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小野俊介 サル的日記 このページをアンテナに追加 RSSフィード

2017-02-05

サル的な日常もよかろう

へへへ。 先日の金曜日のお昼は豪勢だったぞ。 庶民よ、聞いて驚くな。 830円の海鮮8種盛り丼。 赤門前のいつもの海鮮丼屋さんで。

・・・ こら、そこの君。 「またその海鮮丼屋かよ。 こいつ、他に昼メシ食いに行くところはねーのか?」 などと呟いておるな。 失礼なことゆーな! 他にも生協食堂と長崎ちゃんぽんリンガーハットという行きつけがある。

その海鮮丼屋では530円の大トロあぶりサーモン丼と決めているのだが、どうせ残り数十年しかない人生だ。 たまには豪勢なモノを食ってもよかろうと大奮発したわけである。 

マグロ赤身、漬けマグロ、サーモン、イカ、エビ、エンガワ、シメサバ、そしてネギトロ酢飯の上でキラキラと輝いておる。 これを至福、眼福と言わずとしてなんと言うのだ。

ワサビをたっぷり混ぜた醤油をドボドボと大量にかけて、ワシャワシャと口中にかきこめば ・・・ ほら、脳内にあふれだすエンドルフィン! 食べている間の記憶がホントにトンでいるんだよなぁ、自分。

52年もの波乱万丈の人生においてサル的なヒトが証明した定理を一つ紹介しておこう。

海鮮丼に関するサル的定理)
東大赤門前の海鮮丼屋の海鮮8種盛り丼の美味さを仮に数値で100%と表現したとき、この世界には120%を超える美味さの料理は存在しない。 

私だって超高級料亭で超高価な美味いモノを食ったことはある。 世界の高級レストランと称するところでメシを食ったこともある。 でもね、結論としてそれらの高級料理の旨さは、海鮮8種盛り丼の旨さの120%を超えることは決してなかったと今なら断言できる。 ちなみにこの定理は論理学手法のタブローによっても、フィッチスタイルの演繹によっても証明されているのね。 これ、試験によく出るから。

というわけで、食事に関しては今後830円以上の金を支払う気はもうまったく無い。 食い物に関してはもうこれ以上何の欲も無いのだ。 鴨長明の境地に近づいている自分。 なんと素晴らしい。

*****

今、JASAC天下り問題とも絡んで火を噴いてますね。 ご愁傷さまです。 でも J○SRAC 問題、他人事ではないのである。

サル的なヒト、実は昨年からある月刊雑誌の短いコラムの連載を担当している。 「薬がらみのネタをお願いします」 との依頼なので、臨床試験や保険制度がらみの小話を書いているのである。 むろん筆者が私なので、お行儀のよい大学の先生が書くようなことは絶対に書かない。 私が取り上げるのは 「医学薬学専門家と称する人たちの常識や医薬品業界人の慣習が、いかに根拠不明で危ういか?」 といった感じの話である。  すみませんね、担当の I さん。 「薬は指示された用法どおり飲みましょうね、患者の皆さん」 といったことを本当は書いてほしいんでしょうけど、原稿を頼んだ相手が悪かったのだ。 運が悪かったとあきらめてください。

で、今月は 「臨床試験で出てくる結果の平均値なんて意味不明よ」 という話を書くことにしたのである。 だって、平均値が現れる 「平均人」 なんてこの世界には存在しないんだもの (そうでしょ?)。 実は、そのような仮想人の 「意味」 って哲学の重要な問題で、何千年もの議論があるのよ。 そんなややこしい背景などつゆ知らず、平均人にいい加減な 「意味」 を勝手に持たせてしまうのが薬の専門家たちである。 困ったもんだ。

さて、原稿の方針は決まったが、問題は書き出しである。 短いコラムの命は導入部分。 最初の段落でいかに読者の心をつかむかが勝負である。 「うーむ。 平均値、平均点 ・・・か。 学校の試験の平均点って65点くらいだったかなぁ ・・・ 
(゜∀゜) ピーン! あ! あれだ!」

ほれ、バスボンシャンプーのおねえさん、松本ちえこちゃんの名曲 「恋人試験」。 あの有名な歌詞がつかみには良かろうと、例のサビのところの歌詞をサラサラと冒頭に書いて、「いやー、昭和世代には懐かしいっすなぁ」 などと能天気な原稿に仕上げ、担当の I さん (女性) に送ったのである。 

そしたら I さんからメールがすぐに帰ってきた。 「小野センセ、確かにあの曲は私たち昭和世代には超懐かしいのですが、それはさておき、歌詞をそのまま使うとあの JASRA○ にお金を払わないといけなくなるんですよ。 至急書き直してください!」 との厳しいお達しが。

ガーン。 そ、そうなのか。 知らなんだ。 52年間そんなことも知らずに生きてきた無知なサル的なヒト。

というわけで、次のような文章に書き直したのであった。 これなら大丈夫なのだろうな。

「恋人試験」 (松本ちえこ) の要旨

問1 (配点50点)
アタシの顔・身体のパーツで魅力的と思われる部位を次の選択肢から選べ。
(a) 耳介 (b) 口唇 (c) 小さい瞳 (d) 乳房 (e) 頸部 (f) 丸い鼻翼

問2 (配点50点)
アタシと同伴して行きたい場所とその理由を述べよ。
(a) 山間部 (b) 湖畔 (c) 牧場 (d) 広場 (e) 飲み屋 (f) ディスコ

なお試験の結果については次のとおり取り扱うものとする。

    0点の人: 許さない (○`ε´○)プンプン!!

  100点の人: 大嫌い  m(´・(エ)・`)m大キライ

   65点の人: 好き  (*´−`*)スキ


・・・。 あの歌って、こんなに情緒のない感じだったっけ? ていうか、この試験でわざと65点取るのって至難の業だぞ。 彼氏でも無理だろ、これ。 一体どう解答すればいいんだ?

いずれにせよ、JASAC に従うと名曲がこんなふうに無残になってしまうことだけは分かったのである。(注 1)

(注 1) 結局、原稿はもっと穏当な表現に書き換えました。 念のため。

*****

というようなバカ話で今日の記事は終わり。 最近ちょっと忙しくて更新の頻度が減っていてごめんなさいね。 その割には読者数がほとんど減っていないのが、実はちょっと嬉しかったりするのです。 みなさん、どうもね。

これからも仕事の合間や通勤時間に人生や仕事に虚しさをふと感じたら、ポチっとブログ名をクリックしてください。 あとね、まわりのみんなにもっとこのブログ勧めてもよいのよ。 遠慮しないで。 大丈夫、このブログを勧めたくらいで変人扱いされることはないから ・・・ たぶん (笑)。

2017-01-29

ニポンの業界人はトランプさんと似ている件

すまんすまん。 ブログをだいぶほったらかしにしてしまいましたよ。 別に何ということもない日々を生きております。 イライラのタネは絶えぬが、それが日常なのだと思えばどうということはない。 アメリカ様の大統領が完全にアレな人だが、あんなのを選ぶとどういうことになるかをジッと観察する壮大な社会実験をやっていると思えばよかろう。 4年後には、誰が次の大統領になっても世界中の皆が確実に幸せになるのだから、確実に値上がりする株を買ったと思えばよいのである。

そう長くもない人生なのだから、無駄なことはできるだけしない、という方針で最近は生きている。

頭のつくりが根本的に歪んだ人とは口をきかない。 何を語っても話が通じないのだから。 賢い人であっても、他人を見下した態度しかとれないヤツ (大学にたくさんいますね) とは接点を持たない。 目の前の人を不愉快にしていることに無自覚なヤツは、やはりバカなのだ。 会議と称するものにはできるだけ出席しない。 だってニポンの会議って、ぬいぐるみのリラックマに 「おの しゅんすけ クン」 と名札を付けて座らせておけばそれですむ会議がほとんどなんだもん。 出席者 (たとえば私) が発言しないことが期待されている会議になんぞ出る必要はない。

となると、ろくに読者もいない無駄なブログも書かない ・・・ のが一貫した生き方なのだろうが、多少の無駄は心のゆとり。 ヨシとしよう(笑)。

*****

最近の学会誌や業界紙で見かける医薬品業界人 (産学官すべて) の書いた日本語のひどさに、うんざりしている。 ほんと、ひどいぞ。 まともな学識・良識を持っていることが疑われるレベルである。

たとえば、こんな文章、よく見かけるでしょ?

(日米の医薬品の保険適用について)
・・・ 日本では、医療の提供の平等が重視されるため、承認された薬剤はすべて保険償還されることになっている。 ・・・

・・・。 医療の提供の平等ってなんだろう? 意味不明。 たぶん、システムの中で同一の保険点数 (お上が設定した取引価格) を使っていることを 「平等」 とでも思っているのかな? そんなもの 「平等」 とは関係ないぞ。 このヒトの頭の中では、承認した薬剤のいくつかを保険償還しないのは 「平等」 じゃないのか。 共産主義にしても変である。  

こういう主張も多いよね。

(薬価改定に関して)
薬価の改定を頻回に行うと、企業は高い薬価を設定する。 簡単に値段が下がるのであれば普通に考えてそうする。 このような薬価改定の仕組みでは、製薬企業の新薬を開発する意欲・研究費が失われる。 日本再興戦略で創薬分野は成長産業に位置づけられていることとも反する。 ・・・

言っていることは確かにそれらしいが、ちょっと待って。 今のニポンの医薬品産業は (トランプさんが望んでいるような) 鎖国の中にあるのかね? ニポン国内からの利益だけを会社の金庫の中で保管してあって、その一万円札に 「研究開発用」 と書き込んであって、その書き込みがある一万円札をニポン人向けの薬の研究開発にしか使わない製薬企業がニポンにはあるのだろうかね。

オプジーボなどの新薬について)
日本人が発見した新薬のシーズなら、日本企業が育てるべきだ。 それが流出して、外国の人たちによって製品化されるのは恥ずかしい。

・・・ いや、全然恥ずかしくもないし、異常でもない。 化合物や抗体にもし口があったら、「オレ、別にニポン人じゃないし」 って言うと思うよ。 医薬品業界って、どうしてこんなふうな国粋主義者のような主張が大好きなのだろう。

もっとも、ニポン政府の「○カ年戦略」 などの序文がたいてい 「医薬品医療機器について、ニポンは輸入超過で、けしからん」(注 1) などという根本的に意味不明でバカげた文章で始まっているから、どうにもならないのだけどね。 ほれ、これってトランプさんの主張そっくりでしょ?

(注 1) これを言っているのが、その辺のお役人ではなく、クルーグマン先生だとかメリッツ先生だとかだったら話は別だが。

政府は、ニポンの海岸にも医薬品専用の国境の壁 border wall を造ったらよいと思うよ。 Made-in-Japan医薬品シーズと有能な人材は決して国外に逃亡しないように監視して、外国の有望なシーズと有能な人材 (注 2) だけが入ってくるような、妙に都合のよい選択透過性を備えた壁 ね。 大笑い。

(注 2) ただし、外国人は 「ニポン人の重要なポストを決して奪わず、威張りん坊ばかりのニポンザル社会の序列は乱さず、ニポン人のボスの言うことには常に従順に Yes と答え、ニポン人並の安月給と超過勤務と事務的雑用を受け容れる」 という条件を満たす有能なヒトだけ受け容れる、ってなところが本音だよね。 そんな外人さん、来るわけねーだろ。

*****

どこか異常なのは医薬品の世界だけではない。 名古屋闇サイト殺人事件 (ネットの闇サイトで集まった3人の凶漢が、縁もゆかりもない女性を殺害して、金をむしり取ろうとした事件)を皆さんは覚えているだろうか。 「一人殺しただけでは死刑にならない」 という量刑の常識があるニポンで、この野獣3人に厳刑を、という署名に私もサインをした記憶がある。

いつかの夏 名古屋闇サイト殺人事件

いつかの夏 名古屋闇サイト殺人事件

一審では 「2人死刑」 という判決が出たが、二審では、そのうちの一人が無期懲役に減刑されてしまった。 その二審判決での減刑の理屈 (の一部) がこれだそうだ。

・・・ 本件において、殺害の様態が残虐性を増したのは、被告人らが想像したよりも被害者が簡単に絶命しなかったため、殺害の手段を次々に変えた結果である、という側面があり、・・・


・・・。

被害者の女性が必死で生き延びようと頑張ったから、残虐な殺し方をしたのは仕方ないんだそうだ。 法曹界の頭の良い人たちの考える理屈はすごいものだね。

ふざけるな。

*****

「ニポンを取り戻す!」 「アメリカ第一!」 などと喚 (わめ) いている人たちは放っておけばよい。 僕たちはそんなにバカじゃない。 私たちが愛すべき人、守るべき人たちは、そんな薄っぺらいスローガンなんぞとは無関係に私たちのまわりにいて、誇りをもって日々を生きているのだから。 そうですよね、Sullenberger 機長。

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「Sully」。 クリント・イーストウッド監督、トム・ハンクス主演とくれば、もう鉄板である。 円熟の技。 話の結末は分かっているのに、涙が止まらず。 この映画も、点数をつけるとすれば5億点だ。

2017-01-10

泣かない

最近どうも涙もろくて困っている。 正確には涙もろいなんてもんじゃない。 四六時中泣いているという表現が正しい。

特に危ないのが最近のNHKの番組である。 ほれ、読者の皆さんもよくご存知の番組があるでしょ。 あんたも泣いてるんでしょ? あれですよ、あれ。

ドキュメント72時間。

この番組が始まると、たいてい5分後くらいには目に涙がじんわり滲んでいる。 10分後くらいに鼻水が止まらなくなり、番組終了直前、松崎ナオさんの 「川べりの家」 が流れ始めるときには、ほぼ間違いなく号泣してるサル的なヒト。 それを気持ち悪そうに眺めている家人。

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番組作成スタッフの中には、間違いなく、泣かせのプロがいるな。 それも達人レベル。 そう、たとえるならば、昭和を代表する名番組 『それは秘密です!!』 の司会者、桂小金治並みの ・・・ あ、小金治さんは泣く方だった。 すまん、間違えた。(注 1)

(注 1) 「ご対面コーナー」で、感動のあまりもらい泣きするから、「泣きの小金治」 と呼ばれたものである。 それにしても懐かしい。

昨年末12月29日には 「もう一度見たい72時間」として、2016年放送の新作36本の中から、視聴者の投票で選ばれた人気作ベスト10が一挙再放送されたのである。 素晴らしいぞ、NHK! 見直した。 最近の会長がちょっとアレな人だったから心配していたのだが、安心した。 この 「72時間」 だけで受信料の元は十分取れている。

ちなみにベスト10はこんな感じ。

第1位 長崎 お盆はド派手に花火屋で
第2位 ゆきゆき酷道439
第3位 四国 海だけの小さな駅で
第4位 冬・津軽 100円の温泉で
第5位 囲碁の魔力に囚われて
第6位 京都 青春の鴨川デルタ
第7位 札幌 聖夜のバスターミナル
第7位 さらば!俺たちの船橋オート
第9位 福岡・中州 真夜中の保育園
第10位 真冬東京 その名は”はな子”


第9位の中洲保育園の回。 中州で働くおねいさんたちの子供たちの深夜保育。 夜12時を過ぎると目が覚めて、むっくりと起き上がっておかあさんが来るのを待っている男の子。 深夜勤務のおかあさんが上手に海苔で作ってくれたキャラ弁ミニオンズの顔がペロンと取れちゃって、シクシク泣き出すタカちゃん。 わかる、わかるぞ、タカちゃん、その気持ち。 お、オラも涙が止まらない。 

第2位の 「ゆきゆきて 酷道439」 も名作であった。 高知の山道、国道439号線をNHKの取材のおじさんを乗せた車でただただ走っていく回である。 カメラが過疎地、限界集落で暮らす人々の姿を淡々と切り取っていく。 後半に登場する85歳のおばあさん。 取材のおじさんが 「世の中はゴールデンウィークですね」 と尋ねたが、おばあさんにはゴールデンウィークの意味がよく分からない。 見ず知らずの取材クルーに、「これ、持っていきなさい。 気を付けてね」 と栄養ドリンクを2本、持たせようとするおばあさん。 あ、あれ? なぜ涙がでてくるんだろう。 

ゾウのはな子の回では、はな子に話しかけるおばあさんの姿に泣いた。 花やしきのジェットコースターの回では、病気のおじさんの笑顔に泣いた。 囲碁クラブの回では、帰る家もなく囲碁クラブで生活しているおっさんの姿に泣いた。 何年か前に放送された、秋田うどん自動販売機の回はもはや伝説になっている。 厳冬の屋外の自動販売機うどんをご馳走と言いながら、うれしそうに車で食べにくるカップルや子供連れ。 あんたら、いいなぁ。 僕らのような都会のネズミよりずっと豊かだ。

ふつうの人たちが、ふつうに暮らす姿を見ていると、涙が出るのである。 むろんそれは自分の姿そのもの。 鏡に映った自分の姿を見て、泣いている自分。 辛い人生送っているんだなぁ、自分。

前にも書いたが (これね → youtube に頼らない - 小野俊介 サル的日記サラメシ (NHK 月曜夜) でも涙が止まらない。 亡くなった人たちが愛した昼飯を紹介する 「あの人も昼を食べた」 のコーナー。 毎回毎回、もう号泣である。

昨年の小田さんの 「クリスマスの約束」 (の再放送) も大変だったなぁ。 小田さんの歌が素晴らしいのは当然として、問題はCM。 明治安田生命。 あんたら、視聴者そんなに泣かせてどうするんだ。 CMのたびに涙が止まらなくなり、家人に笑われる。

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何を見ても涙が出てくるのは、じじいになったということだろうね。 笑わば笑え。 100年もすればあなたも私も、全員この世にはいないのだ ・・・ と、強がりを言ったら、また泣けてきた。

*****

泣かなくてもよい映画もしっかり見てきたのである。 「Don't Breathe」 本日のここまでの記事とのあまりの温度差に驚くがよい。

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こいつには泣きどころが全くないから安心 (笑)。 ホラームービーらしいが、なんだかつまらない。 前評判の割には大したことなくて残念でしたよ。 ドキッとしたのはワンコが登場したシーンだけであった。 この映画、中学生くらいの子供には面白いのだろうが、オトナにはお勧めできません。

最近の映画はネタ・アイデアが枯渇している説に一票。

2016-12-31

サル年よ、さらば

業界の皆さん、薬価がますます頻回に引き下げられるようですね。 ご愁傷様。 メディアも含め大騒ぎしてるが、大騒ぎの理由が私にはまったく分かりません。

だってさ、業界の皆さんって、「お上 (他人) が薬価をつける」 という理念を受け入れているんだもん。 現在起きている動きは、どうみても起きて当然のこと。 異常なことではないし、大騒ぎすることが変だよ。 「お上 (つまり誰か他人) が薬価をつける」 ということは、つまり、

「誰か他人が、好きな時に、好きなように・好きなやり方で、好きな価格 (price-tag) をつける」

ということでしょ? 違うの?

だからこそ、あなた方の多くが崇拝しているアメリカ様の業界人たちは 「価格は企業 (つまり私) がつけるのだ」 と、理念レベルで決して譲らないのである。 あるいは、リベラル色の強い人たちは (少しでも完全市場に近い) 市場のシグナルに従うべきだ、と強く主張しているのである。 そりゃ各国の市場のいろんな事情に合わせて多少の政治的妥協はするに決まってるけど、その手の根本理念だけは譲ってはいけないことをよーく叩き込まれているからね。

「お上 (他人) が薬価をつける」 ことを最初から前提にしておきながら、「お上のやり方はけしからん」 「あの人 (他人) が考えていることは受け入れがたい」 って大騒ぎするのって、なんとも幼稚で、サル的。 たとえるとこんな感じだな。

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最近の裏リスの記事にも大笑い。

今回、製薬企業に対して厳しい改定を強いた要因のひとつに、厚労省がメーカーを擁護しなかった点が挙げられる。 今、省内で重要事項の検討は、二川事務次官を含めた厚労5局長会議で進められているという。 実は会議でキャリア官僚たちは、製薬企業の 「長期収載の事業切り離し」 について 「怒っている」 そうだ。 理由は 「今までメーカーは 『長期収載品の売上原資を研究開発費に充て、新薬を開発してきた』 と説明してきたが、それは嘘だったのか」 というコトのよう。


皮肉が効いたこういう記事、好きである。 業界紙の記者さんは、本当に書きたいことは書かず、「裏を読め」 ってことなのね。 私はその辺の野生ザルだから、書きたいことをなんでも書くぞ。

一言で言って、バカらしい。 お金に使い道が書いてあるわけない じゃん。 社長の懐に入る金も、会社の金庫で眠ってる金も、投資家にばらまかれる金も、税金財務省に引っこ抜かれるお金も、お金はお金。 一万円札に 「研究開発専用。 それも日本国内への投資に限る」 なんて earmark が付いているなんて信じているヤツが今時いるわけがない。

信じてるヤツが誰もいないのに、嘘も何もあったもんじゃない。 むろんお役人も、記者さんも、そこらあたりの構造を知らぬはずがない。 誰も信じてないタテマエを、誰も信じていない理屈で批判するお役人。 そして、信じる人が誰もいないその手の大本営発表をもっともらしく報じるメディア。 戦前の報道と瓜二つ (笑)。

怖いのは、「一万円札に 『研究開発専用。 それも日本国内への投資に限る」 と書いてある」 などと阿呆な理屈をポジショントークとして言い続けているうちに、本来は聡明で論理的だったはずのお役人・メディアがホントの阿呆になってしまうことである。 いや、もうすでになっているのかもしれん。 ほれ、あの戦争を引き起こした連中がそうだったでしょ?

あーあ。 くだらない。 こんな国だから安楽死コース一直線なのだ。 しかしまぁ、それもこれもニポン人自身が選んでいる道だからな、覚悟して受け入れるがよかろう。 ニポン人現役 (中年以上) 世代の製薬業界の仕事 (産官学・メディアの人たちのメシの食い扶持) はまだ当面安泰だしね。(注 1) ツケは若手、あるいは次世代にまわすだけのこと。

(注 1) 安泰とはいかなくなってしまった一部の会社の方々は頑張って生き延びてください。

*****

というわけで、今年の記事はこれでおしまい。 今、大晦日の 23時 38分。 紅白歌合戦は出てる歌手の9割くらいを知らないのでつまらないから、部屋にこもってTBSラジオの宇多丸聴きながら、「ふぅ、今年も疲れたのぉ」 と一息ついているところである。

と一息ついていると、大晦日のこんな時間に 「研究プログレスレポート」 を送ってくる研究室の学生もいる。 そうか、こんな時にもコツコツと勉強している若者もいるのだ。 えらい。 ニポンも捨てたもんではないかもしれぬ。 20年後、30年後のことは君たちに任せたよ。 僕らの世代は、もう、ダメだ。

では皆さん、よいお年をお迎えください。 来年も、サル的日記、応援よろしくね。

2016-12-18

毛ほどの重みもない「人権」

前回の記事の続き、というわけではないのだが、相変わらず他人の書いた論文の査読に追われる毎日である。 査読って一銭にもならないし、業績にもならないのだが、頼まれたら断らないのが学界の基本ルールである。 外人さんの書いた論文だから英語が達者かというと決してそんなことはなくて、それぞれ国の人たちの書く文章・英語には盛大にクセがある。

論文の内容とは無関係なところで、しかし、世界共通だなぁと思える表現にたびたび出会う。 正確には 「医学薬学共通」 というか 「理科系共通」 というか。 たとえば医学系の研究論文に結構出てくるこんな表現。

"As the data of this study were anonymized, there was no possibility of human rights violations or ethical problems. (この研究の患者データは匿名化されてるから、人権の侵害倫理的な問題の可能性はなかった)"


・・・。

この文章って、なんだかとても 幼稚 に見えませんか? 「ほんとにこれ、博士号 (MDとかPhDとか) を持ってる人が書いてるの? 知性のかけらも感じられないんだけど」 とは思いませんか? ほんと、そのとおり。 読んでいて気分が悪くなる。 あんたら、それでオトナかよ、って感じ。

どういう論理があれば、こんなにも短絡的な結論が得られるのだろう? 人類の歴史に育まれた倫理哲学を支える言葉をどうしてこれほど軽々しく扱えるのだろう? ・・・ なんて真剣に考えるのもバカらしい。 おままごとやってる幼稚園児が 「ホントやーね、最近のインフレで家計が苦しいわ。 アベノミクスの影響かしら?」 なんて意味も分からずに言っている姿と瓜二つ。

お上や学会が定める医学研究倫理ガイドラインに、この手のルールが書いてあることはむろん知ってます。 この著者たちがそれに従っているということも分かる。 だったら 「ガイドラインに従った」 と単にそう書けばよいのである。 「ガイドラインにそう書けって命令されてるから、書いてるだけだよ。 そうしないと論文がアクセプトしてもらえないんだもん。 倫理? 哲学? 知らんわい、そんなもん」 と誰も見ていないところで毒づいていればよいのである。

「この手の論文ではこういう宣言を書くのがお決まりのお作法だから」 という程度の認識で、「人権」 などという言葉を含む大それた文章を何の違和感も覚えずに書いてしまう医療系・理科系研究者って、心のどこかに根本的な欠陥 があると私は思います。(注 1)

(注 1) もっと具体的にいうと、ニポンの理系人の教養の欠如。 リベラルアーツ教育の欠如。

昔、私がGCP査察官だった頃、 「あ? GPC? あんたのような木っ端役人に言われるまでもなく、GPC 遵守が治験実施の国際的な義務であることくらい、当然知っとるわぃ。 誰に向かってモノいうとるんじゃ、ワレ!」 と不機嫌にのたまわった医学界の大御所がいたことを思い出す。 その程度の認識なら、その程度の認識で結構。 「GPC (注: GCPのこと(笑)) なんて、弁当屋のSOP (注 2) と同じようなもんだと思ってる」 とあっさり告白してしまえばよかろう。 

(注 2) 「調理前に手をちゃんと石鹸で洗いなさいよ」 とか、「キャベツは水洗いしなさいよ」 とかいった弁当作成にあたっての注意書きと手順が書いてあるパートのおじさん・おばさん向けの文書のこと。

実は、私はそれが世の中の大勢でも仕方ないと思うのよ。 弁当屋で働く近所のパートのおばちゃんに 「ISO や HACCP の品質管理の哲学を理解しないと弁当を作ってはいけない」 なんていうのは土台無理がある。 それと同じ。 でもさ、MD、PhDという大層な肩書を背負った方々や医学界の大先生たちは近所のパートのおばちゃんではない。 無知・不誠実な態度が許されるわけがない。

*****

忙しくて本が読めない ・・・ といいつつ、チョコチョコとは読んではいるので、いくつか面白かったのを紹介しますね。

「科学の困ったウラ事情」 有田正規 著 (岩波科学ライブラリー

科学の困ったウラ事情 (岩波科学ライブラリー)

科学の困ったウラ事情 (岩波科学ライブラリー)

理科系の大学や学会のホントの問題点、論文学術誌の世界の歪みが、検閲なしに(笑)、きちんと書かれているので、ぜひお読みください。 会社のヒトも、お役人も、学者も、誰もが自分の働く業界について 「そう、この慣習って異常だよな」 と思っている慣習が一つや二つや数十個はあるはずだが、 「異常な業界の慣習」 を大声で語ろうとすると業界から抹殺されてしまうのがニポンである。

グローバル人材育成」の英語教育を問う 斎藤兆史、鳥飼玖美子 他 著 (ひつじ書房

グローバル化、万歳!」 「国際共同試験、万歳!」 「ICH万歳!」 を何の疑問もなく叫び続ける医薬品業界人にぴったりの本。 むろん皮肉です。 英語の超達人の先生方と養老孟司先生 (対談) が、「グローバル人材の育成が必要」だの 「世界で戦うための英語」 だのと意味不明なことをのたまう方々をばっさり斬ってくれる痛快な本。 英語の達人たちにとっては、「世界で戦えるグローバルリーダー (の育成)」 という表現をなんとも思わぬ言語感覚が、先ほど書いた 「匿名化してるから、人権は侵害してない」 と同じレベルのアホさ加減に見えるらしい。 なるほど。 

そして ・・・

ギャラリーフェイク 33 (ビッグコミックス)

ギャラリーフェイク 33 (ビッグコミックス)

なんと、あのギャラリーフェイクのフジタとサラちゃんが帰ってきてたのね。 我が家の書棚には全32巻が鎮座しておる。 12年ぶりの新刊に、うれしくてうれしくて、涙がじんわりでたよ。 アマゾンでは品切れで、TSUTAYA で手に入れたのだが、もったいなくて読めないのである(笑)。 最初に出てくる 「忘れられた一夜 (ほれ、昔のメトロポリタンでの子供のサラとフジタが出会っていた、というお話)」 だけは再掲だから、安心して読む。 それでも十数年ぶりの感動で、な、涙が。

*****

もう少ししたら小田さんの 「クリスマスの約束」 か。 今年は 23日、深夜 0時 35分から。 宇多田ヒカルちゃんが出るらしい。

一年が経つのが早い。 今、まわりにいる人たちを大切にしなければ、としみじみ思う年の瀬である。