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漂流する身体。 このページをアンテナに追加 RSSフィード

2010-10-21

[]インフレ懸念はバランスシート調整と共に消えゆく

 最近ネタ元はTwitterばっかりだけれども、クルーグマンの"Just call him Bernanke-sama"という記事を紹介して下さった方が居た。そこに載っていたグラフが、大変インプレッシブだったので、久しぶりに金融ネタに回帰してみることにする。

○日米CPI推移

・元記事:Just Call Him Bernanke-sama /New York Times

 このグラフそのものが、何かの確定した未来を予言するものでは無いけれども、考える材料は提供してくれる。日本のバブルと米国のバブルを重ね合わせて、Core CPIを見ると、概ね同じ動きを示しており、バブルの生成と崩壊のペースは似通っている。確実に言えるのは、大まかなペースがこれまで一緒だったということだけだ。一方で、日本はバブル崩壊後、ずっとデフレ圧力を受けてCPIは低迷を続けたが、米国は果たして、というのが今後のポイントである。

 約1年前のエントリでこんな事を書いた。

○2009-11-30/ドバイ・ショック

 日本では企業が過剰債務を負って、その解消にバブル崩壊後15年を要したが、米国ではGDPの中の最大セクターである個人が住宅過剰債務を負っている。特効薬が無いだけに個人のキャッシュフローが債務の返済から消費に回るには、多くの時間を要しても不思議では無い。もう少しシンプルに言えば、日本ではゼロ金利政策によって、貯蓄主体である個人から借入主体である銀行と企業にフローを移して、バランスシート不況を癒したが、米国ではゼロ金利政策が借入主体である個人にリーチしないので、より金融政策的には辛い状況なのである。

 この見立てはそんなに外れていなかったと思う。エントリ末尾の短期円高・中期円安見込みはちょっと自信が無くなってきたが、米国のバランスシート不況が長期化するという予想は1年前よりは強くなってきたのでは無いだろうか。そう考えると、クルーグマンが示唆する通り、日本型のデフレが継続し、更にCPIが下がるというのは十分有り得る展開である。

 それで、このクルーグマンのグラフに拠れば、2010年10月という「米国の現在」は、日本で言えば、1995年4月位という事の様だ。はて、1995年4月の日本はどうだったかと言うと、地下鉄サリン事件の直後という事だが、金融市場的には、この日本の15.5年前のイールドカーブと米国の現在のイールドカーブを比較してみると面白い結果が得られる。

○日米イールドカーブ比較

f:id:bohemian_style:20101021130625p:image

 T-Bondのイールドカーブも随分と下がったなと思っていたが、既に15.5年前の日本の水準よりも遙かに低下していた。アメリカの方が日本の教訓を学んでいて、早めの低金利誘導をした効果という事だろう。その割に上記のCPIの低下っぷりが日本と変わらないのは、バランスシート調整型デフレに対する金融政策の限界を示しているのかもしれない。

 グラフには、15.5年前の赤線に続いて、その後2年ごとの日本のイールドカーブをプロットしているが、13.5年前、つまり1997年4月のイールドカーブで大凡日本と米国の水準は同じくらいになり、その2年後の山一・北拓・長銀の破綻など金融危機を経た1999年4月には日本の金利は大幅にブルフラットニングして、低下しきっている。ここに至って、ようやくバブルから目が本当に覚めて、インフレ期待が雲散霧消したという事なのだろう。

 僕は市場に関するお仕事を離れて久しいから、ここからは何とも素人意見になってしまうけれども、今の米国のイールドカーブは日本の90年代後半のイールドカーブと比べても傾きがかなりスティープだから、足元はデフレだけれども、インフレ懸念を相当織り込んでいる様に思える。既に金融危機を経た米国は、これから金融危機を迎える97年の日本ほど、イールドカーブがブルフラットニングしないという考え方もあるし、これだけお金をバラまけばいつインフレが起きてもおかしくないという懸念は一理ある。ただ一方で、米国のバランスシート調整が小口分散して、金融政策が効きにくい個人セクターで起きていることから、日本よりデフレが長期化・深刻化するという考え方も十分有り得ると思う。僕は、どちらかと言えば後者の考え方がしっくり来る。米国も日本と同じ道を辿ってCPIは低下し続け、長期金利はインフレ懸念の後退と共に低下していく可能性の方が高いのでは無いだろうか。

 我らが同盟国よ、東アジアの安寧の為にもしっかりしてくれ、と思うものの、一回バランスシート不況に入っちゃうと打てる手が余り無いのは、日本人だからよく判っている事でもある。時間を掛けて調整を進める他ないし、その時間を短くするのは、本源的には成長の実現しか有り得ないのだ。日本は、結局2000年代に入って、円安を奇貨として輸出を伸ばし、バランスシート不況から一旦は脱出した。一方の米国はイノベーションによって内生的な成長が実現できるのだろうか。それとも、やはり通貨安が薬となるのだろうか。諸々考えると僕は悲観論に転じる。基軸通貨国が資金じゃぶじゃぶで通貨安傾向というのは、また世界のどこにバブルが起きるのか、そんな所も気にしたい繋がりである。

資金不足主体資金不足主体 2010/10/23 01:19 単純な疑問なのですが、
>>日本では企業が過剰債務を負って、その解消にバブル崩壊後15年を要した
と書かれているのですが、日銀が発表している資金循環の資料
http://www.boj.or.jp/type/stat/boj_stat/sj/sjexp.pdf
の9ページ?部門別の資金過不足の推移、では98年以降一貫して非金融法人部門は資金余剰主体となっています。
この資料からは過剰債務とは思えないのですが、、、勘違いでしょうか?

wasting time?wasting time? 2010/10/30 19:31 主な借り入れ主体は政府。企業も個人もお金があっても投資先がない。先進国の行き詰まりのような状況がこれから欧米でも見られてくるのかというのがポイントじゃないでしょうか。
しかし、デフレそのものがなんでそこまで悪といわれるのかがわからない。デフレは結果であって原因ではないと思う

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