caguirofie

哲学いろいろ

地中海の晩鐘(#4)

4.

初秋――
フランクの王シャルルに
法の王が戴冠を迫り
十字架が新しいカエサルを創り


ゲルマンの民にさらに嫁し
ヘブライの月の前に跪いた
フェニキアの王女《エウローパ》の
新しい血の
緑の海の帝国の噂が
風とともに届くころ


島は
わが島は
永遠の都をすでに離れ
東の美しい要塞を去ってゆく


ビザンチウムの執拗な手が
再び島に伸びて
傭兵としても訪れた民
フランクの地に伯位を奪い
始原の神々(ヲータン)を排し
唯一の神を拝した北の民 海の民
ノルマンもまた
花咲くコルドバを廻り島に着き
ナーポリを合わせ
王国を創建するまで


ノルマン王の城が成るまで


パレルモの街に緑の島に
白い寺院(モスク)が誇らかに起ち
長尖塔(ミナレ)から祈祷僧(ミュエザン)の誦む
暁の祈りが高らかに響く

続きを読む

地中海の晩鐘(#5)

5.

すでに
伝説の王シャルルマーニュの後を襲う
聖なるローマ皇帝の誕生を見て
法皇の季節――


王女エウロペの抱く二人の孫たち
月の教会の子女たち
兄弟らは
月の聖墓をめざして
十字の章を送り


緑の島は
ヴィキングを遣り
イリアスを見守る


群小のアキレウス
一人のサラディンを凌ぐことあたわず
月の世界の抗争は
地上に堕ちて続くころ


アラベスクの宮殿に住む
シチリアの王国は
聖なるローマ皇帝ハインリヒ六世に嫁ぎ


島には
あのアンジュー家の狼を迎えるまで
あの荘厳の《われらの海》を
追う四代の虎を見
赤いエトナに褐色の砂が積もり
赤い糸が織られてゆく

続きを読む