人をやや上回るレベルの総兵力を、国防改革基本計画に沿って、2020年までに51万7000人へと減らす計画だ。現在の出生率が今後も推移すれば、2021年には2万9000人、2022年は3万1000人、2023年は3万9000人、2025年は5万7000人、2029年には6万5000人の現役兵が不足すると予想されている。とりわけ北朝鮮金正日キム・ジョンイル総書記が死亡するなどの突発事態が起こった場合、北朝鮮の安定を維持するには、51万7000人以外にもかなりの追加兵力が必要となる。兵役期間が24カ月から18カ月へと6カ月短縮された場合、兵士たちが入隊してから除隊するまでの周期も早まり、毎年5万人前後の現役兵が追加で必要となる。

 さらに、高度の熟練が必要となるハイテク兵器の比率が高まることも問題だ。政府関係者は、「1台80億ウォン(約5億7000万円)の新型K2戦車を、兵役期間が2年にも満たない兵士が操縦するのは問題だ。朝鮮人民軍は7年以上の兵役期間を設けており)、熟練度が高い。この点も考慮しなければならない」と述べた。

 国防部は兵役期間の短縮を推進する一方で、2020年までに有給の志願兵4万人を新たに募集し、複数の兵器を駆使できる熟練兵を確保する方針だ。しかし昨年、試験的に志願兵を募集したところ、志願率が想定に満たなかったことから、この制度の導入も不透明な状況だ。陸軍機械化部隊のある現場指揮官は、「高価な最新兵器を熟練度の低い兵士が取り扱っているため、いつも不安を感じている」「副士官や有給の志願兵で空白を埋め合わせたいが、期待通りの結果は得られていない」と述べた。

 盧武鉉ノ・ムヒョン)政権当時の2007年、兵役期間の短縮は軍の反対を押し切る形で施行され、この点も兵役期間の再検討に影響している。政府関係者は、「兵役期間の短縮は戦時作戦統制権の移行とともに、前政権による二つの大きな国防の失政だ」と述べた。

 国家安全保障総括点検会議と先進化推進委員会では、8月中に兵役期間短縮を再検討した結果を李明博(イ・ミョンバク)大統領に報告する予定だ。現行の兵役法では、国防部長官は国務会議(閣議)での審議と大統領の承認が得られれば、現役の服務期間を6カ月以内の範囲で延長または短縮することができる。そのため法改正が行われなくても、期間の中断あるいは現状復帰の決定を下すことは可能だ。金泰栄(キム・テヨン)国防長官は先月21日、国会国防委員会で「国防計画2020」に基づく兵役期間短縮の規模を縮小する案について、「国防改革案の全面的な修正と同時に、兵役期間の短縮についても検討している」と語ったが、政治的な影響や世論の動向を考慮し、慎重な立場を維持しているという。

ユ・ヨンウォン軍事専門記者

http://www.chosunonline.com/news/20100705000029

記事入力 : 2010/07/05 11:05:52
徴兵:兵役期間の短縮、政治的負担から慎重論も

金章洙議員「国民への礼儀に反する」
前政権で期間の短縮を受け入れた国防部は困惑

 韓国政府が「兵役期間の短縮」を改めて検討していることについて、国内では慎重な意見が非常に根強い。すでに段階的に施行されている兵役期間短縮措置を中断すると、入隊対象者や保護者が反発し、政策そのものに対する国民の信頼が損なわれる可能性があるからだ。国防部は盧武鉉ノ・ムヒョン)政権当時の2007年、兵役期間を2014年までに6カ月短縮することを決め、06年1月入隊者から、段階的にこの措置を実施してきた。これは現在も進行中で、例えば10年7月6日入隊者の場合、陸海空軍ごとに79日から83日の間で短縮される。当時、国防長官として兵役期間の短縮を決めたハンナラ党の金章洙(キム・ジャンス)議員は、「前政権が国民と約束した内容を、手のひらを返すようになかったことにするのは、国民への礼儀に反することだ」と主張している。ただし金議員は、兵役期間を短縮する必要があるのなら、現在行われている「6カ月短縮」が完了する2014年以降とする、いわゆる「スピード調整」を代案として提示している。

 慎重論が大勢を占める背景として、政界の負担が大きいという点が指摘されている。李明博(イ・ミョンバク)大統領は大統領選挙の際、兵役期間の短縮について「可能」との考えを示していた。兵器の近代化や韓半島朝鮮半島)の緊張緩和などを条件としながらも、当時としては「やや前向き」と評価されていた。そのため、国民の兵役負担を改めて大きくする決定を下すのは、非常にプレッシャーが大きいという側面があるのも事実だ。国会も同じで、ハンナラ党のユ・スンミン議員は昨年8月、兵役期間を22カ月(陸軍)とし、現在の期間短縮措置を中断するという内容の兵役法改正案を提出したが、これは国会国防委員会で否決された。票を意識した政界が、兵役期間の短縮中断に消極的だったためとされている。

 前政権による兵役期間短縮の方針を受け入れ、実際に政策として取りまとめた国防部も、同じように負担を感じている。国防部は07年当時、幹部の増員、兵器の近代化といった戦力整備が行われれば、兵役期間の短縮は可能と説明していた。しかし、それからわずか3年で再検討を行ったことで、戦力整備に必要な予算を調達する方法を見過ごしていたか、あるいは最初から計画は無理と知りながら、政権の顔色をうかがってまともな議論を行えなかったのではないか、といった非難の声が出るのは避けられない。

崔慶韻(チェ・ギョンウン)記者

http://www.chosunonline.com/news/20100705000030