いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「野球が好きだからです」

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170509-00000315-oric-ent


驚き半分やっぱりかと思う気持ち半分。異国迷路のクロワーゼのアニメ化以降活動された形跡がなかったから。
若手の作家さんや漫画家さんの訃報にはこれまでも触れてきたけれど、本気で大好きな作品の方が亡くなるのは幸か不幸か初めてで……これはきついね。そうか、クロワーゼの続きはもう読めないのか……
心よりご冥福をお祈り致します。

「敗者たちの季節」あさのあつこ(角川文庫)

敗者たちの季節 (角川文庫)
敗者たちの季節 (角川文庫)

夏の甲子園地区予選、決勝戦9回の攻防。あと、1人アウトにすれば延長にもつれ込む。と、その瞬間、サヨナラホームランを浴び敗者となった海藤高校の投手直登は、試合後も立ち直れないでいた。そこに、優勝校東祥学園が出場辞退という、意外な報せが届く。「繰り上がりによる甲子園出場」は、どちらのチームにとっても重い結果となって……。少年たちの熱い思いに胸が高鳴る、著者真骨頂の青春野球小説!

夏の地区予選決勝で敗れた海藤高校、不祥事で出場辞退になってしまった東祥学園。二校の“敗者”の心境を、ナインたちはもちろん、家族や彼女、監督やOBなど周りの人々の視点で追った物語。



これはくる。高校野球大好き人間の自分の涙腺に次々と襲いかかってきた。
敗者の物語とあって基本的にどの話でも辛い苦しい胸の内が綴られている。実際に辛い想いをしている球児の心境に共感できるところがあって辛いが、それ以上に周りの大人の視点が泣けてくる。監督のありったけの言葉をかけても最後は選手一人一人が乗り越えるのを見守るしかない状況、元高校球児の記者の陳腐な言葉では書きたくないがどう書いて伝えるかという葛藤、エースの母親の掛ける言葉が見つからない歯痒さ。様々な“もどかしさ”が一番共感できるポイントだった。
また、主役であるところの選手の中では海藤高校キャプテンの尾上くん。
監督や他の選手の視点で分かる野球に直向きで真摯な姿勢。女のエピソードで分かる彼の優しさ。自分が早々に野球を諦めた一人なので、彼のような選手は本当に尊敬する。
それと、意外?と野球をしてたのが良かった。
野球小説は野球外の人間ドラマがメインの話が多いので、試合で始まり試合で終わるこの作品は結構珍しいのではないだろうか。
やっぱり高校野球はドラマになると再認識させてくれた一冊。