中山昌亮『泣く侍』3巻
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- 作者: 中山昌亮
- 出版社/メーカー: リイド社
- 発売日: 2008/06/30
- メディア: コミック
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蟻助ら旅芸人一座の助力を得て幕府隠密・梟の罠を切り抜けた惣次郎。だが、梟は惣次郎への執着で復讐鬼と化した伊藤清之進を取り込み、さらに蟻助と因縁浅からぬ風鬼・雷鬼の二人の忍をも利用し蟻助らに挑む――
より一層怨念が募って狂剣士となってしまった清之進に加えて、こちらも怨念で心がぶっ壊れてしまっている風鬼・雷鬼。敵方にあまりにも濃い狂気と憎悪が渦まいております。過去の因縁が長い時間の中で凝って怨念に代わり、ぐるぐると絡みついて、風・雷の二人の姿を取って現在に襲いかかって来ます。
この3巻ではこの風雷と蟻助の因縁が中心に物語が進み、主役が惣次郎から蟻助に一旦移ったような感さえあり。
壊れたものの空疎な明るさで殺しを行う風雷の二人。これが年がいっているだけにより凄みがあり、重く暗く狂っている清之進と対比をなしていて画的にも面白く描かれております。
その双子を相手に過去の殺しを生業としていた過去の貌と、今の鯛芸人の座長として子供達を連れる今の貌を行き来する蟻助。彼の葛藤と決断が見所であります。
時代モノのお約束を抑えつつも、濃い情念を孕んで展開する物語と演出は読み応え十二分。
あ、そういえば、この3巻では惣次郎は泣いていませんな。