耐えられない重さ
日本では夏になると、戦争をテーマにしたドキュメンタリーが流れます。敗戦を象徴する映像は、原爆のキノコ雲か、皇居前に額ずく人々。同じ枢軸国でも、ドイツの場合。たぶん、ベルリンのブランデンブルク門とおぼしき門上に掲げられたハーケンクロイツが、一瞬で爆破される映像。
では、イタリアは? ムッソリーニはパルチザンに処刑され、愛人と共に、逆さ吊りされた写真が有名ですね。もしかしたら、歴史の教科書にも載っていたかもしれないです。
映画「ムッソリーニを愛した女 愛の勝利を」を、見ました。「その人」かと思って。でも、違いました。
第一次大戦後、社会主義者として政治活動を始めたムッソリーニ。当然、当局から追われ、助けたのが映画の主人公イーダ、そして男の子を出産する。
やがて、彼はファシスト党を結成し、国民の支持を集めて、旭日のごとく権力の階段を上っていく。でも、妻子がいたんです。
イーダは烈しく燃え、怒り、「私の子は、統帥(ドーチェ)の子です」と訴える。そして、精神病院に収監される。入れ替わり立ち替わり、「主張を取り下げれば、ここから出られる」と誘うが、どうして彼女が真実を曲げようか?
ここで、僕は思いました。男が、冤罪ながら「認めてしまう」のは、弱いからではないか? 女の強さって、こういうところにあるんだよなぁ。ましてや、我が子のアイデンティティに関わることになると、不動の態度に出る。
ところどころに、ムッソリーニのドキュメンタリー映像が挟まれます。権力を掌中にしていく実感があるので、彼は得意満面。時代がかったポーズは、無声映画を見ているようでした。
そして、ラストシーン。
敗戦し、風景は荒廃し、巨大なドーチェ像は「圧縮」される。ベロッキオ監督も、小林正樹監督と同じ「あの戦争は、何だったのか?」と、男の愚かさを告発しているんです。そして、そんな彼でも愛しているイーダを描く。
ベロッキオ監督は、極左組織の「赤い旅団」が1978年当時のモーロ首相を誘拐した事件を扱った「夜よ、こんにちは」で名を挙げた人です。
★さて、今夜も「音だっち」ツネツネのYou Tube攻撃w。3本送ってきました。仕事も充実しているから、遊びも楽しいでしょう。
・本日のおすすめは、ジャジーにいきましょう。菊池成孔です。この方も僕の大好きなミュージシャンです。
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