村山由佳 おいしいコーヒーのいれ方 Ⅹ 夢のあとさき

おいしいコーヒーのいれ方 (10) 夢のあとさき (JUMP j BOOKS)

おいしいコーヒーのいれ方 (10) 夢のあとさき (JUMP j BOOKS)

 かれこれ10年以上も続いているシリーズです。かれんと勝利の関係も、結構リアルに嫉妬したりそれを話し合うことで互いの理解を深めたりしているのが良いです。勝利はいつまで大学生なのだ、と思ったり、今はスポーツ(陸上)に燃えているけれど、もうすぐ就職の問題もあがってくるでしょう。なんだかんだいってかれんはもう働いているし、職を変えるほどの経験もつんでいます。それに引き換え勝利はまだ大学生で、今回のように社会人が本腰を入れて動き出すと力不足の感は否めません。勝利はどんな職業に就くのでしょうか。まさか喫茶店とかではないと思うのですが、大学で何を学んでいるのか描写があったかもしれませんが覚えておらず、実際何をしたいのかもあまり表記されていないのではないかと思います。勝利が働き出したらまたいろいろとすれ違いがあるのかな、と思いますが、それまでこのシリーズが続いているのかどうかも少し不安です。ここまで来たのだから純情路線でどんどん続けて欲しいと思うのですが、どうなるでしょうか。しかしマスターにぶきっちょだといわれるまで自覚がなかったとは驚きです。読者は皆気がついていたのではないでしょうか。
 今回は勝利の葛藤がメインでしたが、星野さんとか、また出番があるのでしょうか。拒食症も改善されてきたようですし、見た目はネアンデルタール人でも繊細な機微を察することができる原田先輩が星野さんに惹かれている模様なのでうまく言って欲しいかな、と思っています。
 ところで、イラストレータはずっと同じ方ですが最初のほうが絵柄としては好みです。今回にイラストも変にリアルさを求めて逆効果にも思えます。

 伊坂幸太郎 陽気なギャングの日常と襲撃

陽気なギャングの日常と襲撃 (ノン・ノベル)

陽気なギャングの日常と襲撃 (ノン・ノベル)

 前回の続編ですが、正直続編があるとは思っていませんでした。今回も伊坂幸太郎らしいしゃれた会話が満載で、それはそれでいつもどおり楽しめるのですが、ストーリィとしては前回のほうが面白かったかも。そのことは著者の言葉としても書かれているので、映画にあわせて書かれた作品であり、楽しみ方が前作とは違う作品だと自覚して書かれたものだと思います。裏表紙には天才ギャング4人と書かれていますが、ひとり怪しい人がいます。彼は常に動じないように見え、それはそれで才能でしょうが、ギャングとして欠かせない人物かどうかはちょっと判断がつきません。今回は人間嘘発見器の成瀬とすりの名人である久遠が目立った働きをしています。久遠が結構キャラクタとしては好みなのですが、あの若さであの飄々とした雰囲気はなかなか醸し出せない野ではないでしょうか。このパタンで続編が書けるのなら、また別の作品もかけるのではないかと思います。なんちゃって辞書引用が今回もあって、それが話にかかわっているのが面白い。もし続巻も出るのなら買おうと思います。