いつも月夜に本と酒

2008-02-20 「馬鹿」

とある飛空士への追憶 (ガガガ文庫)

| 17:57

「とある飛空士への追憶」犬村小六(ガガガ文庫

とある飛空士への追憶 (ガガガ文庫 い) (ガガガ文庫 い 2-4)

「美姫を守って単機敵中翔破、1万2千キロ。やれるかね?」レヴァーム皇国の傭兵飛空士シャルルは、そのあまりに荒唐無稽な指令に我が耳を疑う。次期皇妃ファナは「光芒五里に及ぶ」美しさの少女。そのファナと自分のごとき流れ者が、ふたりきりで海上翔破の旅に出る!? ――圧倒的攻撃力の敵国戦闘機群がシャルルとファナのちいさな複座式水上偵察機サンタ・クルスに襲いかかる!  蒼天に積乱雲がたちのぼる夏の洋上にきらめいた、恋と空戦の物語。

王道ボーイミーツガールラピュタ紅の豚を足して2で割ったような世界観。


ガガガ文庫ノベライズ以外はくせ球と変化球しかないのかと思っていたら、ちゃんとしたストレートが投げられたのか! しかもこんな剛速球が!!


とりあえず一言、最高でした!

シャルルとファナ、両方の心理描写が素晴らしい。育った環境ゆえに凍ってしまったファナの心が徐々に溶けていく様や、どんどんファナに惹かれていくシャルルの葛藤が手に取るように分かり、どうしたって感情移入してしまう(自分はファナの方に強く感情移入したけど、どちらでもいけそう)。そして身分や戦争といった現実の前にお互いに気持ちを打ち明けられない二人の姿や、美しくも切ないラストシーンには胸が締め付けられる。中でもファナがラストシーンで呟いた「馬鹿」が重く切ない。こんなに涙腺を刺激する「馬鹿」という言葉は初めて。

もう一つ特筆すべきは空中戦。文章ならではのキャラの心理描写による緊張感と、文章らしからぬスピード感があり、まさに「手に汗握る」臨場感が味わえる。

今のところ今年一番のお気に入り。古き良き時代のジブリ作品が好きな人には是非とも読んでもらいたい作品。


こうなるとこの作者の他作品「レヴィアタンの恋人」も気になるな。買ってこよう。