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2014

2010.06.18.金

志人「君は太陽(demo)」(『ジレンマの角EP』特典CD収録)リリック

先日発売されたTemple Ats降神志人の新作EP『ジレンマの角』。特典CD(temple store限定?)に収録された「君は太陽(demo)」が余りにも素晴らしく、「帰り道」を彷彿させる美しい曲だったので、リリックを文字起こしてみた。『ジレンマの角EP』収録の3曲については歌詞カード付属のため割愛。誤りはご了承を。

「君は太陽(demo)」produced by DJDOLBEE


君は太陽 さぁ 行(生)きなさいと母の声がする

行(生)きたい様に行(生)きたまえ 生き長らえよと 父は笑うよ

君は太陽 さぁ 行(生)きなさいと母の声がする 行(生)きたい様に行(生)きたまえ

生き長らえろと 父は笑う


ランランと輝く太陽 燦々降り注ぐ大地 淡々と流れ来る河に 感嘆の溜息が

散々降った通り雨 ウォンウォン ずぶ濡れの野良が カーカー 夕暮れの空に

母さんの名を呼べば ほら 

何千何万憎しみを超えて優しさを宿し きつく抱き寄せて傷口を塞ぎ 慈しみ運び美しい場所に

曲がる日傾き 風向き変わり気 丸いお月さん 遠くにある太陽と

仲良く肩組み 地平に佇み 眩い陽射しがなんとも言えずに

カンカンカンカン 遮断機踏切 スタタンタタン 列車は行過ぎ

父ちゃん 指切りげんまん カランカタン 並んだランドセル


7月7日 笹の葉に掛けた 短冊に寄せた想いの思いの丈は

早く母さんの病気がよくなりますようにと 闇は素通り

浜梨の花咲く道端に 甘夏の香りは儚くも 

雨雲が去り 虹かかりほら 淡くも散りゆく真夏の空

花火がきれいに見えるのは 乾いた心にたった今の悲しさが綻び

そのときこの星 驚き轟き まん丸な玉響の歯痒さが分かるから


迷える者に道を照らし 限りあるところに光を差し伸べ

持てないものは何一つ持たず 拝む神すらもおらぬ人をももてなし

例えるならば誰もが皆 謎めく宇宙を往く旅人なのかもねむと

血の通える兄弟達よ 仮にこう思えるのだとしたら


君は太陽 さぁ 行(生)きなさいと母の声がする 行(生)きたい様に行(生)きたまえ

生き残れと耳許で父の声

君は太陽 さぁ 行(生)きなさいと母の声がする 行(生)きたい様に行(生)きたまえ

生き長らえろと 父は笑う


ランランと輝く太陽 燦々降り注ぐ大地 淡々と流れ来る河に 感嘆の溜息が漏れる

何千何万憎しみを超えて優しさを宿し きつく抱き寄せて傷口を塞ぎ 慈しみ運び美しい場所に

曲がる日傾き 風向き変わり気 丸いお月さん 遠くにある太陽と

仲良く肩組み 地平に佇み 明るい陽射しがなんとも言えずに


母さんのお腹の中にいたころ 君はすでに太陽だったよ

父さんや祖父さんや祖母さんに じっと見守られながら

君が地球に生まれてきた日 それは太陽が生まれた日

君が地球に生まれてきた日 それは太陽が生まれた日だよ


迷える者に道を照らし 限りあるところに光を差し伸べ

持てないものは何一つ持たず 拝む神すらもおらぬ人をももてなし

例えるならば誰もが皆 謎めく宇宙を往く旅人なのかもねむと

血の通える兄弟達よ 仮にこう思えるのだとしたら


君が地球に生まれてきた日 それは太陽が生まれた日

君が地球に生まれてきた日 それは太陽が生まれた日だよ

ということで、志人は00年代から極めて一貫した形で、ある種の現状を肯定出来得るよう、アシストする力強い歌をうたってきた。それは「世界/セカイ」自体の肯定に向かうよりはむしろ、この「死にやすい」社会の中で(同世代/同時代を生きる)若者/人々(「1982 kids」)に対して「あなたのいない世界は世界とは呼べない」(「Bad Boyz Be Ambitious」)、つまり「(死ぬな)生きろ。」(糸井重里もののけ姫』)と愚直に「発破」をかけてきたのである。それ故、「君」の「生」、即ち「君の生」に連なる父、母、祖母、祖母などの家族(「円都家族」)が、ある時期以降の志人のリリックにしばしば登場することは自然であろう。これを、素朴な家族主義への「急旋回」としてどのように受け止めるかは人それぞれであるが、少なくとも「死ぬな、生きろ」と志人自身もまた大量の血を流しながら歌をうたい続けてきたことは推察できる。00年代中期に登場した「ヌーヴェル・ヴァーグ」な「日本語ラップ」(「Homebrew's」コンピレーション)の潮流の一つが独自の発展を遂げて、00年代後期を生き抜き、2010年にここに辿り着いたということは、現在の主流の日本語ラップとの距離感を含めて強く心を惹かれるものがある。全くの憶測(邪推)でしかないけれども、1982年生まれ(サカキバラ、ネオ麦茶、宇治学習塾女児殺害事件、加藤智大、「キレる17歳」)00年代初頭に成人を迎えた彼の周りで、「余りに容易く人(友)が死ぬ」という厳然のリアリティに直面したのではないか(少なくとも私はそうであった)。そして、それは「偶然/事故的に死す」というよりも、何か言葉に出来ない時代や社会のオブセッシブな「空気」によって「死を掴まえて/捕まえられてしまう人」の「苦み(にがみ)」を敏感に察知してしまったのではないか。「ネオリベ」だとか「自己責任」、「小泉政権」だとか言う耳障りのいい言葉(それらの批判的言説を投げかける「真剣なacitivist」を私は尊敬しているけれども)ではなく、「獏たる違和感」、「時代閉塞の現状」(啄木)としか言いようもない何かについてである。何だかんだ降神の1stからずっと志人を聴き続けて(追い続けて)いるが私にはどうしてもそう思えてならない。ところで、先ほど00年代中頃に登場した「新しい日本語ラップ」の潮流のひとつを先導してきたと言ってもいい志人が、ある時期以降、シーンの中心から離脱し「独自」の表現を追求してきたと書いた。しばしば、「(現代の)日本語ラップは(四畳半)フォークと近似している」と言われているが、私はその指摘をそれなりに正しいと思う。60〜70年代のフォークシンガーの少なくない一部が現在に至るまで、(当時の)所謂「フォーク」では概括することのできない「独自の」活動の歩みを積み重ねてきていること。その代表的なアーティストのひとりとして私たちは三上寛を知っている。あるいは早川義夫や加川良、遠藤賢司でもいいかもしれない。フォークについては余り詳しくないのでこれ以上書くと墓穴を掘りそうだが、かつて日本語ラップの中心(爆心地)へ宣戦布告をしかけた(とも言える)、志人が現在「周縁」で密かに、そして凄まじい強度を持って実践しているいくつかのこと。今の日本のサブカルチャーにはそういう「君」もいることを記しておく。


[作品情報]

f:id:bokosu:20100618083423j:image

志人 × DJ DOLBEE「ジレンマの角 EP 〜Horn's of a Dilemma EP〜」

2010年 TempleATS企画「アナログレコードよ永遠に回れ 〜失われて行くメディアに焦点を当てたTempleATS 企画第3弾:国内生産編〜」

制作協力会社:国内随一のレコードプレス会社 "東洋化成"

明晰夢〜Lucid Dream〜」志人 × DJ DOLBEEのCDアルバムからの先行アナログカット「ジレンマの角 EP 〜Horn's of a Dilemma EP〜」12インチアナログレコードの登場!!!!


「ジレンマの角 EP 〜Horn's of a Dilemma〜」

作詞:志人 作曲:DJ DOLBEE

ここにまた新たな"脳で読む文学音楽"が完成した。志人自身の悪夢の様な実体験から生まれた「ジレンマの角」は強烈でいて圧巻の一言。Heaven`s恋文から更に深化し卓越した志人のフローは最早映画を見ているかの様なスリルと臨場感を与える。国家権力に囚われの身となった主人公(思想犯)の逮捕の瞬間から死刑執行に至るまでの複雑に入り組んだ心情を描く前代未聞の超危険な問題作。ジレンマの角では志人は、囚人、医者、警察官、裁判官、看守、死刑執行人、ガーゴイルなどに扮し一人7役に挑戦。現在世界で問題視されている死刑制度と照らし合わせてみても非常に興味深い内容となっている。国家権力とは何か? アナーキーとは何か? 野蛮思想に犯されているのはどちらなのか? 人殺しはどちらか? 

互い意見を相容れない相互不可侵への介入が招いた人格否定の悲劇。屠殺場と化した刑務所内で主人公は生き延びることは出来るのか? 発禁覚悟で挑んだ実験的音像は最早オリジナルパンクの根底の精神を現代に注ぎ込むかの様である。DJ DOLBEEによるPOPさゼロのドアングラトラックに志人のRAPがぶち切れたとくればもう本作品のヤバさは伝わって来るのではなかろうか? コアなunderground hip hop headzも唸らせるMasterPieceに仕上がっている。こちらは脳で観る映画と言っても過言ではないだろう。ジレンマの角は良夢ではなく確実に「悪夢」です。人の心に不思議に作用する危険な作品です。うなされない様に気を付けよう! 表面の絵画はお子様の目の届かない所に置いた方が良いかも知れない。

ジレンマの角とは... ※2つの選択肢がともに受け入れ難いことを比喩的に表現して「ジレンマの角(つの)」と言うことがある(角は2つで、とがっていて不愉快なことから)。                    

ライター:アナーキーアナライザー

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「今此処〜Here Now〜」

作詞:志人 作曲:DJ DOLBEE

昨年、岡田昭憲氏(V.T.R)をはじめとする名古屋のクリエーター達と見事に映像化された「今此処〜Here Now〜」では、志人が志虫と名前を代え「無私・無死・虫」の世界に挑んだ超大作。クジラやネズミ、カメムシナメクジや蝶、ネムノキや名月、朱雀、孔雀、カマドウマ、モグラ、蟻、カナリア、ハチドリ、ショウジョウバエなどに扮し、「今、此処」という永遠の時間軸を「無私」の世界観で見事に描く。脳で読む絵本の様な内容。 

"この変拍子のBeatをしっかりと乗りこなし、物語を紡げるラッパーは志人以外で見当たらない。" by DJ DOLBEE

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「夢境〜Mukyo〜」

作詞:志人 作曲:DJ DOLBEE

「夢境」では、志人はショーウィンドー越しのマネキンに扮して、客観的に人間世界を皮肉りながらも命の崇高さと素晴らしさを説く。「皆が違って皆が良い」そんな違いを認め合うかけがえのない命達を志人は”誇らしい友達"と説く。本作品(夢境)は、NHK企画 「five 〜夢の波紋〜」にて岡田昭憲氏(V.T.R)によりアニメーション化され今夏オンエア予定。NHK側から禁止用語指定されたワードもきちんと収録されたオリジナルバージョンを収録。

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ジャケットの絵画は問答無用、国を越えて評価を集める画家:戸田真樹氏の作品。いい知れぬ念が込められた本絵画はトラウマ級のジャケットの為にお取り扱いは十分にご注意下さいませ。

※尚、本作品は数量限定生産の為、お早めにご予約下さいませ。



〜Horn's of a Dilemma side〜

1.明晰夢 ~Lucid Dream~  

 produced by DJ DOLBEE

2.ジレンマの角 ~Horn's of a Dilemma~  

 produced by DJ DOLBEE lyrics by sibitt (templeats)

3.ジレンマの角 inst ~Horn's of a Dilemma inst~

 produced by DJ DOLBEE


〜Here Now side〜

1.今此処 ~Here Now~  

 produced by DJ DOLBEE lyrics by 志虫/sibitt

2.夢境 ~Mukyo~

 produced by DJ DOLBEE lyrics by sibitt

3.ハルシオン ~Halcion~

 produced by DJ DOLBEE