大学と自殺

昨日、KAISTに入学した元SMエンタテイメント練習生の記事をクリップしましたが、実はその記事と並んで同じKAISTにまつわるこんな記事がありました。

KAIST在学生がまた自殺…今年で3件目

KAIST(韓国科学技術院)在学生がまた自殺した。専門系高校出身のKAIST在学生が自殺してから2カ月ぶりだ。

20日午後6時35分ごろ、京畿道水原市霊通区(キョンギド・スウォンシ・ヨントング)のマンションの花壇で、このマンションに住むKAIST2年のキムさん(19)が血を流して倒れているのを通行人が発見し、119に申告した。この通行人は警察で「ドンという音が聞こえたので見ると、花壇で人が血を流して倒れていた」と話した。

事故当時、キムさんの家族はみんな外出していた。キムさんの家では「誰かを恨んだりはしない。妹に申し訳ない」という内容のA4用紙1枚分の遺書が見つかった。19日午後8時47分にキムさんのブログには「憂うつだ…苦しい…」というコメントが最後に書き込まれていた。

警察はキムさんが遺書を残して自殺したとみて、正確な事故の経緯を調べている。科学高校出身のキムさんは今月初めに新学年になった後、16日間、突然休学した。学校側はキムさんは学業の成績も優秀で性格も明るかったと伝えた。

これに先立ち、専門系高校出身で学校長推薦でKAISTに入学して関心を集めた1年のチョさん(19)が成績の問題で悩み、1月8日夜、学校の建物のボイラー室前で自殺している。

2011.03.30 11:26:32

http://japanese.joins.com/article/article.php?aid=138643&servcode=400§code=430

KAISTに限らず、大学と自殺とはしばしば結びついてしまうことがあります。日本でもそうですし、他国でも状況はそう変わらないはずです。

適切な対処や対応があれば未然に防ぐことができたものも当然あるはずです。ただ、「自殺者ゼロ」を目的化した取り組みを大学に求めるというのは、無茶な要求だと思います。

死を臨むような闇や深淵のギリギリまで踏み込むことは、時として避けられないものです。

その上で、できないことばかりの私に何ができるか。そこはやはり、考えなければなりません。

【社説】「ロボット英才」を死に追いやる教育環境

米名門コーネル大は“自殺学校”というありがたくない別称を持っている。毎年少なくない学生が学業のストレスに勝てずキャンパス内の橋の上から渓谷に身を投げるためだ。学校側が相談センターを拡大運営するなど努力を傾けたが力不足だ。昨年は3月の1カ月だけで3人が相次いで自殺すると、デビッド・スコートン総長が学校新聞を通じ「みなさんの健康こそ成功の礎石だ。コーネルで助けを求める方法を必ず習うよう願う」と呼びかけたりもした。

大学生の自殺はこの学校だけの問題でない。その他のアイビーリーグの学生の中でも自ら命を絶つことは頻繁だ。そのためこれら大学の入学査定官らは優秀な成績だけでなく、成熟した人格、困難に勝ち抜くことができる意志を持つ学生を選ぼうと努めるという。

国内でも学業と就職のストレスがますます激しくなり、うつ病や自殺衝動に苦しめられる大学生が増加している。特に名門大学生であるほど周囲の高い期待と激しい競争で大きなストレスを受けているが、周辺に気持ちを打ち明けることができず困難を経験しているということだ。“ロボット英才”として注目されてKAISTに入学し、1年で自殺したチョ某君もそのようなケースだ。幼い時からロボット分野で頭角を現わし、専門系高校出身でありながら入学査定官選定で抜擢された彼だ。だが、科学高校出身学生と違い英語で実施される授業は大変で、「自分が適応に失敗すれば専門系高校の後輩のKAIST入学が難しくなる」とプレッシャーを感じていたという。

周辺に困難を知らせ適切な助けを受けたとすれば決して起こらなかった悲劇だ。前途有望な若い人材が一時の困難で尊い命を捨てることがないよう大学は学生指導により大きな努力を傾ける必要がある。教授と専門家が協力して学校への適応に困難を感じる危機学生たちにあらかじめ助けの手を差し出さなければならない。オンライン・オフライン相談はもちろん、2008年から24時間相談電話を運営するソウル大の場合を参考にしよう。これとともに初めから無理な選抜が悲劇を呼んだという指摘もあるだけに、KAISTは入試制度上の問題点はないか綿密に検討するよう願う。

2011.01.12 11:15:16

http://japanese.joins.com/article/article.php?aid=136573&servcode=100§code=110

競争ストレスが生んだ天才たちの悲劇…衝撃のKAIST(1)

「自殺を考えるほどつらければ教授室のドアを叩いて下さい。どうか…」。KAISTのチョン・ジェスン教授(バイオ・脳工学科)が30日、自身のツイッターを通じて学生らにこう訴えた。彼の文には衝撃を受けたKAISTの雰囲気がそのままにじんでいる。

今年に入ってだけでKAISTでは学生3人が相次いで自殺した。4年生の男子学生(25)は29日午後1時25分ごろ、ソウル・瑞草区(ソチョグ)のアパートの12階から飛び下りて命を絶った。これに先立ち20日には京畿道水原市キョンギド・スウォンシ)で2年生の男子学生(19)が遺書を残して死んでいるのが発見された。1月8日には1年生の男子学生(19)が学校で自殺した。

チョン教授はこうした悲劇をなくすべきだと学生に訴えながら謝罪の心情も伝えた。

「KAISTの耐え難いストレスと競争の圧力の中で人生の指標を失った学生たちに心より申し訳ない。学生の逸脱と失敗を金で計る不適切な哲学でみなさんを追い詰め惨憺としている」。

チョン教授は、「学校が学生たちの声に耳を傾け根本的な対策をまとめなければならない」と声を高めた。学生が学問の情熱と協力の美しさ、創意の楽しみを学べるよう奨学金制度を変えるべきと主張した。教授と学生、学生と学生同士の関係改善も必要だとチョン教授は話した。

2011.03.31 09:52:50

http://japanese.joins.com/article/article.php?aid=138679&servcode=400§code=430

競争ストレスが生んだ天才たちの悲劇…衝撃のKAIST(2)

この日KAISTのキャンパスは沈鬱としていた。衝撃を受けた学生たちは口を閉ざした。学校側は学生たちの相次ぐ自殺に対する対策作りに苦心している。特に相次ぐ学生の自殺が別の学生にも影響を及ぼし「ウェルテル効果」(模倣自殺)を呼び起こさないか心配している。

学校側は学生の勉強のストレスを減らすためにスポーツ活動を強化することにした。1年生の場合、義務的にスポーツ種目をひとつ選択し授業を受けさせるという。

成績にともなう授業料負担を減らすために納付額を調整することを総学生会と協議中だ。KAISTは本来授業料が無料だ。しかし2007年に導入した新しい制度により、学生が一定の成績に達しなかったり9学期以上在学した場合には授業料の一部を支払わなければならない。こうした差別的制度が学生たちに負担を与えたという指摘だ。ある在学生は、「相次ぐ学生の自殺は個人の問題でもあるが、授業料制度などシステムも原因を提供したと思う」と話した。

学生の性格育成のため「名誉制度」(マイレージ)の導入も検討中だ。例えば試験中に不正行為をしないという約束を守った場合にポイントを与える方式だ。ポイントを多く積み立てた学生には奨学金の恩恵などを与える。現在運営中の学生相談センターは相談専門家を現在の4人から6人に増やすことにした。これと合わせ学園祭期間には午後の講義をせず学園祭だけを楽しめるようにするという方針だ。これまでは学園祭の時も午後の講義を行っており、学生たちが存分にストレスを解消できないという指摘を受けてきた。キム・ユンス広報チーム長は「学生たちの負担を最小化するための方策だ」と説明した。

ある教授は、「こうした断片的な代案は本質的な対策にはならない。現在運営中の学生の学校生活支援プログラムを総体的に再点検して補完しなければならない」と話した。

2011.03.31 09:52:54

http://japanese.joins.com/article/article.php?aid=138680&servcode=400

中央日報』は、さらに社説を使ってこの件を取り上げています。ただ、結果論で当事者を批判するだけなら簡単です。こうして自殺者が出るまでの間、KAISTについて何をどう見ていたのか、他の大学だけでなく、マスメディアも、各人も、省みなければならないように思います。

【社説】「KAIST学生自殺」悲劇と教育の本質

自殺という極端な選択に身を投げる時は動機があるはずだ。精神的であれ肉体的であれ耐えられない限界状況に追い込まれ、自殺衝動を感じるのだろう。今年に入って3カ月間でKAIST(韓国科学技術院)の1・2・4年の学生3人が相次いで自殺した事件を偶発的なものとして済ませられない理由だ。亡くなった学生に対する同情を越えて、こうした状況になるまで放置してきた大学の安易な認識が悔やまれる。

KAISTは科学高校出身の英才が主流になってきた。しかしこの1−2年間は入学査定官制を通して一般高校や専門系高校出身の人材を多数選抜している。こうした学生は科学高校出身者に比べて数学・科学が相対的に弱く、授業についていくのに激しいストレスを受けるという。専門系高校出身でKAISTに初めて入学した‘ロボット英才’チョさんは1月、成績不振を悲観して命を絶った。選抜をしただけで、事後管理が徹底されずに生じた悲劇に違いない。

成績と学費を連動させる制度が果たして望ましいのかどうか公論化する必要がある。KAISTは本来、学費が無料だ。経済的負担なく研究と勉強を並行できるため人材が集まった。しかし07年、徐南杓(ソ・ナムピョ)総長は一定の成績に達しない学生に授業料の一部を負担させるという懲罰的学費制度を導入した。最悪の場合、1学期当たり最大750万ウォン(約58万円)の学費爆弾を浴びることもある。周囲の関心と期待を受けた英才は落ちこぼれないように極度の緊張状態を維持しなければならない。無限競争が避けられないシステムだ。

学校側は学生全員に心理テストをし、体育活動を強化し、祭り期間には休講する案を対策に出した。KAISTのレベルが疑われるほどの弥縫策だ。「学生の逸脱と失敗に価格をつける不適切な教育哲学」というこの大学教授の分析は傾聴するに値する。教育の目的は個人の潜在力を引き出して発展させるところにある。競争も良いが、情熱と創意の美しさを教えるのが大学存立の目的だ。若い人材が尊い命を捨てることがないよう根本的な対策を見いだすことを願う。他の大学も「KAISTの悲劇」を他山の石としなければならない。

2011.04.01 16:38:04

http://japanese.joins.com/article/article.php?aid=138749&servcode=100§code=110