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2015-03-26

世田谷パブリックシアター演劇部 批評課(2日目)


 三日間の休暇のあと、あなたは再びワークショップにやってきた。あたらしく知り合った人々とは自然に言葉をかわせるようになっただろうか? 同じ演劇部の仲間と手をつないだり、名前を呼びあったりすることに、少しは慣れただろうか?
 さて、男が紙の束を取り出す。裏返された31枚の紙から、あなたは1枚を無作為に選ぶ。引いたら表に返す。堀江敏幸、須賀敦子、中上健次カポーティドストエフスキー、エトセトラ。ひとりで声に出して読んでから、この文章を書いた「作家の身体」を思い浮かべる。たとえば、引きあてた文章があなたの身体になじまないとして、あなたは口の中でモゴモゴと消化不良の言葉と格闘し、何でこんなの引いちゃったんだろうと考える。
 次にあなたは、先ほどの31枚の紙を読み比べ、好きなものを選ぶ。岡田利規山田詠美保坂和志川上弘美サガン、エトセトラ。また声に出して読んでみる。何度でも声に出す。「作家の身体」のほかに、「翻訳者の身体」「登場人物の身体」、それを読む「自分の身体」などが見えてくる。その複数の「身体」を感じてあなたは少し混乱する。 
 あなたはさらに、文章の骨と肉を切り離したり、よく噛んだり吐き出したり、また口に入れたりする。その正体をつかもうとする。わかりかけた気がする。しかしそれと同時に、それまでまとまって見えていたはずの文章が、ちぎれて意味をなさなくなっていく。声に出して読めば読むほど、文章があなたから遠ざかっていくような気さえする。
 さんざん味わったところで、あなたに残るのはわずかな養分でしかない。自分の文体を見つけるには、もっともっと多くのものを読んで、書いて、飲みこむ必要がある。もちろん時間はかかるけれど、あきらめることはない。少なくともあなたは今日、世界に数多(あまた)あふれる言葉たちへの入口には立ったのだから。


(落 雅季子 2015.03.26)




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