沖縄大学の授業料免除を維持し、支えるために

大学に通うお金の工面に苦しむ制度対象者にとっては、有り難く、心強いニュースです。当事者は、先立つものがなければ、何も始められないですから。


被養護者や里子、沖縄大が支援 4年間授業料全額免除
2013年3月29日


沖大児童福祉特別奨学生制度

 沖縄大学(加藤彰彦学長)は28日までに、児童養護施設の利用者や里子ら社会的養護が必要な若年者を対象にした「沖縄大学児童福祉特別奨学生制度」を新たに創設した。来年4月からの入学者が対象で、同大学の推薦入試に合格した若干名に対して、授業料を4年間全額免除する。県内の国公立・私立大学で社会的養護が必要な若年者を対象にした奨学生制度を創設したのは初めて。

 県里親会や児童養護施設の関係者は喜ぶ一方で「沖縄大学を突破口に、他の大学でも同様の制度が広がってほしい」と制度の波及に期待を寄せている。

 県外では山口県山口福祉文化大学が同様の奨学制度を設けているが、授業料の全額免除は2年次まで。沖縄大によると、4年間の授業料全額免除は全国的にも珍しい。

 児童福祉法では、児童養護施設で暮らす子どもたちや里子は、高校卒業と同時に自立とみなされ、基本的に施設への措置、里親委託が解除される。

 子どもたちの中には大学進学などに伴う費用が準備できず、進学を諦める人が多いという。また県児童養護施設協議会が2005年にまとめた調査報告書では、九州・沖縄8県の児童養護施設で、大学などに進学した人のうち、生活苦を理由に46%が中途退学しており、進学後も学費の負担が課題になっていた。

 加藤学長は「勉学したくてもできない方々の希望に応えたかった。社会的に厳しい状況にある学生が学ぶことは、他の学生にとっても社会の一面を知る機会になる」と意義を強調した。

 奨学生への応募資格は児童養護施設などの推薦があり、4年間の成績が維持できることを高校の校長が推薦する人。2年次以降は年間30単位以上の取得や履修科目の成績が5段階で平均2・5以上を資格継続の条件としている。

 県里親会の當山清彦会長は「里親が里子の進学費用を負担してきたケースが多かった。授業料免除は非常に心強くうれしい。子どもたちの励みになり、里親も自信を持って進学を応援できる」と喜んだ。県児童養護協議会の島袋朝久会長は「進学を希望しても諦める子も多かったので念願の制度だ。沖縄大学に感謝している。子どもたちが夢を持てるよう他大学にも広がってほしい」と望みを託した。(高江洲洋子)

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-204558-storytopic-7.html

こうした制度を維持し、育てていくためには、「学びたい学生を支える」という決意を持ち続けるだけの「心の余裕」が周囲に求められます。

下の記事に炙り出されているような風潮のことを思えば、財政的な問題以上に、そちらの方がカギになってくるでしょう。

問題だらけの“生活保護”報道 民放キャスターは小野文恵アナの爪の垢を飲めっ !
2013年3月10日(日)13:00
文=水島宏明「NEWS WATCHING」

年明けから生活保護に関するニュースが続く。総選挙の結果、「生活保護費の1割削減」を掲げる自民党が政権に就き、厚労省の会議も踏まえて生活保護費は3年間で740億円削減されることが決まったからだ。

TBSテレビ「ニュース23クロス」は1月16日と28日に生活保護費“引き下げ”を特集。不正受給は割合では実際に増えていないのにバッシングが強まる現状や、減額で心配される子どもへの影響を報道した。引き下げ幅が大きい子どもの多い生保世帯や生活保護に連動して、影響を受ける就学援助の対象になる非生保世帯などの当事者に取材していた。この両日は日本テレビ「ニュースZERO」も生活保護を特集し、やはり削減が受生保世帯以外も脅かすことを伝えた。テレビ朝日報道ステーション」も16日に同じ問題を報道。NHKもさまざまな報道番組で報道したが、取材に時間をかけていた「ニュース23クロス」が比較的良かった。

バッシングであおって選挙中はテーマを無視

しかし、なぜ今になって報道するのか。こうなる心配は昨年末の総選挙の前から出ていた。生活保護を選挙公約で扱った政党は多かったのに、選挙報道で生活保護を争点とした全国ニュースは私の知る限りで1つもない。生活保護の基準額は、課税基準など他の分野の基準にもなっている。削減が決定してしまった後に「こんな影響も心配される」と報道するのは無責任だ。

生活保護が削減対象になった最大の理由は、テレビのバッシングによる影響だ。昨年5月の「生活保護バッシング」は、報道として「間違いだらけ」だった。発端となった人気芸人のケースは扶養義務の問題で、不正受給とは違うのに「不正受給疑惑」などと特集する番組が相次いだ。不正受給なら犯罪に匹敵する違法行為だ。違法性がないのに「疑惑」と報じるのは名誉毀損にあたる。

キャンペーンを行ったテレ朝の報道局制作「ワイド!スクランブル」は引用データも間違いだらけ(世帯別累計の合計では100%になるはずが141%に)。司会の寺崎貴司アナ、大下容子アナの前に「生活保護“不正受給”問題の闇」というタイトルテロップが出た後のVTRは「保護費で飲酒した」「パチンコした」という「モラル面のだらしなさ」を強調しただけで、違法行為である不正受給は1つも出てこなかった。「働けるはずなのに保護を受けている友人がいる」という伝聞、ウラ取りしない報道ばかりだった。

同局の「報道ステーションSUNDAY」(5月27日)も、長野智子キャスターが「9割は生活保護が本当に必要な人。残り1割……制度を揺るがすこのようなケースが問題になっています」とコメントし、「生活保護 不正受給“悪質手口”の実態」と大書きしたタイトルを表示。だが不正受給の割合は金額で0.4%、件数で1.8%というのが公表データだ。明らかな誤報だが、訂正はなかった。

想像するに、テレビ関係者がもともと持つ生活保護への偏見・予断を無自覚にたれ流したのだろう。結果として国民の間に制度への不信感を増幅させた。受給者層全体への名誉毀損ははなはだしい。共通して制度を利用する側をほとんど取材していない。社会的弱者の声はほとんど顧みず、政治家やコメンテーターなどの「上から目線」報道が中心だった。

当時「今後も引き続き議論が必要です」などとコメントしたキャスターたちは、生活保護を含めた社会保障改革が争われた選挙期間中はこの問題を扱わず。間違った情報を元にあおっておいて、政権を決める選挙という一番重要な時にまったく報道しなかった。

TBS「情報7daysニュースキャスター」では昨年5月26日、コメンテーターの三雲孝江が「もらい得だと思ってなんとなく不正に受給している人たちが増え続けているのではと……」と発言。安住紳一郎キャスターも「もらえるならもらい続けてやろうと……」と応じた。番組内でそんな実態のVTRが出てきたわけでもなく、唐突に自分の思いこみを披瀝した。前述の長野智子らと一緒で、取材せず、自分の先入観を電波に乗せる。そんな程度なら「ニュースキャスター」などという看板を下ろせと、私は雑誌などで批判した。

民放に比べ丁寧に報道した「週刊ニュース深読み

私は長いこと生活保護を取材・研究対象にしてきたが、生活保護は制度が複雑で、報道関係者でも十分に理解していない人が多い。まして一般人には誤解が多いので、報道では丁寧さが不可欠だ。そんななか1月26日のNHK「週刊ニュース深読み」は、「どうなるセーフティーネット生活保護引き下げ」として43分間かけて丁寧に解説。「不正受給ばかりに目を向けて報道すると制度を必要とする人が受けにくくなること」を、小野文恵アナが十分勉強して伝えていた。

生活保護を受けていると知られると、周囲から「不正受給では?」と疑われる。生活保護費の無駄や不正が大きく報道されるたびに世間が厳しい目を向けるために、困窮しても制度に頼ることをためらう人たちがいる。時々起きる餓死・孤立死の背景だ。必要とする時に利用することが、権利ではなく恥とされる社会の現状。この受給の心理的抵抗が生活保護の「スティグマ」(負の刻印)として専門家から問題視されてきた。必要とする国民全員が受給するならば20兆円かかるとも試算される生活保護費が3兆7000億円で済んでいる現状は、受給者をさげすむ厳しい視線があるからでもある。解説を専門家から聞いた小野文恵アナは困り顔で「そうすると、その金額がかからないように……。私たちがその人たちに対して向けている眼差しが、その歯車の一個になってませんかね?」と自分の眼差しの問題を考えこんだ。生活保護は「あっち」の問題ではなく自分には跳ね返る「こっち」の問題という本質を等身大に語った見事な言葉だった。

当事者を取材せず、偏見や誤報を流したまま今も訂正せず頬被りを続ける長野智子寺崎貴司大下容子安住紳一郎三雲孝江よ。あなたたちに、報道する資格はない。コメントはちゃんと勉強してから行うべきだ。無責任な言葉で傷つく弱者は数多い。人としての自分の責任を深く考えて言葉を発した小野文恵アナの爪の垢を煎じて飲むがよい!

■ライター紹介

みずしま・ひろあき ジャーナリスト。札幌テレビ記者、ロンドン、ベルリン特派員、日本テレビNNNドキュメント」ディレクター・解説委員を経て、2012年4月より現職。生活保護など貧困問題にくわしい。

http://news.goo.ne.jp/article/galac/entertainment/galac-20130308-09.html