雪乃紗衣 彩雲国物語―朱に交われば紅

 4編の外伝を集めた短編集です。各話について短めに書きます。

  • 幽霊退治大作戦!

 劉輝が国王を即位して、秀麗が仮に嫁入りする前の話です。紅黎深にいいように操られている絳攸が面白いです。絳攸は本当に周囲から”鉄壁の理性”だと思われているのでしょうか。幽霊騒動に子供じみた形で参加する絳攸は、これが年相応なのかもしれません。

  • 会試直前大騒動!

 国試の予備試験に合格し、本試験を迎えようとする秀麗の話。影月との出会いは、まあ、予想通り。秀麗は賢いのやら天然なのやら良くわからない娘です。その年の受験者で3位なのだからそれぐらい気がついてもいいと思うのですが、意外と当事者にはわからないものかもしれません。
男と同舞台に上がっても、男になるんじゃない。あんたは女として、男にできないことをしに行くんだ。
胡蝶の言葉ですが、良い事を言っていると思います。男女平等とはいえないこの世界ですが、同等に働くと言うことは同じ事をすることではありません。秀麗に限らず世の働く男女はそれぞれ特性を生かした活躍をして欲しい、と願います。

  • お見舞い戦線異常あり?

珍しく病気になった秀麗の話。邵可が影であんなことやこんなことをしてきた人物とは思えないうろたえようです。子供のことになると盲目になってしまうのかもしれません。めったに出てこない秀麗の母親に関する描写がありました。高貴な生まれの方のようですが、馴れ初めもほんの少しあります。秀麗と共有している記憶は僅かでしょうが、エピソードも小出しに出して欲しいですね。秀麗のことになると優秀な人たちもなぜかたじたじです。おじさんは絳攸にもこの何分の一かはやさしくしてあげればいいのに。と言いつつ絳攸が苛められる様子も楽しいので良しとしましょう。いいところを持っていった黄奇人はさすが。

  • 薔薇姫

作中の御伽噺。実は主役は藍将軍。うまくいくといいのですが。

 朱川湊人 かたみ歌

かたみ歌

かたみ歌

 直木賞を受賞した朱川さんの短編集です。朱川さんの作品は初めてでしたが、期待して読み始めたものの拍子抜けです。なんというか・・・・・・・可もなく不可もなくといった感じです。死者が現れることがある不思議な町があって、そこの商店街の主のような古書店の店主が物語りに関わってきます。とはいえ特別何かをするわけでもなく、短編集なので最後に何か驚くようなことがあるのかな、と思って最後まで読みましたが、特別たいした出来事もなく終わってしまいました。最終話は他の作品よりは面白かったです。
 印象としては、吹っ切れていない浅田次郎さんです。浅田次郎さんは自分の作品があざといな、と十分に自覚してあの文章を書いていらっしゃると思うのですが、朱川さんはまだ控えめと言うか、恥じらいが残っていると言うか。これが直木賞だったらかなり失望するところ。直木賞作家と先入観を持って挑んだため期待値が高すぎたのかもしれません。決してつまらないわけではないのですが。