いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「ひきこもり姫を歌わせたいっ!」水坂不適合(ガガガ文庫)

ひきこもり姫を歌わせたいっ! (ガガガ文庫)
ひきこもり姫を歌わせたいっ! (ガガガ文庫)

超絶歌下手男子・蒼山礼人。ロックバンドの甲子園での優勝を目指す彼が出会ったのは、魔法の歌声を持つ『ひきこもり姫』・灯坂遙奈だった。過去のトラウマから周囲との交流を避ける彼女に、礼人は諦めずに声をかけ続ける。「灯坂が歌ってくれたら、絶対すげぇライブができる」「……本気で言ってますか?」「本気も本気だけど――俺はさ、人間はなりたいものになれるって思うんだ」。第11回小学館ライトノベル大賞でガガガ賞を受賞! 何者でもない少年少女たちが叫ぶ、不器用だけどまっすぐな青春ロックバンドストーリー開演!!

タイトル通りに不登校少女と音楽で青春する物語。
……なのは間違いないが、予想外に「ひきこもり」がガチだった。ひきこもり姫こと灯坂は強度の対人恐怖症で、親が親なら普通に精神科に通っているレベル。
その姫を社会復帰させるべく、主人公・蒼山が彼女の家に足しげく通い、根気よく付き合い、拙いながらも一生懸命励まし、少しずつ少しずつ外に慣れさせ、ついには一緒にバンド活動するまでの過程が丁寧に描かれる。蒼山くんの好青年ぶりが光る。
それはいいんだが、、、
そんな彼女への一生懸命さに比べると、本題の音楽に対する情熱が今一つ感じられない。
彼なりには真剣なのだろうけど、口にする言葉ほどは音楽にのめり込んでいる感じは受けない。また、主人公が複雑な家庭環境もあって何度か挫折するのだけれど、復活のきっかけはどれも音楽ではなく友情。もちろんそれはそれでいい話ではあるのだが。おまけにライブシーンが淡々としていて、熱気が感じられない。結局のところ「音楽」の表現が残念だったかと。
あと、どうしても気になるのが語彙力の無さ。
主人公はアホの子設定だったので「がんばれ」や「すごい」を連呼するばかりでもキャラ付けとして納得できたが、大人の語彙力の無さは違和感が強い。学生と大人が会話していても、高校生同士で喋ってるみたい。大人たちが主人公を挫折させるシーンが2度あるのだけど、どちらも言葉がストレートすぎる。大人ならもう少し言葉を選ぶだろうに。
ひきこもり少女と親に見放された少年の交流の話として読めば悪くないが、青春×音楽ものとして読むとがっかり感が強い。