いつも月夜に本と酒

2012-04-07

「サクラダリセット7 BOY, GIRL and the STORY of SAGRADA」河野裕(スニーカー文庫)

| 17:48

サクラダリセット7 BOY, GIRL and the STORY of SAGRADA (角川スニーカー文庫)

サクラダリセット7  BOY, GIRL and the STORY of SAGRADA (角川スニーカー文庫)

「私が将来の夢を失くしたのは、貴方に出会ったからよ」能力を失くした相麻菫。「私は貴方を、覚えていません」能力を失くした春埼美空。改変された咲良田で、ケイはひとり、ふたつの記憶――街に能力が存在する本物の記憶と、能力が消滅した偽物の記憶――に直面していた。自らの過去に区切りをつけるため、ケイは初めて咲良田を出て――。複雑でシンプルな、大人のような少年がたったひとつを祈り続ける物語。堂々完結!!


浅井ケイによる咲良田の再生。咲良田の未来を決める最終巻。

ケイは何度「我儘」という言葉を使ったんだろう。その通りだと思う反面、この言葉ではしっくりこないという思いも強く残る。

目の届く範囲を全て救おうとする彼は間違いなく欲張りではあった。やり方だけを見れば綺麗事で独善的とも思える。でも、ケイの目指すものと背負う苦労を目の当たりにするとそんな印象は霧散する。常に自分よりも周りの幸せを考え必要以上の苦労を背負い込むケイの我儘に「我」はあるのだろうか。それに立ち回りは大人以上に器用なのに、目的までの道の選び方はなんでこんなに不器用なんだろう。でも、この不器用さこそがケイのこの物語の魅力なんだろう。

そんなケイが選んだ遠回りの道で少年少女たちが紡いだ物語は、みんなから優しさから感じる温かさ、若者らしい潔癖の尊さ、全てわかっていながらケイを救った相麻菫から感じる切なさ、強くて脆そうな彼らの心から感じる儚さ、色々な感情がまぜこぜになって複雑で不思議な感動だった。

でも最後は、純粋に「嬉しい」だった。

この物語の儚さの象徴だった春埼美空。彼女が盲目ではなく自分の意志で彼を選択し、幸せであったラストは文句のつけようがないハッピーエンド。ケイの一番の目的がここだったからこそ、彼の想いに共感できたんだと思う。

そっと触れても壊れてしまう緻密なガラス細工のような透明感と儚さを併せ持つ独特な雰囲気のシリーズで、最後までそれを保ったまま走りきってくれた。一つの美麗な芸術品を眺めているような作品だった。

素晴らしい物語をありがとございました。

2011-12-08 「最近の私は、こんなにも我儘です」

「サクラダリセット6 BOY,GIRL and ―― 河野裕(角川スニーカー文庫)

| 17:52

サクラダリセット6 BOY、GIRL and ‐‐ (角川スニーカー文庫)

サクラダリセット6  BOY、GIRL and ‐‐ (角川スニーカー文庫)

「これで、最後だから。たぶん、あと数日で、すべて終わる」復活後、姿を見せなかった相麻菫。しばらくぶりの彼女からケイへの連絡は、奇妙なものだった。一つ目は、春埼と一緒に交差点でゴミ拾いをしろというもの。一方、管理局対策室室長・浦地は“咲良田のリセット”――全能力の消失を目論んでいた。彼は未来視能力を持つ二代目魔女・相麻に接触し……。初代魔女が名前を失う前、咲良田の「始まりの一年」が明らかに! 最終章突入!!


綺麗だけれどどこか危なっかしい読み手を惹きつける雰囲気はそのままだが、今回は少し流れ激しい。

それもそのはず、生き返った相麻菫の目的、咲良田の始まり、本当の“サクラダリセット”の意味など色々なことが詰め込まれている。

着実に進んでいく浦地の計画と珍しく後手後手に回っているように見えるケイに焦りを感じつつも、これまでの伏線が綺麗に繋がっている様にある種の感動を覚える。ここまで考えられてのこれまでの物語、それにタイトルだったんだと。そして、ついに明かされる相麻の目的は……予想外に小さく、でも純粋で強い想いに胸が締め付けられる。

そんな激しく動く話の中でもやっぱり一番気になるのは、変化の兆しが見え始めたケイと春埼の関係。

文化祭がきっかけで小さな幸せをようやく掴んだのに最後がこれか。

読んでいるこちらとしても、嘘つきのケイの言葉では信じられなかったものが、中野の言葉と相麻の涙でようやく信じることが出来たところだったのに。

でも、逆転のシナリオは出来ているようで悲壮感がないのが救い。

ケイがどんなやり方で咲良田を元に戻し春埼を救うのか、続きが待ち遠しい。

2011-05-05 「次は子守唄を歌いましょうか?」

「サクラダリセット5 ONE HAND EDEN」河野裕(スニーカー文庫)

| 17:45

サクラダリセット5 ONE HAND EDEN (角川スニーカー文庫)

サクラダリセット5  ONE HAND EDEN (角川スニーカー文庫)

「私を普通の女の子にすることが、貴方に出来る?」復活した相麻菫。ケイは彼女に、咲良田の外に――能力が存在しない世界に移住することを提案する。だがそれが上手くいくのか、彼にも分からなかった。確証を得るため、ケイは管理局の仕事を引き受け、春埼、野ノ尾とともに、九年間眠り続ける女性の「夢の世界」へ入る。そこでケイは、ミチルという少女と青い鳥に出会い――! “咲良田”とは? 能力とは? 物語の核心に迫る第5弾!


今までなんとなしに読んできた「リセット」の四文字が、これほど重いものになるのか。

相麻の目的や管理局のある一人の計画が明るみになる物語としての大きな分岐点であったり、野ノ尾にとってのターニングポイントでもあった5巻。でも、話の中心は一人の少年と二人の少女のどうしようもなく不器用な三角関係。さらに言えば「リセット」の春埼。

今回の春埼はいつにも増して不安定。自分に芽生えた感情に戸惑い揺れ動き、今にも壊れてしまいそうで、泣きたくなる様な緊張感があった。

そんな彼女が悩みに悩んで回り道して、他人に背中を押してもらってようやく掴んだ答えが「リセット」で消される瞬間の喪失感、いたたまれなさは凄かった。思わず「やめろ!」と叫んでしまいそうに。

なので、エピローグで相麻がいじわるで言った真実は救いに思えた。完全に無かったことにはならなかったから。それにその前に言ったケイの一言も。

今回も良かった。いつも通りの澄んだ綺麗な文章にいつもより強い儚さ、この不思議な透明感が好き。

次の話は一月後かそれより前か。文化祭の劇が是非読みたいんだけど、やってくれるかなあ。

arakurearakure 2011/05/06 23:45 カプがいつ落ちるのか、落ちるのかと怯えてる荒呉が通りますよ^^;