○征たれざる国を読む

bqsfgame2014-10-07

ジェフ・ライマンの英国SF作家協会賞受賞の短編。1989年のSFマガジン版で読みました。
カルト・ファンタジー特集の一作ですが、他の2作品がブレイロックと、ティム・パワーズと言いますから、スチームパンク全盛期。でも、3つ一緒にすると誤解を招く編成です。
訳者の中村融氏のブログから引用すると、「カンボジアをモデルにした架空の国を舞台に、戦乱のなかで生きる人々の苦しみや悲しみを綴った作品だが、グロテスクなイメージが横溢していて、悪夢めいた印象を残す佳品」。
うーん、簡潔にして要を得ています。
移動可能な生きている家が出てきたりして、明らかにファンタジーですが、戦乱の国の庶民の悲惨な暮らしぶりはリアリティーがありすぎます。
ダン・シモンズの「ドラキュラの子供たち」のルーマニアも酷いですが、こちらもかなりのものです。もう一度、読む気がしないと言う点では共通します。その一方で、目を背けてはいけないものでもあるのですが‥。
ライマンは、ディック記念賞を取った「253」、英国SF作家協会賞の長編部門を取った「エアー」などもある中堅作家ですが、まったく翻訳が進んでいません。本作を読む限り、あんまり売れなそうな感じは確かにしますが。
ライマンは「インターゾーン」で活躍したそうで、社会性が強いと言われる同誌の好みそうなタイプではあります。タイミングを失したので、もう訳されることはないのでしょうかね。