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漂流する身体。 このページをアンテナに追加 RSSフィード

2006-10-08

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[]ファミレスで格差を思う。

 日曜日、早朝に起きて、餓死寸前の自分に気づく。土曜の昼から飯を食っていない。しかし、こんな朝っぱらから、この飢えを満たせる程ごってり食える店は、さしもの麻布十番でもそうは無い。思念を巡らせた結果、そういえば、こんなリズムの乱れた生活を学生時代はよくしていたなと思い出し、ふと、学生時代の味が懐かしくなってファミレスに行って見ることにした。と言っても、齢30にして舌は肥え太っている。これまでの5年間は、ファストフードの類や、カップラーメンなど、かつては食べれたジャンクフードに別れを告げる時間だった。安いファミレスに行くと、数年前に久しぶりにエースコックの1.5倍カップラーメンを食べて、その後4時間の余、吐き気に苦しんだのと同じ目に合わないと限らない。ロイヤルホストやデニーズのレベルなら大丈夫なのは数ヶ月前に確認している。さすがに、ファミレスの中ではまともなこの辺を食べれへんとか言ってたら、世の良識ある人からシバかれるであろう。

 なんとなくMBOした事もあり、すかいらーくグループに狙いを定めたが、そんな理由で安いガストは避けることにした。そこそこのレベルは何かと見回すと、すかいらーくガーデンズに目が止まり、いそいそと車を出して早朝の御茶ノ水に向かった。すかいらーくガーデンズは、僕が大学生の頃はすかいらーくの上位ブランドとして、それなりの店数があったやに記憶するが、いまやウェブサイトを見る限り僅かに4店を数えるのみであり、それもイタリアンレストランに衣替えをしている。単なる値段の高い安いというセグメンテーションでは客が来ない時代になったのだろう。カプリチョーザや五右衛門のポジショニングをよく研究したのか、上はエノテカ・ピンキオーリとかリストランテ・アソが聳えるイタリアンというカテゴリーに位置づけて、出す料理は同じでも、単なるファミレスに来たんじゃない、という精神的な満足感をベーシックな舌を持つマスの顧客に提供する。レストランも小難しいビジネスになったものである。

 早朝のすかいらーくガーデンズの中は、大学生と思しきグループが幾つか、という客構成である。夕方はイタリアン・ダイニングを、深夜早朝はファミレスに戻って、だべり時間を提供し、24時間場所を稼動させているのだろう。思えば、僕も大学の頃は時間と若さを持て余し、寂しさから逃れる為だけに、朝までただ喋るだけという、無駄な時間を過ごしたものだ。時間が貴重な今では、なんと勿体無かったかと思ったりもするが、当時では絶対に実感の出来ない思いであるし、その時間の積み重ねの中でも、当時は成長を実感していた事を思うと、20歳前後という年頃は、時間を有効に使うかというより、ひたすら時間を消費する事で成長する時代だったのかも知れない。孤独に耐えられない年頃でもある。この群れる若者たちは、いつの時代も変わらない風景なのだろう。

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[SHARP 904SH 70mm F4.0]

  • 六本木ヒルズと仲秋の名月。夜明けの東京は美しい。携帯のカメラはダイナミックレンジが狭いので、こういう明るい月みたいな被写体は白トビしてしまう。兎の餅つきまでシャープに写ったら最高なのだが、残念だ。

 さて、そんな回顧的な事を思いつつメニューを見ると、これが薄い。なんと時間帯的にモーニングメニューのみの提供とのこと。餓鬼と化した僕の食欲を満たす、ごってりとしたトマトシチュー煮込みハンバーグとか、そういうイメージは翼が生えて飛び去っていった。どうするか。席を立つか。だが、せっかく皇居の反対側まで来たのだ。致し方あるまい。席を立たずに、この朝マックと大差ないもので満足しようでは無いか。

 という訳で、オムレツとソーセージとサラダとライス、という極めてプレーンな料理をさささと平らげる羽目になり、特に余韻を味わう様な代物でも無いので、食べ終わるとそそくさと立ち去った。別に不味くは無いのだが、こんなものなら自分でも作れる。きっと家にある新潟産コシヒカリをコシヒカリ専用と言われるサンヨーの圧力釜で炊いて、有機卵でオムレツを作った方が旨かろう。ただ、いいソーセージは、日進ハムが持つ日進ワールドデリカテッセンか、仙台勝山館謹製の品を扱う大丸ピーコックが開くまで待たねばならぬ。

 極めて不満足で御茶ノ水の街に戻ると、ふともう一食腹に入れてやろうという餓鬼の欲望がむらむらと立ち上がり、そのままロッテリアに入ってしまった。ロッテリアなんてのも10年ぶり位かもしれない。7年ほど前にマクドナルドで、もはやビックマックとかを受け付けない体になったのを確認して以来、ファストフードの店は避けている。フレッシュネスバーガーで何とか、という感じである。かなりリスクを感じながらも、ソーセージエッグマフィンの様なものを頼んでみた。

 率直に言って、驚いたのはフレンチフライである。これは相当旨い。ホクホクでかつ、コクがある。こんな旨いフレンチフライを食べたのは、それこそ日本では初めてかもしれない。僕は、フレンチフライが正直嫌いで、セットについてくるフレンチフライを食べきった事が無いのだが、このロッテリアのフレンチフライは、油もしつこくなくて美味しいので、がつがつと食べきってしまった。かつて大学時代にびっくりドンキーでアルバイトをしていて、一日何個もフレンチフライを揚げていたが、北海道出自の企業にしては、馬鈴薯の質は悪く、我ながら食えた代物ではなかった。その時から11年。ファストフードでもこれだけのフレンチフライを出す時代になったのか、とふと感慨に耽ってしまった。ただ、ご本尊のソーセージエッグマフィンは昔と変わらない人工的な味で、思わず天を仰いだのだが。こちらは半分も食べれなかった。

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[SHARP 904SH 35mm F2.8]

  • これが噂のフレンチフライ。ぼってりと厚いのがまたいい。

 久しぶりにファストフードの店に行ったが、母親が子供にご飯を食べさせているのを見た。日曜の朝からファストフードである。僕が育った頃には見られなかった光景だと思う。ファストフードやファミレスというのは、普段行かないだけに、外人の洪水の麻布十番、サラリーマンの洪水の赤坂の往復生活では見られない発見がある。半年位前までは、ゴルフに熱中していた事もあって、深夜ゴルフの練習に県境のゴルフ場まで行っていた。ゴルフの練習は意外にアスレティックなものなので、たいてい小腹が空くものである。そんな時は、帰り際に近くのロイヤルホストやフラカッソといったファミレスに寄って、軽くお腹にものを入れていたのだが、深夜1時2時なのに子供は走り回り、親らしき人物は放ったらかしで携帯で誰かと話している、という様な光景によく遭遇した。東京の郊外の貧しさをふと感じる瞬間だ。

 時代の差、地域の差もあるのだろうが、自分の生まれ育った地元で郊外の人と言えば、農家であり、そこには厳格で伝統的な躾が残っていた。何より、子供というのはこういう風に教育するもの、という常識がまだある程度共有されていた時代である。また、良い教育が、より良い将来の生活を約束していた時代でもあった。格差の問題がこの所クローズアップされるが、かつて共有されていたものが薄れ、中流として総称されていた集団がバラけて来ているのは事実なのだろう。また、そのバラつきは固定化される方向に向かっているのかも知れない。

 より良い教育が、より良い生活を保証しなくなったのか、その事を人々が信じなくなったのか、或いは知っていても実践しなくなったのか、どれが原因なのだろうか。僕はアメリカの移民を見ても、日本の現状を考えても、依然として教育の程度が将来の豊かさを左右する極めて大きなファクターだと信じているが、これが正しいのなら、なぜ人々はそれを信じなくなったのか、或いは実行に移さなくなったのか。うまくは言えないが、ここに深刻な心の荒廃がある気がしてならないし、放置すれば、アメリカのゲーティッドシティとか、フランスの若者の暴動とか、他の先進国の出来事が他人事で無くなるのも時間の問題だろう。

 知識社会、グローバル資本主義、フラット化する世界。これらの現在進行中の事象がもたらす社会の変化に対して、人類はまだうまい付き合い方を発明していない。この社会の変化は、基本的に労働市場トランザクションコストを引き下げる方に働くものであり、トランザクションコストが下がって労働市場の完全市場性が強まれば、必然的に格差は拡大する。格差がすなわち悪だとは思わないが、格差の存在が活力を生むか、絶望を生むかは、政策がトライすべき領域だ。新首相の再チャレンジというのもこの文脈に沿ったものだとは思うが、これが社会の変化へのうまい付き合い方の発明になるのかどうか、僕は政策領域の幅の観点で少々物足りない。労働市場が今問題になっているし、そこが主戦場なのは間違いないのだが、ことは何十年に一度の革命的な社会の変化が対象である。税制、文化、教育、国土開発。様々な観点から、この歴史の変容は分析され、政策が立案されるべきだと僕は思う。実のところ、ここに挙げた一つ一つについて思うところは有るのだが、書き出すと、この5倍位になりそうなので、今日は割愛することにする。

 同じ深夜早朝のファミレスながら、都心の変わらない若者の姿と、郊外の荒廃した親子の姿を見て、全く違うことを思う。考えてみれば、ファミレスというのは、極めて多様な人間を受け入れる、懐の深いビジネスなのかも知れない。

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