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漂流する身体。 このページをアンテナに追加 RSSフィード

2013-05-31

[]東京の梅雨に傘は余り要らない。

雨は秋の方が降る

 早くも梅雨入りだそうである。個人的には、この季節にニチレイレディースという女子ゴルフのトーナメントが有って、以前このトーナメントをホストしていた美浦ゴルフクラブのメンバーの友人が、トーナメント前後の難しいセッティングでのゴルフによく誘ってくれていたので、梅雨と言うとそれを思い出す。そして、その時雨が降った記憶は、無い。

 梅雨というと、鬱陶しい雨ばかりの季節という印象が強い。しかし、関東地域について言えば、実は梅雨は年間で最も雨が降る時期という訳では無い。美浦というのは競馬のトレセンで有名だが、場所的には茨城県は霞ヶ浦のすぐ南であり、気象庁の観測ポイントでは竜ヶ崎が近い。なので、竜ヶ崎の月別降水量と日照時間、及び一日10mm以上の降水を本降りと定義して、その日数を見てみよう。

○竜ヶ崎市の降水量

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 見ての通り、最も降水量が多いのは9月と10月の約185mmであり、6月は3位の145mmである。本降りの日は9月と10月と同じく5日間。一方で日照時間は最も少ない月となる。これが示唆するのは、霞ヶ浦の南において、梅雨たる6月の一年の中での特徴とは、日が差さない曇りの日が一年で最も多く、かつ本降りの日数は9-10月と変わらないが、その時の雨量が9-10月ほど凄くない月という事だ。9月や10月の本降りの日というのは、台風が理由だろうから、この結論は自然である。上にゴルフの事を書いたが、屋外で遊ぶ時に影響が出そうな本降りの日で言えば、30日中わずかに5日という事で、9月や10月と同じ位の心持ちで良い。なお、ぽつぽつと降る程度の、1mm以上降った日で言っても12.1日。6月と言えど、傘が不要な日が65%を占めるという事である。少々曇りの日は多いが、家に籠もらず、9月や10月と同じ様に予定を入れて、バンバン外出するべきだ。

土浦。東日本の砂漠。

 それで、首都はどうなのかと言えば、竜ヶ崎の年間降水量が1344mmに対して、東京は1529mm。なので多少雨は増え、かつ9月の日照時間が一番短くなるが、概ねの傾向は同じである。

○東京の降水量

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 なお、日本の平均降水量って大体1700mmという記憶があったので、東京はともかく竜ヶ崎の年間降水量は随分少ない。調べてみると、この辺りは関東でも随一の少雨地帯であり、近隣の土浦の観測値を見ると何と1188mmであった。立派な年間1200mm切りである。蒸発や植物の呼吸によって地表面から大気へ放出される水の最大量を蒸発散位というが、これが関東地域では、大体年間1100mm台とされる。なので、下手すると降水量÷蒸発散位で求められる乾燥指数が1を切るかもしれない。水収支がマイナスに成りかねないという事である。さすがに、0.65を切る乾性半湿潤地、つまりは地理上の定義による乾燥地帯に該当するには及ばないが、夏はいつも渇水している印象のある瀬戸内以外の日本に、乾燥指数1切りの可能性がある地域があるとは思わなかった。極めてどうでもいい、地理オタの興奮をここに記す。

京都人の感覚から生まれた言葉

 こういった余談はともかく、一年で最も雨が降る訳でも無い6月が、なぜ新暦では梅雨、旧暦では五月雨と、英訳されればrainy seasonとなる、雨の季節の代名詞とセットとなったのだろうか。僕はこれには日本の東西の地域性が関連していると睨んでいる。京都の降水量、日照時間及び本降り日数を見てみよう。

○京都の降水量

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 京都は関東と違って、6-7月が最多降水量を記録する月であり、その雨量は竜ヶ崎の実に1.5倍である。そして本降り日数も梅雨の季節が一年で最も多く、また日照時間は短い。西日本の太平洋側は概ねこういう傾向にある。名古屋はまだ東京型で秋の降水量が梅雨より多いが、関ヶ原辺りを境に顕著に梅雨の降水量が多くなり、九州になると6-7月の降水量は300mmに迫り、竜ヶ崎の倍である。東日本で一番雨が降るのは秋である一方、西日本ではそれは梅雨なのである。平将門が考える梅雨と、藤原純友が考える梅雨はかなり違うのだ。

 梅雨や五月雨という、初夏の長雨を指す言葉がいつ生まれたかは知らない。でも、こんな歌がある所からして、日本の中心が西日本だった時代に産まれたのは確実である。

たまぼこの みち行人の ことづても 絶えてほどふる さみだれの空 (新古今和歌集藤原定家

"旅人に託される恋人からの言伝も絶えて久しい。長く降り続く五月雨の空よ。"

 梅雨や五月雨という言葉は、旧暦5月・新暦6月に長雨が続く京都を中心とした西日本に住んでいた人の身体性、感覚から生まれ、日本語として定着したのだろう。それが必ずしも6月に最も雨が降るのではない東京に首都が移ってからも、この言葉は使われ続け、それによって何となく関東の人も、雨の季節と言えば梅雨だと思い続けているのだと思う。こういう例は他にもきっとあるのだろう。標準語と言えど、日本語の多くは京都の感覚を豊潤に含み続けているのかもしれない。

関東の雨は主に房総に降る。

 最後に蛇足ながら、関東随一の少雨地域が土浦だとすれば、関東随一の多雨地域はどこかと言えば、南房総である。上総牛久の辺りで年間1636mm、大多喜に至っては2237mmと土浦の倍である。大多喜は東京の梅雨の降水量が3月から11月迄ずっと続く感じである。あの辺りの山間部は密林感満載で、おそらく東京に一番近いライステラス(大山千枚田)がある事もあって、妙にモンスーンアジア感がしていたのだが、その印象は豊富な雨量が支えていたのかと得心した。

 この地域の最近のビッグニュースと言えば、圏央道の木更津東から東金までの開通である。圏央道の中で、一番交通量が見込めない路線で、そこより神奈川地区の東名から横浜都市高速までの接続や、常磐道と東関道の接続の方が遙かに優先順位は上だと思うが、何故かそれらの重要路線を抑えての今年の開通となった。この影響により、近隣のゴルフ場の会員権の販売が好調の様だそうだ。上総牛久と言えばロッテ皆吉台CCや鶴舞CC、大多喜なら大多喜城GCや房総CCの辺りだ。しかし、交通の便はともかく、降水量の観点では、関東で一番ハンデがある地域という事にはなる。ゴルフ場の会員権買うのに、気象庁のウェブサイトや理科年表を開く人は、ごく限られた精鋭だとは思うが、雨が嫌なら、鶴舞や大多喜城の会員権を売り、土浦からつくばのコース、例えば富士OGM出島コースや豊里GC辺りを買いのペアトレードを推奨する。

 日本は東西に長いので、何となく多様性に乏しい国民と国土の様な気がするけれど、注意深く見れば、直線距離で100kmも無い土浦と南房総で、降水量が倍の変動がある。そのお陰で、岩と一体化した珍しい笠森観音を囲む天然記念物の照葉樹林や、鴨川は黒滝に向かう鬱蒼としたジャングルトレッキングとかが成立しているのである。そう考えれば、冬場に捲き起こる霞ヶ浦低地の土埃にも、これこそ東日本の砂漠の証であると、一興を感じられる事だろう。

○大多喜の降水量

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※日照時間はデータ無し。なお、はてなダイアリーの、今週のお題が「梅雨」だそうである。

笠森観音のエントリ→○2006-10-07 最適の日帰り紀行