いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「終末なにしてますか?忙しいですか?救ってもらっていいですか? #04」枯野瑛(角川スニーカー文庫)

終末なにしてますか? 忙しいですか? 救ってもらっていいですか? (4) (角川スニーカー文庫)
終末なにしてますか? 忙しいですか? 救ってもらっていいですか? (4) (角川スニーカー文庫)

妖精兵クトリ・ノタ・セニオリスは消滅し、ヴィレム・クメシュ二位技官は妖精兵ネフレンと共に闇に呑まれた。物語は、終わったはずだった。――しかし。ヴィレムは、見覚えのある部屋で目覚める。「…おとー、さん?」語りかけるのは、すでに亡き存在の娘アルマリア。そして、かつての仲間ナヴルテリが伝える真界再想聖歌隊の真実。それは時の彼方に過ぎ去ったはずの終末の光景――。夜闇の中、新たな“獣”が咆哮を上げる。

“死せる”地上に落ちたはずのヴィレムとネフレンが目覚めえたのは527年前のまだ“生きている”地上で。〈獣〉の正体と真実が明かされる第4巻。
そうか。一巻のラストはそういうことか。
〈獣〉の正体はすぐに分かった。その上で、最愛の少女アルマリアのいる偽りの安寧は、結末を知っているからこそ切なくて胸の苦しくなる物語になっていた。でもこの時はまだ半ば予想通りだったこともあり、その事実を切なさに表現するのが本当に上手いなと客観的に見られる余裕があった。しかし、ラストのこれは……。
涙は出なかった。
オープニングからいきなり厳しい現実を突きつけられてナイグラートに貰い泣きしそうになったけれど、最後のそれはもう、切ないとか悲しいとか普通の形容詞で表現するところを超えてしまったような気がする。一方で微かな希望を見せてから、もう一方で徹底的に突き落とす。とても意地の悪い実に効果的なやり口に作者は鬼かと。
相変わらず幸せな未来を全力で否定してくるシリーズだ。しかし、この先一体誰が救い手になるんだ?