今日の産経ニュース&しんぶん赤旗ほか(10/31分)

毎日新聞『カショギ氏事件の背景/下 要人失踪「公然の秘密」 皇太子「なぜ、大騒ぎ」』
https://mainichi.jp/articles/20181031/ddm/007/030/089000c
 立花隆の田中金脈報道時にマスコミ記者がはいたとされる言葉「こんなことは皆知っていた。今更騒ぐことじゃない」を連想させます。もちろん立花記事が多くの人間にとってショックだったように、サウジの一件も多くの人間にはショックでした。
 事情通(要するに田中やムハンマドに近いずぶずぶの人間)が「こんなん俺たちは知っていた。今更騒ぐことじゃない」といっても「そういう、お前らは報じたのかよ。何が知ってただ!。馬鹿いうな!」「報じなきゃわからねえだろうが」つう話です。
 まあ、田中が「立花の報道」で失脚し、三木武夫自民党総裁になったようにムハンマド皇太子も「トルコの暴露」で終わるかもしれません。


【ここから産経と赤旗です】
立憲民主党・枝野*1代表、徴用工判決は「大変遺憾」
https://www.sankei.com/politics/news/181031/plt1810310039-n1.html
 何がどう遺憾なんですかね。韓国に対して失礼ではないのか。ここは安倍との差別化を図り日韓友好をアピールするためにも判決に一定の理解を示すべきではなかったのか。
 立民の政治センスや国際感覚のなさには「改めて」心底呆れます。
 以前から立民なんざ大して評価していませんが、今回の枝野発言には心底呆れます。この間の大山崎町長選挙での「自民との相乗り」もそうですが、「立民はだめだな、話にならないな」としか言い様がないですね。俺的にはやはり「共産、この道しかない」ですね。
 いや「最大野党」ですし、立民がまともなら支持してもいいんですが俺的にまともじゃないから。またいつ解党するかわかんないし。「無責任な解党は絶対にしない」つうだけでも俺的には「共産>絶対に越えられない壁>立憲民主党」ですね。立民には「正直、前原民主党や玉木国民民主党とどれほど違うのか」つう不信感が俺にはある。そういう不信感は俺は共産にはないですから。
 「何があろうと支持者を裏切りはしない」つう安心感は俺的に重要です。そういう意味でも「私利私欲のためなら平気で公約を破り支持者を裏切るであろう(コアな支持層である経団連など以外の支持層は平然と見捨てるであろう)」自民、公明は論外です。
 まあ、立民について言えば「立民の枝野宣伝」が鼻につくつうのも俺的にありますが。「菅氏*2とか辻元氏*3とか」他のメンツの存在感があまりにもなさすぎる。「枝野の私党かよ」「岡田*4代表時代の民進より酷いんじゃねえの?(さすがに前原*5時代の民進党よりはマシだが)」といいたくなりますね。まあ俺みたいな評価が定着しつつあるから、立民の支持率は「誕生時がピーク」でそれ以降上がらないのでしょうが。


赤旗『徴用工問題の公正な解決を求める:韓国の最高裁判決について、志位委員長が見解』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik18/2018-11-02/2018110201_01_1.html

 日韓請求権協定によって、日韓両国間での請求権の問題が解決されたとしても、被害にあった個人の請求権を消滅させることはないということは、日本政府が国会答弁などで公式に繰り返し表明してきたことである。
 たとえば、1991年8月27日の参院予算委員会で、当時の柳井俊二*6外務省条約局長は、日韓請求権協定の第2条で両国間の請求権の問題が「完全かつ最終的に解決」されたとのべていることの意味について、「これは日韓両国が国家として持っている外交保護権を相互に放棄したということ」であり、「個人の請求権そのものを国内法的な意味で消滅させたものではない」と明言している。
 強制連行による被害者の請求権の問題は、中国との関係でも問題になってきたが、2007年4月27日、日本の最高裁は、中国の強制連行被害者が西松建設を相手におこした裁判について、日中共同声明によって「(個人が)裁判上訴求する権能を失った」としながらも、「(個人の)請求権を実体的に消滅させることまでを意味するものではない」と判断し、日本政府や企業による被害の回復にむけた自発的対応を促した。この判決が手掛かりとなって、被害者は西松建設との和解を成立させ、西松建設は謝罪し、和解金が支払われた。
 たとえ国家間で請求権の問題が解決されたとしても、個人の請求権を消滅させることはない――このことは、日本政府自身が繰り返し言明してきたことであり、日本の最高裁判決でも明示されてきたことである。
(中略)
 日本政府と該当企業が、過去の植民地支配と侵略戦争への真摯(しんし)で痛切な反省を基礎にし、この問題の公正な解決方向を見いだす努力を行うことを求める。

 こうした志位氏の発言を高く評価したいと思います。安倍はもちろん「安倍ほど極右ではないとはいえ、判決に否定的な」枝野とは大きな違いです。


■【主張】「徴用工」賠償命令 抗議だけでは済まされぬ
https://www.sankei.com/column/news/181031/clm1810310002-n1.html
 なんか産経の言い分にデジャブ感があるなと思ったんですが今わかりました。
 光華寮訴訟・中国敗訴判決での中国の言い分「この判決は日中平和友好条約に違反してる」「日本政府は日中友好のため適切な対応*7をとるべきだ」に似てるんだと。あのとき自民党政権は「我が国は三権分立だから裁判所判決には何もできない」と言い訳しました。
 とはいえその後の最高裁の政治的忖度ぶり(上告を20年も塩漬けにした上、20年後の判決が事実上の台湾敗訴)を見るに裏では自民党が何か政治工作をしたのでしょうが。
 いや俺はこの光華寮訴訟の件については「まあ、さすがに積極的にそういう政治の司法への介入を支持したくないんだけどさ。例えば自民に忖度した朝鮮学校への不当判決にはマジで切れてるし(例はもちろん原発訴訟でも何でもいい)。でもこの件は仕方ねえじゃん。中国ビジネスは日本経済にとって非常に大事よ。台湾なんか比べものになんないくらい大事よ。今回に限っては必要悪よ(善とは言わない)。まあ『上告を20年も塩漬けにすんのは不自然』つう状況証拠しかないから最高裁自民党に『政治判決の証拠があるのか!(←そりゃお前らは密室談合だろうだから、内部告発でもない限り、証拠なんか出せるわけねえだろ。砂川判決の田中最高裁長官と米国大使の密談すら、米国から面会記録が出ても事実無根と居直ってるじゃん)』『本当に20年、審理に時間がかかっただけの話だ(←そんなわけねえだろ!。他の訴訟でそんなんあるか!)』と居直られると、そもそも打つ手ないけど」と思いますね。
 まあそういうこというと、「産経界隈のウヨ連中(櫻井よしこなど)」はもちろん例のMukkeさんとか阿部治平とかI濱女史とか「手前、中国の犬か!」とマジギレでしょうが、俺はそういう「中国ビジネス重視」の考えです。
 まあ「明らかに判決が不当」な「朝鮮学校問題」と違い「中国勝訴判決」が「明らかに間違いとは言えない」というのも最高裁支持理由ではありますが。判決が出るに至った経緯(どう見ても政治的忖度)はともかく中国勝訴判決自体は法的に必ずしも不当なものとはいえません。
 「中国との国交樹立、台湾との国交断絶」がこの訴訟にどう影響するかについては「国際法の難しい知識が必要」ですし、俺の理解では「台湾勝訴と中国勝訴、どちらが適切か」について今のところ通説的見解はないかと思います(そもそもこんな事態はあまり発生するもんでもないですが)。しかも光華寮が廃墟と化したことで裁判判決にもはや実質的意味はほとんどなくなりました。もはや「日中、日台間系における」政治的意味しか事実上ありません。
 いずれにせよ「光華寮訴訟最高裁判決・中国が事実上の勝訴、台湾が事実上の敗訴*8(ちなみに当時は第一次安倍内閣)」の件だけでもわかることですが、「自民は一部の極右議員を除き」、ビジネス的な意味で「中国>絶対に越えられない壁>台湾」のわけです。中国と台湾の経済規模の違いを考えれば当たり前ですが。だから最近、台湾との国交断絶、中国との国交樹立も相次いでいる。
 ああいう「台湾との国交断絶」事態を予想しなかったのか、「反中国の支持層」にこびて「私は馬英九前総統とは違う」とばかりに無意味に中国にけんかを売った蔡英文も論外のバカです。
 それはともかく「文在寅*9政権が裁判所に政治的圧力をかけた」という動かぬ証拠でもあるのならともかく、文政権だって「光華寮訴訟・中国敗訴判決での自民と同じいいわけ」と同じ言い訳「三権分立だから私には何もできない」というだけでしょうよ。そして産経は光華寮訴訟の時は「中国は一党独裁だからか、三権分立がわかってないのか。司法への行政介入を求めるなんて非常識だ」なんて言ってたわけです。
 その理屈だと「今回の産経」は「司法への行政介入を求めるなんて三権分立がわかってない」ことにならないのか。
 全く産経って過去の自分の主張との整合性をどう考えてるんですかね。バカで屑だから、何も考えてないんでしょうけど。
 なお、この光華寮訴訟ほど「証拠はないけど明らかに最高裁の動きって日中関係に配慮してるよな。政治に忖度してるのはモロバレだよな」つうもんもないでしょう。

参考

https://www.mofa.go.jp/mofaj/press/kaiken/hodokan/hodo0703.html#7-B
(問)
 最高裁判決で、本日、光華寮受け渡し訴訟で、二審の差し戻し判決が下され、事実上台湾側の敗訴という形になったのですが、この判決を受けての率直な感想と、温家宝国務院総理の来日を控えた関係もあったのかなという考えもあるのですが、その辺も含めてお願いします。
(外務省報道官)
 光華寮を巡る最高裁の判断が今日示されたということは承知しています。ただ、光華寮裁判自体は、政府が関与していない民事訴訟の裁判ですので、行政府の立場から今回の判断について特にコメントすることはありません。あくまでも法律上の問題として、裁判所の判断をそれとして受け止めているということです。

https://mixi.jp/view_bbs.pl?comm_id=1967620&id=16670739
■小島朋之*10・慶応大教授(現代中国論)
「原告としての台湾の正当性を全面否定するもので、現実の国家関係、外交関係を司法の側も受け入れることを真正面から打ち出した、ある意味当然で、素直な判断だと思う。昨年10月に安倍首相が訪中したのに続き、今年4月には温家宝首相が、中国首脳として7年ぶりに来日するなど、日中関係は具体的に前進している。そうした政治的環境が、司法における政治的判断を可能にさせたと言えるだろう」
田中則夫*11龍谷大教授(国際法
「地裁、高裁はこれまで4度の判決で、台湾当局に訴訟当事者としての資格があることを前提に、光華寮の所有権を中国と台湾のどちらが引き継いだかという難問に答えようとしてきたが、最高裁は台湾が訴訟を継続する資格を認めなかった。こんなに簡単で明瞭(めいりょう)な判断ができるなら、最高裁で20年もかける必要があったのか。中国が国際社会で存在感を増していることへの政治的な配慮も感じられる」

http://www.21ccs.jp/soso/chtenten/chtenten_16_01.html
■光華寮裁判について(竹内実*12
 わたしはわたしなりに自分の考えを整理し、日本の裁判所がいう、かつての「留学生寮は外交的な建物ではない」とする判断はまちがいではないかと思うにいたった。
 当時の日中関係のなかでは、留学生は国家から選抜(せんばつ)されてきており、たんなる民間の留学生とはいいきれない。留学生寮も民間の寄宿舎と同じではない。
 実態(じったい)に即(そく)して考慮する必要があるのではないか。

http://www.21ccs.jp/soso/chtenten/chtenten_18.html
■光華寮裁判について(その3)(竹内実)
 この商取引はたんなる商取引とはいえず、光華寮は外交機関に準ずる性格があったと考えるにいたった。そのころの留学生は、私費留学もいたかもしれないが、国家から派遣されてきたという身分をもっていたのが、ほとんどだったとおもう。それで京都大学がわざわざ光華寮を設置、管理したのである。中華人民共和国の成立とともにこの新国家に引渡されてしかるべきだったのだ。
 光華寮を購入した商取引の一方の当事者は中華民国の外交機関である。国家を代表する性格をもっている「日中共同声明」は、それまでの「日華条約」をふくめて、中国にかんする国際条約を破棄するものであるから、この段階で取引は無効になるべきだった。
 「共同声明」の深刻な意味に、自分が気づいていなかったことに、わたしは気づいた。
 最高裁がさしもどしたのは、当然のことだった。1972年(昭和47)10月の「共同声明」から35年ちかくを経過していることを考えると、「声明」が、ひとびとによってなっとくされるまでには、時間がかかったことをかんじる。わたしは中国研究者として、もっと積極的に「声明」を考えるべきだった。

https://yoshiko-sakurai.jp/2007/05/03/583
三権分立を放棄するのか最高裁櫻井よしこ
・3月27日の最高裁第3小法廷で藤田宙靖(ふじたときやす)裁判長らが下した判断は、司法が政治を慮り、その影響を受けたのか、或いは特定のイデオロギーに染まったのかと疑わざるを得ないものだった。
京都地裁は先の訴訟に関して、77年、光華寮の所有権は台湾から中華人民共和国に移転されたとの判断を示した。敗訴した台湾側は控訴し、大阪高裁は台湾の主張を認めて審理を京都地裁に差し戻した。その結果、京都地裁は、逆転判決で台湾の所有権を認め、大阪高裁も87年、同様に台湾の所有権を認めた。ところが、光華寮に定住した大陸系の中国人寮生が同件を最高裁に上告したのだ。これが87年、今から20年も前のことだ。以来、最高裁は光華寮問題を塩漬けにしてきた。事態が突然、動き始めたのは今年1月22日だった。
 民主党衆議院議員長島昭久*13は、この事案には極めて不透明な要素がつきまとうと指摘した。
「調査してみると、20年間放置された事自体、他に例がないのです。上告審は現在、平均数カ月で判断が示されますから、20年間の塩漬けが如何に異常かがわかります。にもかかわらず、今年1月22日に突然、審理が開始されたと思ったら、中国側、台湾側の双方に、3月9日までに各々の立場を釈明せよというのです。この裁判についての人々の記憶が消え去るほど長く放置したあと、わずかひと月半で釈明せよと命じる性急さ。裏にどんな事情があるのか、司法は納得のいく説明をしなければならないはずです」
 台北駐日経済文化代表処の許世楷代表も指摘する。
「突如、最高裁の審理が始まり、ひと月半で裁判所の質問に答えよという命令です。20年の間に担当弁護士は80代90代の高齢になりました。書類を精査する時間もいります。そこで私たちは回答期限の延長を求めましたが、却下されました。そして、3月27日、最高裁はこれまでの判決を覆し、台湾には光華寮の所有権はない*14としたのです。余りに政治的な判断ではないでしょうか」
 長島氏も指摘する。
「1月22日に最高裁が動き出した途端、25日には中国外務省副報道局長の姜瑜氏が定例記者会見で、光華寮事件は民事訴訟ではなく政治案件だと発言したのです。3月27日に最高裁判決が出ると、直後に中国の国営新華社通信が至急電で『日本の最高裁判断は、台湾当局は訴訟権を持たない*15と認定し、事件を一審の京都地裁に差し戻した』と高らかに勝利宣言を行いました。
 また、今回の判決はまさに中国側の訴訟代理人の回答書の理屈そのものによって成り立っています」
 訴訟当事者の一方の側の論理を重用したからといって、判決が偏っているとは、必ずしも言えない。だが、光華寮事件を中国側が「政治案件」ととらえるなか、今回の判決は最高裁が中国の影響を受け、中国側に偏ったと思わざるを得ない要素は多い。そもそも光華寮の所有権を中国側に認める*16のには大きな問題がある。
・今回の最高裁判決は、日本政府が政治・外交の場で、知恵を働かせて練り上げた定義を、司法がいとも易々と飛び越えて、中国側の主張に与したことになる。司法は国際法や国際条約を、最も誠実に適用しなければならないはずで、それらを越えて、一方的判断を下すことは許されない。有体に言えば、中国政府の意を迎えるような偏った判断は大いに問題だということだ。

https://www.kyoto-np.co.jp/top/article/20180419000014
京都新聞『廃墟、元留学生寮の内部に 京都、「二つの中国」問題象徴』
 老朽化が進むが無人で、近隣住民から崩落などを懸念する声がある京都市左京区北白川西町の元中国人留学生寮「光華寮」に、京都市が立ち入り調査していたことが18日までに分かった。京都市空き家の活用・適正管理条例に基づき本来は市が所有者に改善を指導できるが、「二つの中国」と日本をめぐる外交問題の象徴となってきた「光華寮訴訟」が半世紀以上続き、京都地裁で「塩漬け」状態のため所有者は宙に浮いている。指導相手が未定のまま、市は今年1月に初めて調査に踏み切った。
 光華寮は1932年建築で鉄筋コンクリート造り5階建て。戦争末期に日本政府の指示で各地の中国人留学生が入居した。戦後、中国共産党との内戦に敗れた国民党政府の台湾(中華民国)が購入した。72年に日本が台湾と国交断絶したため、提訴から半世紀を経た今も所有権をめぐる訴訟が京都地裁で係争中。
 裁判で所有者は確定していないが、中国政府を支持する「京都華僑総会」(左京区)が実質的に管理してきた。不審者対策で塀を設置、落下しそうな窓ガラスやアンテナは撤去した。元寮生の同会関係者(72)は「近隣住民の命が何より大事。地震で倒れる恐れもあり心配」と危ぶむ。
 京都市の空き家条例は、管理不全状態解消のため市が所有者を指導できると定める。2015年には空き家対策特措法も施行された。管理が行き届かない空き家に自治体が建築基準法により行政代執行した例もあるが、デリケートな外交問題だけに市は慎重な姿勢だ。
 調査は今年1月に技術職員が建物内に入った。コンクリートがはがれ、鉄筋がむきだしの箇所も確認したという。市まち再生・創造推進室は「裁判の結果が出ないと指導の相手が決まらない」としながらも、「見るからに危険な状態。どういうことができるのか考えたい」と対応を模索する。

■光華寮訴訟(ウィキペディア参照)
 京都府京都市左京区に所在する、台湾人や中国人の留学生寮学生寮)である「光華寮」の所有権の争いをめぐって日本の裁判所に提起された民事裁判である。日中間、日台間の外交問題に発展したことから、光華寮事件、光華寮問題とも呼ばれる。
 提訴から最高裁判決が出るまで40年、上告から20年経過し、現在、日本の裁判所に係属する最も古い民事訴訟とされる。
■概要
 光華寮は、戦前の京都帝国大学が中国人留学生のために賃借した学生寮を、1950年ころ、中華民国駐日代表団(日華平和条約発効後は中華民国駐日大使館)が購入したものである。1965年ころ、文化大革命をめぐって寮生間に対立が発生し、中華民国(台湾)当局が、寮の管理に問題が生じたとして、1967年9月6日、中国人留学生の寮生8名を被告として、立退き(土地・建物の明渡し)を求める訴えを京都地方裁判所に提起した。訴え提起時の訴状は、原告の表示を「中華民国」、原告の代表者を「中華民国駐日本国特命全権大使」と表示していた。
 第1審途中の1972年9月29日、日中共同声明により、日本が中華民国(台湾)との国交を断絶し、中華人民共和国を「中国の唯一の合法政府」として承認したことから、国際法上の争点が浮上した。
■争点
 中華民国(台湾)は、日中共同声明による政府承認切り替え後も、日本の裁判所において当事者能力(一般論としての、原告として民事訴訟を起こす資格)を有するのか、あるいは、本件訴訟における当事者適格(一般論ではなく、具体論としてこの訴訟において原告となる資格)を有するのか。
 光華寮の所有権は、政府承認切り替えによって影響を受けるのか(所有権は中華人民共和国政府に移転するのか、中華民国(台湾)政府に帰属したままか)
 裁判は、第1審(台湾敗訴)→控訴審(原判決破棄差戻し、台湾勝訴)→差戻し後第1審(台湾勝訴)→差戻し後控訴審(台湾勝訴)→上告審と経過する。
 下級審の4つの判決は、いずれも第1の争点を肯定し(差戻し後控訴審判決は、当事者を「台湾」と表示)、第2の争点については第1審以外の3つの判決すべてが政府承認切り替えは所有権に影響を与えない、つまり中華民国政府に帰属したままであるという判断を示した。
 最高裁判所は、上告審を長年塩漬け状態にしていたが、2007年に入って突如として審理を再開し、2007年3月27日、上告から20年ぶりに判決を出した。最高裁は、本件訴訟の原告は「中国国家」であるとの判断を示した上で、日中共同声明によって原告当事者が中華人民共和国に移った時点で訴訟手続は中断し、訴訟承継の手続をすべきだったという理由から、35年前に立ち戻って訴訟承継させ、第1審から審理をやり直すよう命じる判決をする(原判決を破棄し、第1審判決を取り消して、第1審の京都地裁に差し戻した)。
 つまり最高裁判決は台湾の「当事者能力」または「当事者適格」を否定した判決と一般には理解されている。
■光華寮の現況
 管理は、中華人民共和国在大阪総領事館の委託を受け、京都華僑総会が行う。 しかし、現在は閉鎖され、窓硝子も割れ、廃墟の様相を呈しつつある。
■経過
■1966年(昭和41年):
 中華人民共和国文化大革命が始まる。寮生のなかで、文革を支持する者としない者の間で対立が発生する。
■1967年(昭和42年)9月:
 中華民国政府が、寮を占有する中国人留学生に対し立ち退きを求めて提訴(京都地裁)。訴状には、原告「中華民国」、原告代表者「中華民国駐日本国特命全権大使」と表示。
■1972年(昭和47年)9月29日:
 日中共同声明に調印、日中国交正常化。これにより、日本は、中華民国との国交を断絶し、中華人民共和国を「中国の唯一の合法政府」として承認した。同声明第3項で、日本政府は、「台湾が中華人民共和国の領土の不可分の一部である」との「中華人民共和国の立場」を「理解し、尊重」する、と記された。
 日中共同声明による政府承認の切り替え後、原告は原告代表者の表示を「中華民国財政部国有財産局長」に変更。
■1977年(昭和52年)9月16日:
 第1審(京都地裁)は、台湾敗訴。
 判決は、中華民国の当事者能力を肯定したが、日本政府が中華人民共和国政府を唯一の合法政府と承認した以上、「中国」の公有財産である光華寮の所有権も中華人民共和国に移転するとして、原告(中華民国)の請求を棄却した。
■1978年(昭和53年)8月12日:
 日中平和友好条約に調印。
■1982年(昭和57年)4月14日:
 控訴審(大阪高裁)は、台湾勝訴。
 判決は、政府承認の有無と当事者能力とは別の問題であるとして、原告の当事者能力を肯定したうえで、光華寮は国家機能に直接かかわる財産ではないから、政府承認の切り替えによって中華民国が取得した光華寮の所有権が消滅することはないとして、原判決を破棄、第1審に差し戻した。
■1986年(昭和61年)2月4日:
 差戻し後第1審(京都地裁)は、台湾勝訴。
 判決は、原告の当事者適格を認めたうえで、外交にかかわる財産や国家権力を行使するための財産は新政府(中国政府)に引き継がれるが、外交や国家権力の行使と無関係な財産については、旧政府(台湾政府)が引き続き所有権を維持するとして、原告(中華民国)の請求を認容した。
■1987年(昭和62年)2月26日:
 差戻し後控訴審(大阪高裁)は、台湾勝訴。
 判決は、原告の当事者適格を認めたうえで、おおむね原判決を踏襲し、光華寮は新政府に引き継がれるべき性質をもたない財産であるとして、控訴棄却。なお、大阪高裁は、この判決を出すにあたり、職権で、原告の表記を「台湾(本訴提起時 中華民国)」と改めた。
 この頃、柳谷謙介外務事務次官が、トウ小平*17・国家中央軍事委員会主席について「雲の上の人になったようで、下からの意見が届かないようだ」と評したことで中国政府の抗議を受け辞任。
 中国人寮生側は上告し、上告代理人は200頁以上に上る上告趣意書を最高裁に提出。その後、約20年間審理がストップした。
■2007年(平成19年)1月22日:
 最高裁判所は突如として「訴訟の原告である中国を代表する権限を持つ政府は、中華人民共和国中華民国のどちらであるか」について上告人(被告・中国人寮生側)と被上告人(原告・中華民国側)の双方に意見を求め、意見書の提出期限を同年3月9日と定めた。これに対し、被上告人(台湾側)が期間が短すぎるとして期限の延長を要請したが、最高裁は拒否。結局、双方とも期限までに意見書を提出した。
・寮生側の回答
日中共同声明によって、日本が承認する中国の政府は中華民国政府から中華人民共和国政府になったので、中国を代表する地位を失った台湾は訴訟の当事者となることはできない」
中華民国(台湾)側の回答
中華人民共和国政府はいまだかつて台湾を支配した事実もなく、中華民国が取得した財産が中華人民共和国の所有となり、同国が訴訟追行権者となることは法理上あり得ないことである」
■2007年(平成19年)1月25日:
 中華人民共和国の外務省報道官が定例会見で「光華寮問題は一般の民事訴訟ではなく、中国政府の合法的権益と、中日関係の基本原則に関わる政治案件だ。中国政府はこれに高度な関心を寄せている。日本側が、中日共同声明の原則に照らし、問題を適切に処理することを希望する。」との見解を発表。
■2007年(平成19年)3月9日:
 中華民国(台湾)外交部が、「本案は中国方面から日本へ恫喝や圧力があったとしても、日本の司法は独立しており、日本の最高裁判所が最終的に公平で公正な判決を下すことを深く信じている」との声明を発表。
■2007年(平成19年)3月27日:
 上告審判決(最高裁第三小法廷、藤田宙靖*18裁判長)は、破棄差戻しで台湾の事実上の敗訴。
 判決は、本件訴訟の原告は「国家としての中国(中国国家)」であるとした上で、日本政府が日中共同声明により「中国国家」の政府として中華人民共和国政府を承認したことなどから、中華民国はもはや本件訴訟の原告当事者ではなく、中華民国駐日本国特命全権大使は「中国国家」の代表権を失っていると指摘。政府承認切り替え時点(第1審審理中)で訴訟手続は中断しており、その後の下級審の審理・判決は中断事由を看過してなされた違法無効なものであるとして、(中華人民共和国に)訴訟承継させてから審理をやり直すべきであるとして、原判決(差戻し後控訴審判決)を破棄、第1審(京都地裁)に差し戻した。
 最高裁判決は台湾の「当事者能力」または「当事者適格」を否定した「事実上の台湾敗訴」判決と一般には理解されている。
 光華寮の所有権の帰属については、最高裁は何ら判断を示さなかった。なお、最高裁は、本判決を出すにあたって、職権で、被上告人の表示につき「旧中華民国 現中華人民共和国」という肩書きを添えて「被上告人 中国」と記載した。
 この最高裁判決は「台湾の事実上の敗訴」として大きく報道された。
 小田滋*19(光華寮訴訟台湾側弁護団団長(つまり台湾ロビー)、元国際司法裁判所判事)は朝日新聞で「これほど重要な問題で最高裁が上告以来20年も放置してきた上、大法廷で審理することもなく、小法廷が一人の少数意見もなく、全員一致の判決を出したということは驚くべきことでした。しかも温家宝*20・中国首相の訪日にあわせるかのように充分な審理もつくさずに判決を出したことに、私は最高裁の節操を疑いました」と批判した。
■2007年(平成19年)4月2日:
 中華民国(台湾)の黄志芳外交部長は、日本の対台湾窓口機関、財団法人交流協会台北事務所の池田維*21代表を呼び、最高裁判決について「台湾としてまったく受け入れられず、極めて遺憾だ」と抗議した。
■2007年(平成19年)4月3日:
 被上告人(原告・台湾)代理人弁護団(小田滋ら)が都内で記者会見を開き、「国際法上の知識及び歴史上の事実認識への理解を全く欠如した内容に、驚きを禁じえない」などとする非難声明を発表。元国際司法裁判所判事の小田は、「きわめて残念であり、司法のためにも誠に遺憾である」と表明、意見書提出期限の延期を最高裁に拒否されたことに関連して「(上告から)20年近く放置された事件について、なぜこのように急ぐのか」「何らかの政治的配慮があったのではないかと、邪推もしたくなる」と痛烈に非難した。

https://ameblo.jp/spacelaw/entry-10858913389.html
■小田滋元国際司法裁判所判事と裁判官の良心
・小田滋さんは,日本を代表する国際法学者です。1976年2月から,2003年2月まで,3期27年間にわたり,オランダのハーグにある国際司法裁判所の判事を務められました。国際司法裁判所の判事に就任される前までは,東北大学国際法の研究をされていた方です。
・そのような小田滋さんが,国際司法裁判所の判事として関わられた事件で,私個人として最も印象的なものの一つが,核兵器使用の合法性事件です(1996年)。
・審理の結果,1996年7月に出された国際司法裁判所の勧告的意見は,核兵器の使用は一般的には国際法の規則に反するけれども,国家の存亡にかかわる自衛の極限状態においては,この使用が合法か違法かを確定的に判断することができない,というものでした。
・その裁判所としての多数意見に反対する立場の裁判官には,2つの立場がありました。
 まず Weeramantry 判事のように,核兵器の使用を完全に違法であるとする立場です(同判事は,120頁を超える反対意見を書かれました)。
 もう1つの立場が小田滋判事の立場でした。それは,このような問題に国際司法裁判所が意見を与えるべきではない,という立場だったのです。
・世界で唯一の被爆国である日本の,15名の国際司法裁判所の判事の中で当時唯一の日本人判事だった小田判事の意見は,当然評議の場でも注目されていたそうです。
 日本から多くの関係者や報道関係者も裁判に駆けつけ,当然日本人である小田判事は,核兵器の使用は違法であるという立場に立つのだろう,と思う人が多かったようです。
 でも,小田判事はその立場を採らなかったのです。

 小田がどう言い訳しようと「小田なんか日本政府が送り込んだ判事でしかも台湾ロビー(相当の右)じゃん。当人がどう言い訳しようが結論ありきだろ」としか思いませんね。
 俺から、すれば「意外」どころか「そりゃ『核兵器の違法性を否定する』米国のポチ・自民党が送り込んだ判事なんだからそうなるだろ。意外でも何でもない。むしろ違法だと判断したらその方が意外だ」「佐川が森友で偽証すんのと同じだろ」ですね。正直、このブログ主のように「被爆国の判事という立場を脇に置いて信念を貫いて立派」という話では全然ない。むしろ「ああ、また自民と自民の親分様・米国への忖度か。お前、法律家として恥ずかしくないの?。切腹でもして死んだら?」つう話です。
 まあ、小田に「俺が自民党に忖度した、結論ありきの証拠があるのか」と居直られれば「判決前に日本政府関係者と密談していた」などの状況証拠でもない限り、いかに小田の判決がでたらめで無茶苦茶*22でも「結論ありき」と証明はできませんが、まあ、それ光華寮訴訟で最高裁に「政治判決だという証拠があるのか」と居直られたらどうにもならないのと似たような話でしかありません。

*1:鳩山内閣行政刷新担当相、菅内閣官房長官、野田内閣経産相民主党幹事長(海江田、岡田代表時代)、民進党代表代行(前原代表時代)などを経て立憲民主党代表

*2:社民連副代表、新党さきがけ政調会長、橋本内閣厚生相、鳩山内閣副総理・財務相などを経て首相。現在立憲民主党最高顧問。

*3:社民党政策審議会長、国対委員長鳩山内閣国交副大臣民主党政調副会長、役員室長、民進党幹事長代行、立憲民主党政調会長などを経て現在、立憲民主党国対委員長

*4:鳩山、菅内閣外相、民主党幹事長(菅代表時代)、野田内閣副総理・行革相、民主党代表代行(海江田代表時代)を経て民主党代表。現在、無所属の会代表

*5:鳩山内閣国交相菅内閣外相、民主党政調会長(野田代表時代)、野田内閣国家戦略担当相、民進党代表など歴任

*6:駐米大使、外務事務次官など歴任

*7:判決がどうこうではなく「光華寮の土地を中国に移転登記しろ」つうことかもしれませんが(そうであるならば司法介入という問題は生じません)。ただ係争中の土地でそういうこともできないか?

*8:「事実上の中国勝訴(台湾敗訴)」というのは「裁判手続きに問題があったからやり直せ」とされただけで中国の所有権が認められたわけではないとはいえ、台湾勝訴判決が最高裁でひっくり返されて一審に差し戻されたあげく、この状況では「いつ裁判が終わるかわからない(あげく光華寮が廃墟と化してるため取り壊されて更地になり、裁判所が判断しないまま裁判終了になりかねない)」という台湾にとって踏んだり蹴ったりの結果になったからです。すでに1967年の提訴から50年以上が経過しています。

*9:盧武鉉政権大統領秘書室長、「共に民主党」代表を経て大統領

*10:著書『模索する中国:改革と開放の軌跡』(1989年、岩波新書)、『中国現代史』(1999年、中公新書)など

*11:著書『国際海洋法の現代的形成』(2015年、東信堂

*12:著書『日本人にとっての中国像』(1992年、岩波同時代ライブラリー)、『毛沢東』(2005年、岩波新書)、『コオロギと革命の中国』(2008年、PHP新書)、『中国という世界』(2009年、岩波新書)、『さまよえる孔子、よみがえる論語』(2011年、朝日選書)など

*13:鳩山、菅内閣防衛大臣政務官、野田内閣防衛副大臣希望の党政調会長を歴任

*14:すでに別途、指摘しましたが最高裁は「民事訴訟法上の当事者能力や当事者適格」を問題にしてるのであり、所有権については判断していません。

*15:「所有権の問題」ではなく「訴訟権の問題(民事訴訟法上の当事者能力や当事者適格の問題)」と正しく認識してるあたりはさすが政府機関と言うべきでしょうか。

*16:「繰り返しますが」すでに別途、指摘しましたが最高裁は「民事訴訟法上の当事者能力や当事者適格」を問題にしてるのであり、所有権については判断していません。

*17:副首相、党副主席、人民解放軍総参謀長などを経て党中央軍事委員会主席、国家中央軍事委員会主席

*18:学者出身判事(行政法学者)。東北大学名誉教授。日野「君が代」伴奏拒否訴訟(市立小学校の音楽教諭が、入学式において「君が代」斉唱のピアノ伴奏を行うことを校長から職務命令され拒否したが、この職務命令は憲法第19条に違反するか。)で反対意見(違憲)を書いたことでわかるようにリベラル寄りの立場。著書『西ドイツの土地法と日本の土地法』(1988年、創文社)、『行政法学の思考形式(増補版)』(2002年、木鐸社)、『行政組織法』、『行政法の基礎理論(上)(下)』(以上、2005年、有斐閣)、『最高裁回想録:学者判事の七年半』(2012年、有斐閣)、『行政法総論』(2013年、青林書院)、『行政法入門(第7版)』(2016年、有斐閣)、『裁判と法律学:「最高裁回想録」補遺』(2016年、有斐閣)など(ウィキペディア藤田宙靖」参照)。

*19:東北大学名誉教授(国際法学者)。著書『国際法と共に歩んだ六〇年:学者として裁判官として』(2009年、東信堂)、『堀内・小田家三代百年の台湾(増補版):台湾の医事・衛生を軸として』(2010年、近代文芸社)、『回想の海洋法』(2012年、東信堂)、『国際法の現場から』(2013年、ミネルヴァ書房)、『回想の法学研究』(2015年、東信堂)など

*20:党中央弁公庁主任、副首相などを経て首相(党中央政治局常務委員兼務)

*21:外務省アジア局長、官房長、オランダ大使、ブラジル大使、交流協会台北事務所代表(駐台湾大使に相当)を歴任。著書『激動のアジア外交とともに:外交官の証言』(2016年、中央公論新社)など

*22:このあたり俺は国際法に無知なので論評できませんが