大場つぐみ/小畑健『バクマン。』1巻

バクマン。 1 (ジャンプコミックス)

バクマン。 1 (ジャンプコミックス)

 中学生二人、漫画家を志す! というお話ではありますが『まんが道』的な創作を志す若者の青春譚、という感じではなくて漫画業界の今を巧みに切り取った業界モノ、という印象。

 ストーリー作りと作画、それぞれに秀でた少年二人がコンビを組んで漫画家を目指していくわけですが、彼等の原動力は、マイルドに描いてあっても、突き詰めていくと金と名声と女であります。
 当たればデカい漫画で名前を残したい、一番であるジャンプで連載を勝ち取りたい、同年代の強力なライバルに勝ちたい、漫画家になって憧れのあの娘と結婚する――などなど。成功への欲求はこれだけ描き、そして、漫画業界の話や技術的な話題は出しつつも、「何を描くか」「自分は何のために描くのか」という表現者としての葛藤や悩み、といった部分は奇麗に切ってしまっている潔さがこの作品の方向を示しているものではないかと。
 
 基本的に野心に燃える若者達のサクセスストーリーであり、それがたまたま漫画であったわけですが、それが「漫画」でなければならない必然性を支えるディティールの描き方・説得力がとにかく興味深く、そして面白いのであります。
 
 しかし、そんな少年達の野心ばかりではなく、純愛と漫画だけに生きて、そして死んだ叔父さんの意志を継ぐように漫画界を目指し始める辺りのロマンチシズムがまた心憎かったり。

 話の展開的にも漫画業界話的にも目の離せない一作ではないでしょうか。