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世知辛い日記

2012-02-07

一攫千金〜成功者と犠牲者〜

すごくシンプルに考えると、証券や保険を始めとした金融業って、不思議な商売だ。

私は、知り合いの知り合いというレベルだが、デイトレードで数十億円儲けてしまったという人の本当の話を聞いたことがある。よくテレビで出てくるような、一日中モニターに囲まれて血眼になって取引をしている、あのイメージ通りの人のようだ。
若かりしある日、大勝負を挑んで彼は勝ち、30億を手にしてしまった。元手の30万が大きく化けた。
その後も大きく負けたり勝ったりを繰り返して、莫大な富を築いた今は、あくまでも現状維持につとめた株の売買をしているだけという。

でも、確実に言えることは、彼が30億を手にした裏には、30億分の損を被った人々がいると言うことだ。
誰かの成功は同時に誰かの失敗であり、誰かの得は同時に誰かの損である。
彼の得た30億(+30億)の裏側では30億の損失をした人々がおり(-30億)、両者の合計は常にゼロ「0」なので、これを経済用語で「ゼロサムゲーム」(合計「0」のゲーム)と言うらしい。

株に必勝法があるのかわからないけれど、言えるのは彼のような例は極めて稀な例だということだ。
大きく勝った後に、大きく負けているというのだから、やはり株が「うまい」わけではない。時代の運を味方につけ、勝ちを再び手にしたタイミングで、冷静になれたからこそ今の財を築いているわけである。
彼のようになれない大多数の人々は負けているか、勝っても少しずつに過ぎない。+30億の裏に置かれた「負け仲間」と共に-30億を出し合い、補てんしているだけなのだから。彼のように表側の舞台に立てる人間など、ごく限られているのだ。

保険も不思議な世界だ。
これまた私には、知り合いに生命保険金を次々と手に入れた人を知っている。
こう書くと聞こえは悪いけど、保険をかけた身内が次々と病気で亡くなっていったということだ。
でもこれもまた稀な場合で、多くの人は掛けただけに十分な見返りの保険金を受け取らないまま契約を終えていく。あるデータでは、国内の取り扱い生命保険を調査したところ、リターンされる保険金は、かけた保険料の1/10以下という数字もある。

なので、多くの場合、生命保険で人々は損をする側に立つ。彼女のような身内を次々と亡くす悲劇と引き換えに、巨額の保険金を得ることを決して得とは言えないけれど、大体の人々は彼女の側には立てない。
多くの人々は安心と引き換えに保険料の実に9/10を捨てているのである。

その他、銀行でも、ローンでも、クレジットでも、金融と言うのは信用という幻の土台の上を、人々の射幸心や、不安や、物欲が後押しして成り立つという一面があることを忘れてはいけない。

お金が右(今は不要な人)から左(今入り用な人)に流れることで、利子の分だけ太るという分かりやすい理屈の、本来の「金融」なら分かりやすい。でも、あるところにはあるけど必要なところにない、まさしくお金がうまく融通していない今の金融の世界は、そんな単純なシステムだけで成り立つものではない。

故にプロは、金融工学を駆使して、次々と新しい商品---多少リスキーでも様々な階層の人々にとって魅力的で、利ざやの高い、株式、保険、為替、つわものになるとよりリスキーなデリバティブ、リスキーでしかないようにしか見えない先物取引、賃貸マンション経営投資・・あらゆる金融商品--を提案し続ける。
そうして最初から賭場に立ち入るべきでなかった資力を持つに過ぎない人々が、勝負に負けて人生の破滅を迎えていく。彼らはたまたま賭場で負けたのではない。賭場に迷い込んだ時点で負けていたのだ。

あらゆる金融に対して私は大変懐疑的で、悲観的なのだが、それは私が、自分に「勝負への度胸と根性を持ち合わせていないこと」「捨ててもいい、有り余る稼ぎを得る力はないこと」をよく知っているからだ。
一握りの成功者の話にも時めかない。その裏にどれくらいの犠牲があったのかを、考えてしまうから。

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